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2011.08.29

【特集】世界選手権へかける(10)…男子グレコローマン96kg級・有薗拓真(山梨学院大)

(文=増渕由気子)

 世界選手権代表選考会を兼ねた4月の全日本選抜選手権で、男子で唯一代表決定が保留となった男子グレコローマン96㎏級は、最終的に有薗拓真(山梨学院大=右写真)が初の代表の座を射止めた。

 プレーオフは7月13日に全日本選手権3位&全日本選抜選手権2位の森保弘(三重・朝明高講)、全日本選手権2位&全日本選抜選手権3位の有薗、両大会ともに3位でアジア選手権5位の山本雄資(警視庁)の3人で、誰かが2連勝するまでリーグ戦を行う試合形式でプレーオフを行い、有薗が2連勝して勝負をつけた。

■グレコローマンにシンデレラボーイ誕生! 

 プレーオフでは、海外での実績がある山本、キャリアのある森がプレーオフでの有力候補で、学生の有薗は下馬評は厳しかった。有薗が「山本先輩には1勝3敗。森先輩には2戦2敗」と振り返るように、キャリアや実績では3人中3番手。その状況を打開したのは、22歳の若さと体力だ。

「戦績では劣っていても、3者でのプレーオフは体力が必要。このルールは有利だと思った」と、失うものが何もない有薗は、持ち前の体力勝負に持ち込むレスリングで先輩たちを撃破した。(右下写真)

 男子チームで唯一の学生の代表となった。グレコローマンでは2001年76㎏級の菅太一(日大)以来10年ぶりの学生の日本代表。山梨学院大の学生としては、2002年のフリースタイル76㎏級の小幡邦彦以来の快挙。プレーオフを経た一夜で“シンデレラボーイ”に駆け上がった。試合直後の会見では「高校まで育ててくれた祖母に真っ先に吉報を伝えたい」と笑顔いっぱいに話した。

■自慢の体力を使って相手をスタンドでバテさせる

 グレコローマン96㎏級は、2008年の北京五輪では加藤賢三(自衛隊)が出場した階級。加藤は五輪前年の2007年世界選手権で5位に入賞。重量級に貴重な出場枠を獲得し、五輪への道につなげた。この例が、近年苦戦が続く重量級の希望となっている。

 プレーオフから1ヵ月がすぎた有薗は「自分の立場は五輪出場枠をかけて闘うナショナルチームの一員。今まで以上に自分の体に気を使わなくてはいけないし、今までと同じではいけない」と話し、自覚が出てきた。

 初のナショナルチームの環境は全てが新しいことだらけ。男子では一番年下で、現役・OBを問わず山梨学院大の選手も有薗一人。「所属だけで見ると独りぼっちなんですが、金久保(武大)先輩は6月のカザフスタン遠征も一緒で、いろいろ声をかけてくれたり、助けてくれたりして慣れました」と話す。

 そのカザフスタン遠征で、有薗は一つの手ごたえをつかんでいる。「スタンドはけっこう攻めることができたんです。プレーオフもスタンドでどんどん動いて、相手がバテたから勝てた」とのことで、現状での必勝パターンを確立している。「スタンドで1点取るつもりでがんがん前に出て、そしてグラウンド勝負を貫きたい」と戦法を話した。(右写真=昨年12月の全日本選手権。日本一へあと一歩だった)

■インカレの未練を断ち切って、いざ世界へ

 ちょうど1年前、有薗は大学3年生にして全日本学生王者になった。今年は連覇がかかっているが、「世界選手権を前にけがをしてはいけないから」と、欠場することに。「本当は学生連覇も狙いたかったので、ちょっと残念。その分も世界選手権で頑張りたい」と、初出場の世界選手権でインカレの分も力を出し切るつもりだ。

 「とにかく五輪出場権を取ることが大事。不細工な試合、1-0とぎりぎりな試合でもいいから勝ちたい」と有薗。4年前の加藤賢三の再来となれるか-。


 有薗拓真(ありぞの・たくま=山梨学院大)

 1989年6月11日、兵庫県生まれ、22歳。兵庫・育英高卒。高校時代の2007年に全国高校グレコローマン選手権と国体グレコローマンで優勝。山梨学院大に進み2009年JOC杯で優勝、世界ジュニア選手権出場。2010年に全日本学生選手権で優勝。同年全日本選手権2位、2011年全日本選抜選手権3位。180cm。


 ◎有薗拓真の最近の国際大会成績

 《2011年》
 【6月:プレジデント・カップ(カザフスタン)】
●[判定(0-5)]An Chang Gun(韓国)
●[判定(0-3)]Dzeinichenko Tsimafei(ベラルーシ)
●[判定(0-4)]Asembekov Margulan(カザフスタン)
○[不戦勝]--(中国)

 【2月:ニコラ・ペトロフ国際大会(ブルガリア)】(15選手出場)
1回戦 ●[0-2(0-1,0-1)]Alexuc Alin(ルーマニア)   

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 《2009年》
 【7月:世界ジュニア選手権(トルコ)】=13位(27選手出場)
敗復戦 ●[0-2(0-2,0-1)]Mikalai Danilau(ベラルーシ)
3回戦 ●[1-2(0-2,1-0,0-1)]Coskun Efe (ドイツ)
2回戦 ○[2-1(0-1,1-0,1-0)]Lukas Hormann(オーストリア)
1回戦  BYE







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