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2011.09.06

【特集】世界選手権へかける(17)…女子72kg級・浜口京子(ジャパンビバレッジ)

(文=樋口郁夫)

 世界選手権への出場は、これが最後になるかもしれない。1995年のモスクワ大会から数えて15度目。2度の五輪を含めれば17度目の世界大会。女子72kg級の浜口京子(ジャパンビバレッジ=右写真)は、女子では言うまでもなく、男子を含めてもおそらく最多出場と思われる世界最高峰での闘いに、「チャレンジする気持ち100パーセントで臨みます」と言い切る。

 世界選手権で5度の優勝、五輪を含めた世界大会でのメダルは12個。アジアの大会を制すること6度と、輝かしい戦績を持つ浜口だが、世界の強豪は過去の実績などおかまいなしに襲いかかってくる。過去の戦績を誇りに思うのは、引退してからでいい。今は目の前の闘いに全力を尽くし、まず3度目の五輪出場を果たすことだ。

■「もう銅メダルはいりません! 銅メダルで満足できない自分がいます」

 もちろん、五輪出場資格獲得だけが今大会の目標ではない。「もう銅メダルはいりません! 銅メダルでは喜べない自分がいます」という言葉は、8年ぶりの世界一を目指す決意でもある。2008年の北京五輪での3位入賞のあと、世界とアジアの大会はすべて銅メダル。しかし、大きく離されているわけではない。負けた試合の多くはクリンチ勝負がからんでいるのであり、どんな相手であっても、そう簡単にテークダウンはとられない足腰の強さは健在だ。

 これを、どう勝利に結びつけるか。今年の春から夏にかけては、高田裕司専務理事がマンツーマンと言えるほど熱心に浜口を指導した。「ひたむきにレスリングに打ち込んでいるから、何としても3度目のオリンピック出場を果たしてもらいたいよ」と高田専務理事。全日本合宿のみならず、8月10~21日に東京・味の素トレーニングセンターで行われた山梨学院大ほかの合同合宿の際にも、連日、練習に参加させ、男子選手を相手に世界で勝つための戦術をさずけた。(左写真=浜口を指導する高田専務理事)

 その戦術のひとつは、「不用意な攻撃をしないこと」。浜口は若い頃から日本人離れした体力を武器に相手を圧倒し、豪快な勝ち方をしてきた。その攻撃精神は今も健在で、常に攻撃を仕掛け試合の主導権をにぎっている。しかし世界のレベルが上がり、闘い方を研究されている現在、この闘い方ゆえにカウンターを受けてポイントを失ったり、昨年のアジア大会(中国)のようにフォール負けを喫することもあった。

 実力差のある相手に対しては、怒とうの攻撃で圧勝する勝ち方でいい。しかし強豪相手にこの闘いでは、カウンターを受けたり、攻め疲れの末に競り負けることもありうる。高田専務理事は「不用意に手を出したり、組みにいかないこと」と、まずカウンターを受けての失点をなくすことを課題にしてきた。浜口が、その教えをどこまで試合で出すことができるか。旺盛な攻撃精神を、勝負どころまでいかに抑えておけるかが、勝敗の分かれ目となりそうだ。

■7~8選手が先頭グループの女子72kg級

 どの階級でも、五輪後の2年間の闘いで勢力図が見えてくる。女子72kg級の場合、世界V4を目指すスタンカ・ズラテバ(ブルガリア)が頂点にいて、他がそれを追う状況のように思えたが、今年の欧州選手権では67kg級時代に世界一に輝いたカテリナ・ブルミストロバ(ウクライナ)がズラテバを破って優勝した。ズラテバは2009年世界選手権でも中国選手に破れており、圧倒的な強さはなくなっている。

 昨年2位のオヘネワ・アクフォ(カナダ)、ロシアから国籍を移し今年のアジア選手権で浜口を破って優勝したグレル・マニュロバ(カザフスタン)、そのマニュロバをアジア大会決勝で破ったナランチメグ・ゲレグジャムツ(モンゴル)に加え、北京五輪金メダリストの王嬌(中国)が復帰。昨年3位で2年連続欧州2位のエカテリナ・ブキナ(ロシア)もあなどれず、混戦模様になってきた感がする。(右写真=昨年のメダリスト。左からアクフォ、ズラテバ、ブキナ、浜口)

