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【特集】職場への恩返しは五輪出場枠獲得…男子フリースタイル96kg級・磯川孝生(徳山大職)

(文=保高幸子)

 2010年5月のアジア選手権(インド)と同年アジア大会(中国)の両大会で銅メダルを獲得した男子フリースタイル96kg級の磯川孝生(徳山大職=写真)。国際大会で実績をあげつつある磯川が、30日からの五輪予選第2ステージ「アジア予選」(カザフスタン)で五輪出場枠を獲りにいく。

■敵はウズベキスタンとキルギス

 イランとカザフスタンが出場枠を獲得している同級は、ウズベキスタン、タジキスタン、キルギスの旧ソ連のほか、モンゴル、韓国が上位と見られる。旧ソ連勢の中では、タジキスタンのルスタム・イスカンダリには2月のアジア選手権(韓国)で勝っているので、キルギスとウズベキスタンの2選手が強敵となるだろう。

 ウズベキスタンのクルバン・クルバノフは2008年北京五輪代表で、2010年アジア大会でも2位の実力者。キルギスは昨年夏にロシアから国籍を変えたマゴメド・ムサエフがエントリーしている。今年のアジア選手権で優勝している。

2010年アジア大会でクルバノフと闘う磯川

 磯川は「軸となるのはこの2人でしょう。この2人に勝てば五輪が見えると思います」と見据えている。クルバノフとはアジア大会の準決勝で闘った経験がある。敗れはしたものの、「クルバノフに対して、自分にできる、最高の戦い方は頭に入っています」と頼もしい。試合映像もあって研究材料もあるという。

 ムサエフに関してはデータが少なく、対戦したこともない。しかし「映像を見ただけでは分からないこともあるので、あまり研究しない方です」と話し、データ不足は問題とはならないという。

■2月のアジア選手権出場で「自信がついた」

 2月のアジア選手権は、出場予定だった下中隆広(岐阜県協会)のドーピング違反を受け、急きょ出場となった。五輪予選の約1ヶ月前の国際大会は、「けがをしてはいけない」という気持ちが強く、慎重な試合運びとなった。

 成績は2回戦で敗れ、敗者復活戦なしと振るわなかったが、磯川に求められているのは今年のアジア選手権の好成績ではなく、五輪出場。「自分の何が通用するのか、しないのか、確認ができました」と、終わってみれば出場してよかったという気持ちが残った。

全日本合宿で練習する磯川

 1回戦では五輪予選で闘うことも予想されるルスタム・イスカンダリ(タジキスタン)に完勝した。2回戦でカザフスタン選手に、組ませなかったというコーションによって負けはしたものの、ローリングを守り切り、タイミングをつかんだ。「自信がついた」と話し、アジア選手権に出場した収穫は大きかった。アジア選手権の結果が、そのままアジア予選の結果になることはあるまい。

■職場の厚意で入試期間中も練習に専念

 磯川には背負っているものがある。2、3月というのは大学職員にとって入試や卒業式、新たに入学する学生の受け入れ準備などで繁忙期。本来なら業務に追われているところだ。「とんでもなく忙しい時期に休ませてもらっています。本当にありがたいですが、やらなければいけないことがあるのに、と、後ろめたさがあります…」と言葉に詰まる。

 その厚意に対する一番の恩返しは、五輪に出場する事。「職場に感謝して、結果に出したいです。それでしか応えられません。全力を出します」と力をこめる。

 1996年アトランタ五輪を最後に途絶えているフリースタイル重量級(90kg以上)の五輪出場。磯川には、日本重量級の意地を見せてくれることを期待したい。

 

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