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2013.07.11

【全日本社会人選手権・特集】高校教師の職を捨て、2016年リオを目指す…男子グレコローマン74kg級・井上智裕(兵庫県協会)

(文・撮影=増渕由気子)

プロ選手として再出発だ! 全日本社会人選手権の男子グレコローマン74kg級は、全日本王者の井上智裕(兵庫県協会=右写真)が決勝で小路直頌(自衛隊)を破って初優勝を飾った。「1周間前に胃腸炎を患い、その後は腰を痛めていた」と満身創痍の状況。さらに気温30度を超える体育館の中で4試合をこなす過酷な環境の下、気合で勝ち抜いた。

■“引退した状態”で臨んだ昨年の全日本選手権で優勝!

 井上は高校教師だった昨年の岐阜国体で3位に入賞。教え子の中田陽(現日体大=少年グレコローマン60kg級)と師弟で表彰台にのぼって話題となり、年末の全日本選手権では同級のロンドン・オリンピック予選にも出場した金久保武大(ALSOK)を破って初優勝を成し遂げた。

 もっとも、全日本選手権の時の井上は、“競技者としては引退した”状態だった。66kg級でロンドン・オリンピックを目指しており、その夢が破れたためだ。高校生に指導する一環として、74kg級にアップした途端、元全日本王者を破って優勝してしまった。この事実に心が揺れた。「まだチャンスがあるのかな」-。

 その気持は、全日本王者として臨んだ今年冬の欧州遠征で確信に固まった。「僕の身長では66kg級が望ましいので、74kg級ではヨーロッパの選手にボコボコにされると思っていたんです。ですが、意外に戦えたのです。日体大に拠点を移し、リオデジャネイロ・オリンピックを目指して頑張りたいなと思った」と、“現役復帰”の気持ちが芽生えてきた。

 だが井上には妻子がおり、家庭を持つ一家の主として簡単に脱サラはできなかった。生活の基盤を保ちつつレスリングを続けることは大変なこと。井上は、「自分から、またレスリングを(本格的に)やりたいとは言い出せませんでしたね。生活もあるので」と振り返る。

■迷う心に、夫人の一言が脱サラを後押し!

 2月のハンガリー遠征から帰国した後、そんな井上に夫人がかけた言葉は「あなたには、レスリングしかできないでしょ」という一言だった。“プロ”になる決意をした井上は、次の職業も決まらないまま3月末で高校教師を退職。4月のアジア選手権(インド)は“フリーター”で臨んで3位と好成績を残した。

 必死にスポンサーを探していたところ、地元・神戸の企業から打診があった。「三恵海運株式会社からスポンサーのお話をいただいたのです。社長が育英高校のOBで、僕のことを支援したいと手を挙げてくれました。本当にうれしかったです」。三恵海運は以前、ボクシングの世界王者をサポートしていたこともあり、スポーツ支援に実績がある会社だ。

 ここ最近の井上の活躍は、高校教師をしながら全日本選手権を制したことで、地元兵庫ではかなり有名だった。大手新聞などの媒体にも多数取り上げられ、さらにアジア3位の成績を収めたことが、スポンサーをぐっと引き寄せた要因かもしれない。

 2か月間、無職だったが、6月の全日本選抜選手権の時には完全な“職業レスラー”としてリオ・オリンピックを目指せる環境を手に入れて臨んだ。(注=全日本選抜選手権、全日本社会人と所属が「兵庫県協会」だったのは、登録時に契約が済んでいなかったため)

■湯元兄弟、松本兄弟に続けるか

 全日本選抜選手権では2回戦で小森大祐(拓大コーチ)に敗れ、プレーオフでは12月に勝った金久保に敗れて世界選手権出場は逃したが、今回の全日本社会人選手権で優勝。11月の米国遠征の権利を手に入れた。「まだ金久保選手とは差がある。グラウンドもほぼ返されてしまうので、その部分から(レベルの差を)埋めていかないと」と、課題を明確に挙げた。

 脱サラし、一念発起して“プロ選手”の道を歩みだした井上。奇しくも、選手として第一線を退いて高校教師になった弟の井上貴尋(東京・自由ヶ丘学園教=フリースタイル66kg急)が全日本選抜選手権で優勝して世界選手権代表に決定した。「弟に先を越されて悔しい。全日本選手権までには74kg級の体を作り上げて優勝したいです」ときっぱり。

 ロンドン・オリンピックに兄弟で出場した湯元健一・進一兄弟、そして兄弟そろって全日本王者になった松本隆太郎(群馬ヤクルト販売=ロンドン・オリンピック銅メダリスト)・篤史(ALSOK)に続くべく、井上兄弟がリオデジャネイロ・オリンピックに向けて日本男子レスリングを熱くする!


 







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