(文・撮影=増渕由気子)
新ルールを味方に急成長! インターハイ男子74kg級は、昨年の国体を制した浅井翼(京都・京都八幡)が決勝で昨年国体2位の白井勝太(東京・帝京)を4-3で下し、初優勝を飾った。「やっと(勝った)っていう感じです」。高校生最大のタイトルを最後のチャンスで手に入れた。
全試合通し、京都八幡のお家芸である高速ローシングルタックルが決まった。新ルールでタックルからのテークダウンが2点となったことで、この技で次々と加点。準決勝までの4試合はすべて第1ピリオドで勝負を決める圧勝ぶりだった。「ルール改正は、最初はどうなることかと思いましたが、自分に合っている」と、自分のレスリングを思う存分に発揮しての優勝だった。
■3強の闘いを制して頂点へ
男子74kg級は、ここ2年間、“3強時代”が続いていた。昨年インターハイ王者、そして春の全国高校選抜選手権王者の奥井眞生(和歌山・和歌山工)と、JOCアカデミー所属で英才教育を受けている白井、そして浅井の3人で、タイトルを分け合っている状況だった。
浅井は1年生最後の全国高校選抜大会(2012年3月)の決勝で白井と対戦し、0-2で敗れたが、父でもある浅井努監督は「次、やったら勝てる!」と手ごたえ。その言葉どおり、半年後の岐阜国体の決勝でついに、白井超えを果たした。
浅井の次なる壁は同じ近畿ブロックの奥井眞生(和歌山・和歌山工)だった。今年3月、国体王者として全国高校選抜選手権に臨み、準決勝で白井を下して決勝に進んだ浅井は、決勝の奥井戦で逆転フォール負け。第3ピリオドで、先にニアフォールに追い込んで3-0としたが、その直後にフォール負けしてしまった。
奥井は準決勝で白井に敗れ、リベンジのチャンスはなくなった。「春は悔しい思いをしたので、直接勝って頂点を取りたかった」と、決勝戦は奥井と闘ってリベンジしたい気持ちもあったほどだ。
■6月の全日本選抜選手権では大学王者を破る
3強のタイトル獲得歴を並べると下記の通り。
学年 | 年 | 月 | 大会名 | 優勝選手 | 優勝以外の選手の成績 |
1年 | 2011年 | 8月 | インターハイ | (山下俊介) | 白井=2位、浅井=三回戦、奥井=三回戦 |
〃 | 10月 | 国民体育大会 | 白井勝太 | 奥井=グレコ優勝、浅井=グレコ5位 | |
2012年 | 3月 | 全国高校選抜大会 | 白井勝太 | 浅井=2位、奥井=三回戦 | |
2年 | 〃 | 8月 | インターハイ | 奥井眞生 | 浅井=2位、白井=3位 |
〃 | 10月 | 国民体育大会 | 浅井 翼 | 白井=2位、奥井=グレコ優勝 | |
2013年 | 3月 | 全国高校選抜大会 | 奥井眞生 | 浅井=2位、白井=3位 | |
3年 | 〃 | 8月 | インターハイ | 浅井 翼 | 白井=2位、奥井=3位 |
〃 | 10月 | 国民体育大会 | ? |
3強の中で全国タイトルを獲得するのは一番遅かったが、浅井には2人より突出した記録を持つ。それはオリンピック代表も出場したシニアの昨年12月の全日本選手権と今年6月の全日本選抜選手権で、ともにベスト8の成績を残していること。
それも、昨年学生二冠王者の嶋田大育(国士舘大)からポイントを取ったり、自衛隊の葈澤謙(昨年の大学王者)に勝利したりと内容があるベスト8だ。浅井監督は「高校生のうちに全日本3位以上にして大学に送りたい」と鼻息を荒くする。
その3位に入るためには、浅井監督のまな弟子で、全日本選抜選手権2位の北村公平(早大=京都八幡高出身)にも遠慮なしで真っ向勝負をする予定だ。
だが、浅井監督は足元もしっかり見ていた。「今回勝ちましたけど、3強の構図は変わっていない。決勝の白井戦の第2ピリオドは、タックルも取られたし、反省点が残る。まずは(20日からの)全国高校生グレコローマン選手権、そして国体です」ときっぱり。フリースタイルの高校二冠にグレコローマンのタイトルを引っさげ、12月の全日本選手権での下剋上実現に万全を期す。