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2013.08.20

【特集】世界選手権へかける(5)…男子フリースタイル84kg級・松本真也(警視庁)

《世界選手権へかけるシリーズ》

男子フリースタイル 55kg級 60kg級 66kg級 74kg級 84kg級 96kg級 120kg級
男子グレコローマン 55kg級 60kg級 66kg級 74kg級 84kg級 96kg級 120kg級
 女   子  48kg級 51kg級 55kg級 59kg級 63kg級 67kg級 72kg級

(文=樋口郁夫)

 1年生王者が誕生し、盛り上がった今年の長崎インターハイ。高校時代の実績となれば、この選手にかなう選手はいない。今年の世界選手権の男子フリースタイル84kg級に出場する松本真也(警視庁=当時京都網野高、右写真)。全国高校選抜大会2度、インターハイ3度、国体3度を制覇。全国高校選抜大会は2度しか出場できないので、高校生の3大大会のすべてのタイトルを取り、“京都の怪獣”と呼ばれた逸材だ。

 29歳になった今年、男子両スタイルの最年長選手として4度目の世界選手権へ挑む。モチベーションは「ずっとレスリングをやらせてもらってきて、お世話になった方へ感謝の気持ちを伝えたい」ことと、「子供に世界で闘う父親の姿をてもらいたい」こと。妻・美映さんと妻の両親に、1歳半になる長女・愛菜(あいな)ちゃんを現地に連れて来てもらうそうで、「記憶には残らないでしょうけど…。(国内の試合では)ボクの試合の時は喜んでくれているんです」と言う。

■韓国合宿の初日に鼻骨を骨折するアクシデント

 2011年の世界選手権(トルコ)で、オリンピック出場枠に「あと1勝」までいき、8位に入賞。悲願達成が視野に入ったのもつかの間、3ヶ月後の全日本選手権は初戦で松本篤史(ALSOK)に敗れ、オリンピックの夢が消えた。

 次のオリンピックは32歳で迎える。年齢的に現役続行かどうか迷うところ。加えて4年間を燃えてきた選手にとっては、すぐに立ち上がれないのが普通だろう。だが、翌年6月の全日本選抜選手権には闘う松本の姿があり、見事に優勝。「試合前に五輪代表が会場で紹介され、スポットライトを浴びて輝いている姿を見て、やっぱりオリンピックに出て闘いたいと思いました」と、オリンピックへの思いを吐露した。

 一方、「この大会に向けて練習を始めたとき、応援してくれる職場のためにもがんばろうと思いました」と、この頃から周囲への感謝の気持ちが強くなっていることがうかがえる。

 12月の全日本選手権では、松本篤にリベンジして優勝。今年6月の全日本選抜選手権は学生選手に不覚を喫してしまったものの、プレーオフで優勝した松本篤をテクニカルフォールで破り、世界選手権代表権を手にいれた。

 2月のワールドカップ(イラン)は、不戦勝を除けば4戦全敗。4月のアジア選手権(インド)も初戦敗退と、外国選手との試合で結果が出ていなかったので、7月下旬から8月上旬の韓国遠征は、外国選手相手に実力を十分につける機会だった。課題はデフェンス。有利な組み手で相手にプレッシャーを与え、攻撃を許さずに失点を少なくする試合運びの確立を目指した。

 しかし、合宿初日に相手の突進を受けてしまい、鼻骨を折るアクシデント。思い切った練習ができずに不本意な遠征となってしまった。帰国してすぐに手術。今月の練習は組み手の確認や体力トレーニングが中心で、9月に入ってやっとスパーリングができるかな、という状況。鼻で息ができなかったので、息を上げる練習もできなかったという。

■不遇の時に必要なことはポジティブ(肯定的)思考

 「ちょっと出遅れてしまいましたね」と振り返る。しかし、こうした状況に直面した時の対応ができるだけのキャリアも積んでいる。「こういう時だからこそできる練習もある。自分のレスリングを見つめ直すこともできます。ネガティブ(否定的)にとらえるのではなく、ポジティブ(肯定的)に考えていくべきです」と話し、落ち込んではいない。

 網野高と日大の先輩で、2004年アテネ・オリンピックで銅メダルを取った自衛隊の井上謙二コーチのサクセスストリーも勇気づけてくれる話。井上コーチはオリンピックの約2ヶ月前の練習中、クリンチ(当時は四つ組み)からのそり投げの際に鼻骨を骨折。今の松本とまったく同じ状況だった。それで銅メダルを獲得した。

 地力のある選手なら、できる練習をしっかりこなすことで、けがのハンディは補えるもの。オーバーワークにならないなどのプラス面もあるわけで、松本は「すべてを前向きにとらえます」と言う。

 この先、1年ずつ頑張ってリオデジャネイロ・オリンピックを目指すこともあるかもしれないが、今は、ここまでお世話になったコーチら関係者、家族、親族らに気持ちを伝えたいという気持ちが世界選手権出場を支えている。

 最後に言った。「子供の存在って、大きいんですよね」。愛菜ちゃんは、2016年8月には4歳半になり、わずかでも記憶が残る歳となる。リオデジャネイロを待たずにマットを降りるわけにはいくまい。

松本真也(まつもと・しんや=警視庁)    2大会連続4度目の出場
 1984年7月16日、京都府生まれ、29歳。京都・網野教室出身。京都・網野高~日大卒。高校時代の00~02年に全国高校選抜大会2度、インターハイと国体を各3度勝ち、史上初の高校8冠王者へ。2006年に全日本選抜選手権で優勝し、世界選手権に出場して10位。北京オリンピックを逃したあと、2010年アジア選手権3位、2011年世界選手権8位の成績。しかし、ロンドン・オリンピック出場はならなかった。171cm。

 ◎松本真也の最近の国際大会成績 

 《2013年》

 【4月:アジア選手権(インド)】=9位(14選手出場)
1回戦 ●[1-2(2-1,3-3,0-1)]Kim Hwan Uk(韓国)

 【2月:ワールドカップ(イラン)】=個人9位
7・8決戦 ●[0-2(0-1,0-3)]Aslan Kakhidze(カザフスタン)
5回戦  ●[0-2(1-2,4-5)]Nodar Egadze(グルジア)
4回戦   BYE
3回戦  ○[不戦](ブルガリア)
2回戦  ●[1-2(2-1,0-1,0-2)]Phillip David Keddy(米国)
1回戦  ●[0-2(0-4,0-6)]Ehsan Salman Amini(イラン)

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 ◎松本真也の世界選手権成績

 【2011年(トルコ)】=8位(46選手出場)
 4回戦 ●[0-2(0-1,0-3)]Albert Saritov(ロシア)
 3回戦 ○[2-1(0-1=2:03,2-0,4-3)]Alexander Dolly(アイルランド)
 2回戦 ○[2-1(1-0,0-1=2:06,3-0)]Andrea Sorbello(イタリア)
 1回戦 ○[2-0(2-0,2-0)]Adrian Aboujaoude(ブラジル)

 【2009年(デンマーク)】=32位(37選手出場)
1回戦 ●[0-2(0-1,0-1)]Yavaser Gokhan(トルコ)

 【2006年(中国)】=10位(31選手出場)
3回戦 ●[0-2(0-1,0-4)] Sokhiev Zaurbek(ウズベキスタン)
2回戦 ○[2-0(1-0=2:04,5-4)] Bogdanov Dejan(マケドニア)
1回戦 ○[2-0(3-3,3-1)] Gattsiev Soslan(ベラルーシ)


 







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