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2013.09.07

【特集】世界選手権へかける(16)…女子63kg級・伊調馨(ALSOK)

《世界選手権へかけるシリーズ》

男子フリースタイル 55kg級 60kg級 66kg級 74kg級 84kg級 96kg級 120kg級
男子グレコローマン 55kg級 60kg級 66kg級 74kg級 84kg級 96kg級 120kg級
 女   子  48kg級 51kg級 55kg級 59kg級 63kg級 67kg級 72kg級

(文=樋口郁夫)

 前回の北京オリンピックのあとは、1年以上の休養(海外留学)でマットを離れた女子63kg級の伊調馨(ALSOK=右写真)。オリンピック3連覇を達成した今回は、けがの治療も兼ねて約半年間戦列を離れただけでマットに復帰。6月の全日本選抜選手権を全試合テクニカルフォール勝ちという圧倒的な強さで勝ち抜き、今年の世界選手権に出場する。

 「1年前の自分と今の自分を比べれば、今の自分の方が格段に上でしょう」ときっぱり。危なげない闘いでロンドン・オリンピックを制した以上の強さが、ブダペストのマットでも爆発することは間違いない。

■1年前の自分を思い出せないほど進化している

 休養による充電という道をとらなかった理由を問われ、「海外留学は引退したあとでもできます。でも、レスリングは今しかできません」と答えた。オリンピック3連覇を達成しても、いや、達成したからこそ、レスリングの奥の深さを感じ、とことん追求したくなったという気持ちが言葉の端々から出てくる。

 世界選手権にエントリーしている顔ぶれには、伊調の敵となりそうな選手は見当たらない。昨年の世界選手権優勝のエレナ・ピロズコバ(米国)は、昨年のワールドカップまでに3戦3勝の相手。59kg級でモンゴル初の世界女王になったロンドン3位のバドゥーツェグ・ソルンズンボルド(モンゴル)は同オリンピックで快勝している。

全日本合宿で最後の調整に励む伊調

 大会を約2週間後に控えて調子を問われ、「いい時もあれば、悪い時もある。半分くらい」と答えたが、体調のことではなさそう。「毎日目的を持ってマットに上がっている。それが、イメージ通りにいかない時がある」という意味での「半分くらい」。“パーフェクト”を目指すオリンピック・チャンピオンなればこその“悪い時”で、そんな時は、反復練習を増やしたりして対処。頂上を目指す気持ちに妥協はない。

 究極を目指してきたここまでの練習のおかげで、「1年前はどんなだったかな、と思っても、思い出せない」と言う。そのくらい、最近の進歩は自分でも驚いている。それが冒頭の「1年前の自分と今の自分を比べれば、今の自分の方が格段に上でしょう」という言葉に出てきた。具体的にやってきたことは「ひとつひとつの技の質を上げ、イメージ通りにタックルに入る」こと。

 そこに新しい技や戦術を身につけることで「だましが効き、レスリングの幅が広がる」と話し、進化を目指してきた。危なげなく優勝したロンドンでの伊調が、さらに幅を広げ、ランクを上げたのなら、今年の世界選手権はどんな強さを見せてくれるだろうか。

■ルール変更により、宝刀“またさき”が爆発するか

 ルール変更という追い風もある。6分間のトータルポイントでの闘いは、日本選手のほとんどが歓迎しているが、伊調も同じ。まだ国際大会で新ルールは経験していないものの、2004年アテネ・オリンピックまではこのルールを経験しているだけに、若い選手よりはトータルポイント制のレスリングを知っている。

2分3ピリオド下でも、時に見せていたまたさき(2007年世界選手権決勝)

 何よりも「グラウンドの時間が増えるというのがうれしいです」と言う。最近の伊調しか知らない人にはピンとこないかもしれないが、女子では珍しい“またさき”を必殺技としていた選手。2分3ピリオド下では、無理に仕掛ける必要がなくなったからあまり使わなかっただけであり、眠っていた必殺技が世界選手権のマットで続けざまに火を噴けば、全試合フォール勝ち、またはテクニカルフォール勝ちという結果も十分に予想される。

 成長の実感の前に、「危機感を持つくらいの歯ごたえのある選手が出てくれば、やりがいもあるし、モチベーションも上がるでしょう」と、強力なライバルの出現を待ち望む余裕すら見せる。目下の試合に臨む具体的なモチベーションは、相手のタイプやスタイルに応じて決め技を出すこと。

 「この選手にはこの技をかける、とかの目標ができれば、楽しいはず」と、新たな楽しみを感じ始めている。そのため、これまでは「自分のレスリングをやることが大事」として、あまりやらなかった対戦相手の研究もしているそうで、そんな闘いを目指しているのも、ワンランクアップしている証拠だろう。

 3度のオリンピックを含めて11度目の世界一に向け、死角は感じられない。

伊調馨(いちょう・かおり=ALSOK)   2大会ぶり8度目の出場
 1984年6月13日、青森県生まれ、29歳。青森・八戸クラブ~愛知・中京女大附高~中京女大卒。2002年世界選手権で優勝。以後、2008年北京オリンピック、2004年アテネ・オリンピックを含めて7年連続世界一。休養のあと、2009年末に復帰し、2010・11年の世界選手権で優勝。2012年ロンドン・オリンピックでも勝って3連覇を達成した。166cm。

