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2013.08.15

【特集】世界選手権へかける(2)…男子フリースタイル96kg級・山口剛(ブシロード)

《世界選手権へかけるシリーズ》

男子フリースタイル 55kg級 60kg級 66kg級 74kg級 84kg級 96kg級 120kg級
男子グレコローマン 55kg級 60kg級 66kg級 74kg級 84kg級 96kg級 120kg級
 女   子  48kg級 51kg級 55kg級 59kg級 63kg級 67kg級 72kg級

(文=樋口郁夫)

1992年バルセロナ・オリンピックの100kg級に中西学が出場したあと、男子フリースタイルの重量級は4大会連続でオリンピックの道が閉ざされていた。昨年のロンドン・オリンピックで96kg級の磯川孝生(徳山大職)が出場し、長いトンネルを抜けた。この勢いを受け継ぐべく健闘が期待されるのが、新日本プロレスおよび親会社のブシロードの全面支援を受ける山口剛(ブシロード=右写真)だ。

 早大時代は84kg級のレギュラーとして活躍し、2010年に同大学の62年ぶりの東日本学生リーグ戦優勝に貢献。ロンドン・オリンピック出場は逃したが、4年後を見すえて96kg級へアップし、昨年12月の全日本選手権と今年6月の全日本選抜選手権は、ともに下馬評通りの強さで勝ち抜いて初の世界選手権出場を決めた。

 順調な結果にもおごりはない。「日本チャンピオンになったら、日本一の努力をする義務があります」。今月初めの韓国合宿では、アジア王者の韓国選手とも手合わせして実力を養成。ワールドカップとは違う世界最高峰の闘いへ向け、努力は怠らない。

■超満員の観客の中での試合に感動…イラン・ワールドカップ

 2016年リオデジャネイロ・オリンピックを目指すにあたり、大学時代の84kg級でやるか、階級を上げるか、なかなか結論が出なかった。昨年5月のワールドカップ(W杯=アゼルバイジャン)で96kg級に“空き”ができたため、山口が抜てきされて出場したが、体重の違いからくるパワーの差を痛感したことが大きい。

 「パワーがけた違いなんです。日本選手相手では組み合っただけで重圧を感じることはないのですが、外国選手は体の一部を触られたけでものすごい圧力を感じる選手もいます」。首をがっちりつかまれると、それだけで動けなくなり、振りほどこうとして体力を消耗してしまう。

 外国選手のパワーに対抗するため「動いて、ばてさせろ」と言われるが、つかまえられてしまってからでは動けるものではないう。つかまえられ、振りほどこうとして自分の方がばててしまうのが現実だ。

 だが、そのワールドカップでは収穫もあった。最後の試合で、オリンピック予選にも出ていたブルガリアの選手に勝てたことだ。「96kg級での闘い方が少し分かったというか…」。パワーアップを念頭において練習に励んだ結果、5ヶ月後に地元・岐阜で行われた国体で、全日本選抜王者の山本康稀(日大)を含めて失点0で完全優勝。階級を上げ、パワーアップしてリオデジャネイロを目指すことを決めた。

 今年2月のW杯(イラン)では、グルジア選手とカザフスタン選手を破って2勝をマーク。昨年の1勝より一歩進んだ。6月に新ルールで行われた全日本選抜選手権では、3試合すべてを第1ピリオドでフォール、またはテクニカルフォールで下す圧勝優勝。実力は間違いなく前進している。

 世界選手権は初出場となるが、レスリングがメジャースポーツのイランでのW杯に出場できたのは大きな自信だ。2万人近い観客の中で大声援を受けての試合は、だれもがレスリング選手としてのプライドを感じる。世界選手権も、そしてオリンピックも、観客こそはそこまで入らなくとも、同じくらいの胸の高まりと感動がある。

 イランでの試合に匹敵するだけの胸が震える感動を味わってみたい…。初めての世界選手権へ向けて気持ちは高まる。

■早大へ進学し、オリンピックを目指す長島和幸さんの背中を追う

 岐阜・中津商高時代の2007年に、高校三冠王(全国高校選抜大会、インターハイ、国体)に輝いた。高校でタイトルを独占するほどの選手なら、将来の目標にオリンピックがあるだろうが、簡単に達成できる目標ではないことを実感する年代でもある。オリンピックは“将来の目標・希望”であり、当面の目標を「全国一」「高校三冠王」などに置いて努力するのが、普通の高校選手ではないだろうか。

 “三冠王者”山口も、高校時代はまだオリンピック出場を現実のものとして考えてはいなかったという。オリンピックを意識したのは、進学した早大にオリンピックを目指していたOBの長島和幸(当時クリナップ)がいたからだ。

 「朱に交われば、赤くなる」-。身近にそうした選手がいれば、考え方や練習に取り組む姿勢などを見習うようになる。「いろんな意味で長島さんの存在は大きかったです」。白血病に見舞われてオリンピック出場復活を断念した長島さんから受け継いだエネルギーも発奮材料だ。

 岐阜・中津川といえば、今や日本のレスリングの中心地になるような勢いが感じられる市だ。昨年の国体開催でレスリング熱が燃え上がったということだけでなく、中津川にある中京学院大が西日本学生リーグ戦で2季連優勝を遂げ、西日本の王者に君臨。

 これまで、西日本からは徳山大など数えるほどしかいなかった自衛隊へ進んでレスリングを続ける選手が続き、世界を目指す選手が現れている。今春には同大学の馬渕賢司監督が全日本チームのコーチに起用された。レスリング熱は熱く燃えている。

 「やっぱり地元の期待を感じますね。帰郷した時に声をかけてもらえたりすることが、刺激材料になっています」。中津川の勢いをも受け、山口が世界へ飛躍する。

山口剛(やまぐち・たけし=ブシロード)    初出場
 1989年4月4日、岐阜県生まれ、24歳。岐阜・中津商高~早大卒。179cm。84kg級で2009年全日本大学選手権優勝、2011年全日本学生選手権優勝、2011年全日本選手権3位など。2012年にはデーブ・シュルツ国際大会3位など国際舞台ででも活躍。2012年夏から階級を上げ、同年の全日本選手権でも優勝。2013年は国際大会3大会に出場して鍛えた。179cm。
 

  ◎山口剛の最近の国際大会成績

 《2013年》

 【4月:アジア選手権(インド)】=10位
2回戦 ●[0-2(0-1,0-3)]Tatari Hameo(イラン)
1回戦  BYE

 【2月:ワールドカップ(イラン)】=個人
7・8決戦 ○[フォール、3P(1-0,0-7,F3-1)]Seymon Semyonov(カザフスタン)
5回戦 ●[フォール、2P(0-2,F1-5)]Tedore Ebanoidze(グルジア) 
4回戦  BYE
3回戦 ○[2-0(3-0,2-0)]Georgi Atanasov Sredkov(ブルガリア)
2回戦 ●[0-2(0-7,0-3)]James Daniel Bergman(米国)
1回戦 ●[フォール、1P(F0-3)]Amir Abbas Moradi(イラン)

 【2月:デーブ・シュルツ国際大会(米国)】(15選手出場)
敗復戦 ●[0-2(1-1,1-2)]Manjot Sandhu(カナダ)
敗復戦 ○[2-1(1-0,0-1,2-1)]Khetag Pliev(カナダ)
敗復戦 ○[2-0(3-2,6-0)]Riley Otto(カナダ)
2回戦  ●[0-2(1-1,1-2)]Willie Miklus(米国)
1回戦  ○[2-0(0-1,2-1,1-1)]Les Sigman(米国)


 







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