日本レスリング協会公式サイト
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2011.09.07

【特集】世界へはばたけ! 女性レフェリー…越智雅子さん(中京女大OG)渡部悠香さん(日体大OG)

(文=樋口郁夫)

 国際オリンピック委員会(IOC)の理念のひとつに、すべての競技での男女の参加がある。来年のロンドン五輪ではボクシング女子が採用され、これで実施26競技のすべてで男女の実施が実現する。

 国際レスリング連盟(FILA)もこの理念を受け、女子の発展に尽力してきた。2005年のユニバーシアード(トルコ)や2006年のアジア大会(カタール)で女子の実施がないと分かれば、組織委員会と粘り強い交渉を続け、女子の採用を実現させた。いまだに女子を認めていないイランに対しては、大陸選手権や世界選手権を開催させないなど一種の“ペナルティー”を課し、女子の世界的な普及に力を入れている。

 その理念は、選手だけではなくレフェリーにも言えること。世界選手権での女性レフェリーも珍しいシーンではなくなったが、日本ではここ10年以上、全日本レベルの大会から女性レフェリーが姿を消している。

 日本協会の斎藤修審判委員長は「女性レフェリーの育成にも力を入れたい。でも、結婚して出産したりすると、子育てでできなくなってしまうんです」と事情を説明する。だが、絶対的な数が少ないがゆえに、なかなか育たないというのも現実だ。

■世界に飛躍するか、“チュージョ”のレフェリー・・・越智雅子さん(愛媛・今治明徳高教)

 今夏、高校生と大学生の大会で、2人の女性レフェリーの姿があった。全国高校生グレコローマン選手権・全国高校女子選手権(大阪・堺市金岡公園体育館)の期間中に行われたA級昇格試験を受験した越智雅子さん(今治明徳高教=中京女大OG)と、全日本学生選手権(東京・駒沢体育館)で全日程ホイッスルを吹いた渡部悠香さん(はるか、日体大大学院=同大学OG)。

 越智さんは中京女大(現至学館大)がブレークする前の同大学を支えた選手。1998年世界ジュニア選手権75kg級で4位入賞という成績を持っている。故郷の愛媛へ戻り、現在は体育教師。レスリング同好会を発足させたものの、今は部員がいない状況。勧誘はしているが、スポーツがそれほど盛んな学校ではないこともあって、思うようにいかないという。

 「選手がいない状況でレスリング界に貢献できることといえば、審判があると思いました。6年後に愛媛国体があるので、その時に向けて審判が必要になってくるかな、と。選手が来てくれた時、ルールも知らなければダメだと思いました」と、レフェリーの道を進んだきっかけを説明する。(右写真=全国高校女子選手権でA級昇格試験を受けた越智さん)

 2年前にB級ライセンスを取得し、今回のA級挑戦へとこぎつけた。合否の発表はまだだが、「選手としてオリンピックには出られませんでしたけど、レスリングには携わっていきたい。いずれは世界へ飛び立ちたい」という夢を持っている。

 レフェリーの難しさは「やってみた人でなければ分かりません」と言う。セコンドとして試合を見ている時は、「そんな判定ないわよ」と思うことが多かったが、レフェリーとしてやる時は、「そんな簡単なものではない」と笑う。A級昇格を果たし、さらに上を目指すために必要なものは「冷静に見極める目と気持ちと能力」と言う。

 母校・至学館大に足を運ぶことはほとんどないため、現役選手との面識はない。しかし「活躍はいつも気にかけています。世界へ飛躍してくれるのはうれしいですね」と、後輩の活躍も刺激材料のひとつ。レスリングにずっと携わっていこうという気持ちになる要因だ。

 「結婚しても、続けていきたいですね」。世界の審判界にも「チュージョ(中京女大)」仕込みのレフェリーが活躍する日が待たれる。

■ブランクを経て審判活動を再開・・・渡部悠香さん(日体大大学院)

 全日本学生選手権をさばいた渡部さんは、日体大4年生の時の2009年に東日本学生リーグ戦でレフェリー・デビューを果たした(クリック)。その後、不祥事によってチームが活動停止となり、審判の活動をすることもできなかったが、処分解除によって再開。選手活動にピリオドを打ち、審判としての道を歩むことを決めた。「学生の大会はやはり白熱していますね。慣れるのに時間がかかりました」と言う。

 前回は学生審判員としての大会参加だった。今回はそれより上の立場での参加。「前は、周囲も『学生だから』という目で見てくれたと思います。今回はそうではなく、学生審判よりすぐれているところを見せなければならない、というプレッシャーもありました」と言う。終わってみて、明らかなミスジャッジはなく、先輩審判から「よくやった」と声をかけられてホッとした表情。「A級、それから国際審判も目指していますので、いい再スタートが切れたと思います」と言う。(左写真=全日本学生選手権での渡部さん)

 大学院ではレスリング選手のスポーツ心理学を勉強していて、来春に卒業予定。故郷には戻らず、首都圏に残って教員を目指しつつ審判の活動を続ける予定だという。「選手としてオリンピックに行けなかったので、審判として行こうと思います」と言ってから、大それたことを言ったと思ったのか、照れ笑いを浮かべたが、目は笑っていなかった。

 「これまで女性の審判が何人かいたけど、結婚と子育てでストップしてしまうんだよね」との問いに、「私の場合、父が審判でした。親であり、指導者であり、審判でしたので、私もその3つをやりたいと思っています。ですから、結婚しても審判活動は続けていくつもりです」ときっぱり。「やるからには一番になりたい。トップを目指したい」と続けた。

 「日本の女子は世界でこれだけ強いのですから、女性のレフェリーも生まれなければならないと思います。男子の大会はともかく、女子の大会はもっと女性レフェリーがいていいと思います。自分が頑張ることで、女性レフェリーの誕生・育成につながればいいな、という気持ちもあります」。女性審判の地位の確立のためにも、大学院卒業後も活動を続けてくれることが望まれる。

 選手として輝くだけが、“レスリング人”の輝きではない。いつの日にか、オリンピックのマットで輝く日本人女性レフェリーの姿を見たいものだ。







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