 ◎伊調の最近の国際大会成績

 ※2012年8月以降、なし

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 ◎伊調のオリンピック・世界選手権成績

 【2012年ロンドン・オリンピック】=優勝(20選手出場)
決  勝 ○[2-0(3-0,2-0)]景瑞雪(中国)
準決勝 ○[2-0(4-0,2-1)]Battsetseg Soronzonbold (モンゴル)
3回戦  ○[2-0(1-0,4-1)]Henna Johansson (スウェーデン)
2回戦  ○[2-0(4-0,2-1)]Martine Dugreier (カナダ)
1回戦   BYE

 【2011年大会(トルコ)】=優勝(45選手出場)
決  勝 ○[2-0(4-0,2-0)]Marianna Sastin(ハンガリー)
準決勝 ○[2-0(3-0,3-0)]Elena Priozhkov(米国)
4回戦  ○[2-0(1-0,1-0)]Jing Ruixue(中国)
3回戦  ○[フォール、1P1:48(F7-0=1:48)]Michala Spoustova(チェコ)
2回戦  ○[2-0(2-0,2-0)]Yuliya Ostapchuk(ウクライナ)
1回戦  ○[フォール、2P1:52(1-0,F5-0)]Yelena Shalygina(カザフスタン)

 【2010年大会(ロシア)】=優勝(28選手出場)
決  勝 ○[2-0(1L-1,3-0)]Elena Pirozhkova(米国)
準決勝 ○[2-0(1-0,4-0)]Marianna Sastin(ハンガリー)
3回戦  ○[フォール、2P1:53(3-0,F4-3)]Chen Meng(中国)
2回戦  ○[2-0(4-0,3-0)]Hanna Katarina Johansson(スウェーデン)
1回戦   BYE

 【2008年北京オリンピック】=優勝(17選手出場)
決  勝 ○[2-0(1-0=2:30,2-0=2:04)]Alena Kartachova(ロシア)
準決勝 ○[2-1(1-0=2:30,0-1,①L-1)]Martine Dugrenier(カナダ)
3回戦  ○[フォール、2P1:20(3-0,F4-0)]Randy Miller(米国)
2回戦  ○[フォール、2P0:46(2-0,3-0)]Olesia Zamula(アゼルバイジャン)
1回戦   BYE

 【2007年大会(アゼルバイジャン)】=優勝(36選手出場)
決  勝 ○[2-0(1-0,3-0)]Yelena Shalygina(カザフスタン)
準決勝 ○[2-0(4-2,3-0)]Lise Legrand Golliot(フランス)
4回戦  ○[2-1(2-0,0-1,1-0)]Xu Haiyan(中国)
3回戦  ○[フォール、1P1:56(F7-0)]Yoselin Rojas Urbira(ベネズエラ)
2回戦  ○[2-0(2-1,1-0)]Sara MacMann(米国)
1回戦   BYE

 【2006年大会(中国)】=優勝(28選手出場)
決  勝 ○[2-0(1-0,1-0)]Xu Hai Yan(許海燕=中国)
準決勝 ○[2-0(2-0,1-0=2:04)]Monika Rogien(ポーランド)
3回戦  ○[2-0(3-0.4-0]Yoseline Rojas(ベネズエラ)
2回戦  ○[フォール、2P0:26(TF6-0=0:41,F3-0)]Thi Hai Yen Nguyen(ベトナム)
1回戦  ○[2-0(4-0,7-2)]Megan Dolan(カナダ)

 【2005年大会(ハンガリー)】=優勝(24選手出場)
決  勝 ○[2-0(3-0,1-0)]Jing Ruixue(蘇麗慧=中国)
準決勝 ○[2-0(3-0,3-0)]Anna Polovneva(ロシア)
3回戦  ○[2-0(3-0,3-0)]Helena Allandi(スウェーデン)
2回戦  ○[2-0(3-2,2-1)]Sara Mc Mann(米国)
1回戦   BYE

 【2004年アテネ・オリンピック】=優勝(12選手出場)
決    勝  ○[3-2]Sara Macmann(米国)
準 決 勝  ○[4-0]Lise Legrand(フランス)
予選3回戦 ○[6-2]Alena Kartashova(ロシア)
予選2回戦  BYE
予選1回戦 ○[Tフォール、5:10=10-0]Lyudmyia Golovchenko(ウクライナ)

 【2003年大会(米国)】=優勝(27選手出場)
決    勝 ○[4-3=8:20]Sara McMann(米国)
準 決 勝  ○[4-0]Lyudmila Golovchenko(ウクライナ)
準 々 決 勝  ○[3:35=4-0]Volha Khilko(ベラルーシ)
予選3回戦 ○[4-0]Christiane Renee Legrand(フランス)
予選2回戦 ○[フォール、1:45=10-0]Agoro Papavasileiou(ギリシャ)
予選1回戦  BYE

 【2002年大会(ギリシャ)】=優勝(23選手出場)
決      勝   ○[フォール、4:38=4-0]Eriksson, Sara(スウェーデン)
準  決 勝    ○[3-0]Aanes, Lene(ノルウェー)
決勝T1回戦 ○[4-1]Bassa, Malgorzata(ポーランド)
予選3回戦  ○[フォール、2:58=4-3]McMann, Sara(米国)
予選2回戦  ○[フォール、2:01=5-0]Yoon, So-Young(韓国)
予選1回戦  BYE


 







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