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2013.09.08

【特集】世界選手権へかける(17)…男子フリースタイル120kg級・荒木田進謙(警視庁)

《世界選手権へかけるシリーズ》

男子フリースタイル 55kg級 60kg級 66kg級 74kg級 84kg級 96kg級 120kg級
男子グレコローマン 55kg級 60kg級 66kg級 74kg級 84kg級 96kg級 120kg級
 女   子  48kg級 51kg級 55kg級 59kg級 63kg級 67kg級 72kg級

(文=布施鋼治)

 昨年夏、ロンドン・オリンピックが世界中を賑わしている頃、男子フリースタイル120kg級の荒木田進謙(警視庁)は地元青森でテレビ観戦していた。「(時差の関係で)深夜に放送していたじゃないですか。でも、見たかったので、結構めざまし時計をかけて早く寝て生中継に備えていました。特に磯川先輩(孝生=男子フリースタイル96kg級)の試合を見たかったので」-。

 悔しかった。本来ならば、ロンドンの最後の出場キップをかけてヘルシンキであった同年5月のオリンピック最終予選に出場するはずだった。ところが、その前の予選で左ひざを負傷し、欠場を余儀なくされてしまった。

■地元の恩師や支援者からの励ましで背中を押される

 「もうイヤだ」。オリンピック出場の夢がついえた瞬間、荒木田は自暴自棄になった。「このまま自分はレスリングから遠ざかるんじゃないかと思いました」

 その後、左ひざの手術を行い、静養するために実家に帰省してロンドン・オリンピックを迎えた。十分に練習もできない状態だったのでフラストレーションはたまる一方だったが、日本勢の活躍を目の当たりにしたら別の気持ちが頭をもたげた。

 「もう一回挑戦したい」。警視庁に入ることも内定していた。大学を卒業後、所属先には頭を悩ませていたが、ようやく腰を落ち着けて練習できる環境を得たわけだ。もうひとつ荒木田の背中を後押ししてくれたものもある。地元の恩師や支援者からの温かい励ましだ。

 「もう一度頑張れよ」。荒木田は腹を括った。「応援してくれる人がいるなら、やるしかない」-。その後、けがには人一倍気を使うようになった。「まだまだ若手だと思っていたのに、来年3月で26歳になる。だったら、もう中堅というか、ベテランじゃないですか。体を大事にしていかないと、練習もできない」

■韓国選手の気迫と集中力に驚き

 7月の韓国遠征での地元チームとの合同練習では、得るものが多かったという。「個人的な見解ですけど」と前置きしてから、荒木田は日本と韓国のレスリングの違いを話し始めた。

 「韓国の選手は意地というかプライドが強いと思いましたね。練習で1点でも取られたら、むきになって向かってくる。ギリギリでポイントをとれなかった時とか、すごく悔しがっているように見えました。日本だったらこれ以上やったら、けがをしそうだからやめておこう、と思うような局面でも、韓国の選手たちは当たり前のように攻めてきましたね」

 けがをしたら、元も子もないが、その気持ちを肌で感じたことは大きな収穫だった。「ひとつの攻防に対する集中力はすごかったですね。あとはウエートトレーニング。同じ階級の選手と比べても違うし、84㎏級の選手に負けるようなところもあったので、向こうでもウエートトレーニングは頑張ってやっていました」

 今回の世界選手権の目標は2回戦突破だ。「(2011年の世界選手権では)1回勝っているので、今回は2回勝ちたい。2回勝ったらベスト8なので、オリンピックの出場権も見えてくる」

■1年前の悔しさを世界選手権へぶつける

 ゴールは、もちろん2016年にリオデジェネイロで行なわれるオリンピック出場だ。荒木田は、その前にやるべきことがあると考えている。「歳も歳なので、その次とかは考えていない。やることは全てやって、今回の世界選手権に臨みたい。まだ3年あるとは思わず、ひとつひとつキャリアを積むことで少しずつレベルアップしていければいいかなと思っています」

 「これだけは同階級の選手に負けないという武器は何か」と聞くと、荒木田は差し合いをあげた。「スタミナで勝ちたいんですけど、そのためには組み手が必要。やっぱり終始相手を動かしていないと、スタミナでは勝てませんから」。差しを有効に使うことができたら、現時点で抱える課題をクリアすることもできる。

 「最近の負けパターンは、最初からボコボコにやられる。あるいは、最初に結構点を取られるけど、その後巻き返す。でも、また最後にとられて負けるパターンが多い。なので、土壇場でもつれた時でも1点とれるようになりたい。それをコーチも僕に求めていると思う。この展開になったら荒木田はいけるというような確固たるもの(必勝パターン)がほしい」

 荒木田のモチベーションはひじょうに高く、どんな練習でもやる気がみなぎっていた。特にスピードは重量級の中でも飛び抜けていた。1年前の悔しさを世界選手権にぶつけることができるか。

荒木田進謙(あらきだ・のぶよし=警視庁)   2大会連続3度目の出場
 1988年3月26日、青森県生まれ、25歳。八戸クラブ出身。青森・光星学院高~専大出。高校時代の04・05年に2年連続で高校三冠王を獲得するとともに、2年連続で全日本選手権2位。2006年全日本学生選手権、全日本大学選手権と国体のほか、アジア・ジュニア選手権で優勝。2008年北京オリンピックを逃したあと、2009・11年世界選手権出場。しかし、ロンドン・オリンピックも出場を逃した。180cm。

 ◎荒木田進謙の最近の国際大会成績

 《2013年》

 【4月:アジア選手権(インド)】=10位(13選手出場)
1回戦 ●[0-2(0-4,2-3)]Dmitriy Popov(カザフスタン)

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 ◎荒木田進謙の世界選手権成績

 【2011年(トルコ)】=16位(31選手出場)
2回戦 ●[0-2(0-1,TF0-7=2:00)]Davit Modzmanashvili(グルジア)
1回戦 ○[2-0(4-0,1-0)]Tomar Rajeev(インド)

 【2009年(デンマーク)】=26位(27選手出場)
1回戦 ●[0-2(TF0-7=0:59,0-4)]Kara Recep(トルコ)


 







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