 というより、強豪グループとそうでないグループの2グループに分かれている状況。他の階級以上に、その色分けが明確となっている。例年より出場選手が多くなる五輪前年の世界選手権とはいえ、勝負どころはそう多くない。そこに全神経を集中させ、まずは五輪出場資格の壁を乗り越えてほしい。

 「お世話になった人や、サポートしてくれた人たちに恩返ししたい気持ちでいっぱいです。その気持ちが、今の私の原動力です」と浜口。五輪3度連続出場へ向け、気合を振り絞る。


浜口京子(はまぐち・きょうこ=ジャパンビバレッジ)

 1978年1月11日、東京都生まれ、33歳。1997年に75kg級で世界選手権初優勝。98・99年と優勝を重ねる。2002年に世界一にカムバックし、翌03年にも優勝。2004年アテネ五輪と2008年北京五輪でともに銅メダル。2010年は世界選手権とアジア大会で、ともに銅メダルを獲得。今年はW杯個人優勝、アジア選手権3位。170cm。


 ◎浜口京子の最近の国際大会成績

 《2011年》
 【5月:アジア選手権(ウズベキスタン)】3位(9選手出場)
3決戦 ○[2-0(3-3,4-0)]Preet Kaur Gursharan(インド)
2回戦 ●[0-2(0-1=クリンチ,0-3)]Guzel Manyurova(カザフスタン)
1回戦  BYE

 【3月:ワールドカップ=団体戦(フランス)】個人優勝
3決戦 ○[フォール、1P1:44(F4-0)]Leah Mariem Lorraine Callahan(カナダ)
3回戦 ●[1-2(1-0,0-3=2:07,0-1)]Xu Qing(許晴=中国)
2回戦 ○[2-0(1-0,TF6-0=2:00)]Cynthia Vescan(フランス)
1回戦 ○[フォール、3P0:38(0-1=2:30,4-1,F3-0)]Burmaa Ochirbat(モンゴル)

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 《2010年》
 【11月:アジア大会(中国)】3位(8選手出場)
3決戦  ○[フォール、1P1:40(4-0、F6-0)]Bae Mi-Kyung(裵美京=韓国) 
準決勝 ●[フォール、1P1:53(F1-4)]Li Dan(李丹=中国) 
1回戦  ○[フォール、1P0:42(F7-0)]Iana Panova(キルギス)

 【9月:世界選手権(ロシア)】3位(20選手出場)
3決戦  ○[2-0(1L-1,1-0=2:03)]Maider Unda Gonzalez(スペイン)
準決勝 ●[1-2(3-0,0-3,0-1=2:02)]Ohenewa Akuffo(カナダ)
3回戦  ○[2-0(4-3,1-0)]Burmaa Ochirbat(モンゴル)
2回戦  ○[2-1(1-1L,1-0=2:02,1-0)]Kateryna Burmistrova(ウクライナ)
1回戦   BYE

 【3月:ワールドカップ=団体戦(中国)】個人3位
3決戦 ○[2-1(0-1,3-2,2-0)]Nataliia Palamarchuk(ウクライナ)
3回戦 ●[0-2(0-1=2:02,0-1=2:30]Ohenewa Akuffo(カナダ)
2回戦 ●[フォール、1P0:35(F0-3)]Natalya Vorobeva(ロシア)
1回戦 ○[2-0(3-2,2-0) ]Hong Yang(洪雁=中国)

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 《2009年》
 【8月:ポーランド・オープン(ポーランド)】5位(16選手出場)
3決戦  ●[0-2(1-3,0-2=2:16)]Guzel Manurova(ロシア)
準決勝 ●[0-2(TF0-6=1:12,2-4)]Stanka Zlateva(ブルガリア)
2回戦  ○[0-2(1-0,2-0)]Mariana Gastil(オーストリア)
1回戦  ○[2-0(2-0,1-0)]Svitlana Sayenko(ウクライナ)







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