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2013.09.03

【特集】世界選手権へかける(12)…男子グレコローマン55kg級・田野倉翔太(クリナップ)

《世界選手権へかけるシリーズ》

男子フリースタイル 55kg級 60kg級 66kg級 74kg級 84kg級 96kg級 120kg級
男子グレコローマン 55kg級 60kg級 66kg級 74kg級 84kg級 96kg級 120kg級
 女   子  48kg級 51kg級 55kg級 59kg級 63kg級 67kg級 72kg級

(文=増渕由気子)

 ロンドン・オリンピックが終わり、2016年リオデジャネイロ・オリンピック向けていくつもの新陳代謝が行われた全日本チーム。世代交代が行われた真骨頂が、男子グレコローマン55kg級だろう。世界選手権初出場を決めた田野倉翔太(クリナップ=右写真)は、社会人1年目で世界へ飛び出す。

■旧ルール向きの選手だったが、新ルールに即座に対応

 同階級は、2008年の全日本選手権から長谷川恒平(福一漁業)がエースとして君臨し、国際大会でも目覚ましい活躍を挙げてきた。ロンドンではメダル獲得ならなかったが、まだ28歳で、次を狙える位置にいる。

 田野倉は6月の全日本選抜選手権の決勝でその長谷川を撃破。僅差ではあったが、「ずっと目標にしていた先輩に勝つことができ、リオデジャネイロに向けていい一歩を踏み出せたと思う」と、偉大な先輩から貴重な白星をもぎ取った。

 長谷川に勝つだけの実績は十分に積んでいた。長谷川がオリンピック後の休養で欠場した昨年の全日本選手権で初優勝を飾ると、3月のハンガリー・グランプリ大会で優勝。4月のアジア選手権(インド)でも銀メダルを獲得していた。

 長谷川に勝ったあとは、7月のユニバーシアードに出場して銅メダルを獲得。どんな大会でもメダルを持ち帰る安定さも頼もしい要素のひとつだ。

 7月下旬からは2週間の韓国遠征で体力づくりに励んだ。田野倉のスタイルは瞬発力を生かすタイプで、旧ルールにマッチしたものだった。だが、新ルールになってスタンドでの攻撃力を重視した練習に取り組むと、そのスタイルにもぴったりとはまった。

 グレコローマンに定評のある韓国選手との練習を重ねれば重ねるほど、「世界と差がないこと」を実感。「前に出られるようになりましたし、自分がやりたいレスリングができている」と手ごたえを十分に感じた韓国遠征となった。帰国後は日体大恒例の草津合宿に参加。スタンドの練習を中心にさらなる強化を続けた。

■中学までは剣士だった田野倉 レスリングの目覚めは高校2年の半ばから

 世界にはばたいたころの長谷川をほうふつさせるようなパワフルさを見せる田野倉だが、「中学までは剣道やバスケットボールをやっていました」と、経歴ではキッズ時代からレスリング界で名をとどろかせていた長谷川とは異なる。高校からレスリングを始めて、大学4年で全日本を制するというスピード出世の選手だ。

 レスリングを始めるきっかけとなったのは、高校入学時の部活勧誘だった。「高校に進学して剣道部にでも入ろうと思っていたら、顧問の奥山恵二先生から『レスリングをやってみないか』と、なかば強引に勧誘されたんです。最初は嫌だったんですよね」と苦笑しながら振り返る。

 田野倉のやる気スイッチは、入部1年半ほど入ることはなかった。「練習はさぼり魔で、なあなあで続けていました」と、顧問で1992年バルセロナ・オリンピック代表の奥山監督の熱意に折れて、なんとか続けている状態だった。

 だが、やる気スイッチが入る時がやってくる。「2年生の全国高校グレコローマン選手権で3位に入ったんです。もともと負けず嫌いでしたから、そこから全国で1番になりたいと本気になりました」。これをきっかけに、別人のようにレスリングに打ち込んだ。

 その後、体育教師を目指すという理由で日体大に進学。グレコローマンに打ち込むには練習相手、環境、指導者、どれをとっても最高の環境だ。みるみる成長して、大学で日本一、そして全日本選手権でも優勝を飾った。

 田野倉にはレスリングをする才能があった-。「(奥山監督が)僕のどこを見ていたのかわかりません。でも、誘っていただいたことを今では非常に感謝しています」と話し、「そのためにも世界選手権で頑張りたい」と決意を新たにした。

■最後の55kg級(?) 伝統ある階級を汚さない

 初出場となる田野倉だが、今大会にかける思いははかり知れない。田野倉は、オリンピック除外問題から派生した男子の階級減に言及した。「55kg級がなくなると思っています。伝統ある55kg級の最後の代表として、恥ずかしくない試合をしたい」。その覚悟は、ライバルの長谷川にも通じたようで、「初出場の僕に、海外の選手はこうだよとアドバイスをしてくれたり、技術指導をしてくれたりします」(田野倉)。

 ライバルの長谷川は8月の「ピトラシンスキ国際大会」(ポーランド)で優勝を遂げ、引退説を一蹴。今後も田野倉の最大のライバルとなるはずだが、今は、“チームジャパン”として田野倉を盛り上げているようだ。

 「本当に感謝しています。長谷川先輩の顔を汚さないように、しっかりとメダルを獲って帰りたい」。多くの思いを背負い、田野倉が世界一を目指す。

田野倉翔太(たのくら・しょうた=クリナップ)    初出場
 1990年8月11日、東京都生まれ、23歳。東京・自由ヶ丘学園高~日体大卒。2011年に全日本大学グレコローマン選手権で優勝し、全日本選手権2位。2012年はアジア選手権で3位に入賞し、全日本学生選手権と全日本大学グレコローマン選手権を制覇。全日本選手権で初優勝。今年3月のハンガリーカップで優勝し、4月のアジア選手権でも2位。7月のユニバーシアードも3位と、国際舞台でも実力を発揮し始めた。158cm。

 ◎田野倉翔太の最近の国際大会成績
 
 《2013年》

 【7月:ユニバーシアード(カザン)】=3位(16選手出場)
3決戦  ○[6-0]Max Nowry(米国)
敗復戦 ○[Tフォール、(7-0)]Ivan Loncaric(クロアチア)
2回戦  ●[Tフォール、(0-6)]Victor Ciobanu(モルドバ)
1回戦  ○[Tフォール、(8-0)]Sergii Dziuba(ウクライナ)
 
 【4月:アジア選手権(インド)】=2位(9選手出場)
決  勝 ●[1-2(1-1,0-3,1-5)]Choi Gyu-Jin(韓国) 
準決勝 ○[2-1(4-1,0-3,2-0)]Kanybek Zholchubekov(キルギス) 
2回戦  ○[2-0(2-0,5-0)]Li Le(中国)
1回戦    BYE
 
 【2月:ハンガリー・カップ】=優勝(14選手出場)
決  勝 ○[2-0(3-0,1-0)]清水早伸(自衛隊)
準決勝 ○[2-0(7-5,2-0)]Halima Abou(エジプト)
2回戦  ○[2-0(1-0,2-0)]Ednar Sharadze (グルジア)
1回戦  ○[2-0(1-0,3-0)]Dmytro Kharko(ウクライナ)

 

 







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