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2013.09.12

【特集】世界選手権へかける(20)…女子55kg級・吉田沙保里(ALSOK)

《世界選手権へかけるシリーズ》

男子フリースタイル 55kg級 60kg級 66kg級 74kg級 84kg級 96kg級 120kg級
男子グレコローマン 55kg級 60kg級 66kg級 74kg級 84kg級 96kg級 120kg級
 女   子  48kg級 51kg級 55kg級 59kg級 63kg級 67kg級 72kg級

(文=樋口郁夫)

 女子55kg級は、2004年アテネ・オリンピックでの女子採用にともない、2002年の階級区分変更でそれまでの56kg級に変わって誕生した階級だ。女子のオリンピック6階級採用によって、来年には階級区分が再び変わり、55kg級という階級はなくなる可能性が高い。

 55kg級は吉田沙保里にはじまり、吉田沙保里(現ALSOK)で終わる可能性が強まった。2002年の世界選手権(ギリシャ)で初出場初優勝を果たして以来、世界選手権とオリンピックで一度も女王の座を明け渡さなかった。

 「最後の55kg級になるかもしれません。タイトルを守り切って終わりたい」。昨年の世界選手権(カナダ)は世界13連覇という偉業をかけて闘ったが、今年は55kg級の歴史のすべてに自分の名前を刻む大会となる。

■8月24日に熱中症で倒れる!

 無敵のオリンピック・チャンピオンでも、日本の今夏の暑さには体調を崩してしまった。「8月24日だったと思います。熱中症なのでしょうか、野外で走っている時、貧血のようになって頭が痛くなり、吐いてしまって…」。すぐに医師の元に駆けつけ点滴を受ける治療を受けた。

 常に貧血との闘いがある体なので、血液検査をすることになったが、血管が細くなっていたのか、「血液が採れない状況でした」。8月中旬の十日町合宿の時からいい具合に練習ができ、体力も上がって「ロンドンの時以上に強いな」と思うほど調子がよかっただけに、一瞬、顔が青ざめてしまったという。

 かろうじて採決した血液検査の結果、数値が下がっているものもあったが、幸い大事には至らず、2日間の休養で持ち直すことができた。「調子がいい時ほど、注意しなければならないことを、あらためて知りました」。世界選手権を前に、気を引き締める効果はあった“熱中症”騒動だった。

 戦列に戻ったあとの8月下旬には、至学館大と愛知県の大成高校・中学の女子柔道選手との合同練習に参加し、柔道選手との異種格闘技練習に参加した。同中学は全国大会の団体チャンピオン。柔道着は着ない闘いだったが、それでも投げはうまかった。レスリングの試合で内またで投げられたこともあるという吉田は「投げられない練習ができました」と、通常とは違う練習で心身をリフレッシュさせた。

 今月2日からの最後の全日本合宿では、チームを引っ張り、補強トレーニングでは先頭を突っ走るいつもの吉田の姿があった。「アクシデントがあったのが8月末でよかったです。いい休養になった、くらいで考えられますし」。オーバーワークは選手の敵。神様が吉田に休む機会を与えたのかもしれない。

■東京オリンピック決定で2020年まで現役へ

 レスリングのオリンピック競技からの除外問題で、選手を代表する形で多くの活動を行った。5月末には、世界選手権の予選(全日本選抜選手権)の半月前であるにもかかわらず、国際オリンピック委員会(IOC)理事会でのロビー活動のためロシアに渡った。約1週間、本格的な練習はできず、日本を代表する選手なればこその行動も余儀なくされた。

 それらへの苦言は一切出てこない。全日本選抜選手権は村田夏南子(日大)の猛撃の前に、ラスト13秒までリードされる大苦戦。ロシアへ渡ったことの影響はあるだろうが、「ロシアから帰ってきて、きちんと追い込みはできていた」と言い訳はなし。

 事情を勘案され、負けても代表に選ばれるか、プレーオフという話もあったが、「負けたら辞退するつもりでした。プライドがありますから」と勝負師の顔を見せ、逃げ道を自ら断っていた。

 吉田の体を張った訴えは、レスリングのオリンピック競技の存続という形で実った。4階級だった女子のオリンピック階級が6階級となることで、女子選手の一人としてうれしい状況もできた。55kg級がなくなることの寂しさは、当然あるだろうが、本来は55kg級でも体が小さな方であり、その下の体重の階級があれば、そちらがベストという体格だ。

 「52kg級とか53kg級とかができれば、そこに行きたい、という気持ちなんです」。そうなれば闘う相手も変わり、それが刺激となって新たなモチベーションになることもありうる。「選手寿命が伸びる?」という問いに、「ありえますね」。ベストの体重での闘いに身を投じることで、年齢による体力の衰えを補える可能性も感じている。

 選手というのは、「勝ち続けていれば、やめることはないものです」と言う。「結婚とかがあれば別でしょうが、そうした人もいませんし……。いつも、この話になるんですね!!!!」という言葉は、そろそろ終わってくれることを願うが、2020年東京オリンピックが決まり、その時まで現役でいることが現実のものとして考えられる状況となった。

 55kg級としての最後の闘いは、2020年東京オリンピックへ向けてのスタートの大会でもある。どんな勝ち方を見せてくれるだろうか。

吉田沙保里(よしだ・さおり=ALSOK)  11大会連続11度目の出場
   1982年10月5日、三重県生まれ、30歳。三重・一志ジュニア教室出身。三重・久居高~中京女大卒。2000・01年に世界ジュニア選手権を連覇。2002年世界選手権で優勝したあと、2004年アテネ五輪、2008年北京五輪、2012年ロンドン五輪を含めて世界一に13度輝く。2012年10月に国民栄誉賞を受賞。
 他に、2010年アジア大会で優勝し、アジア大会3大会連続優勝も飾った。156cm。

 ◎最近の吉田沙保里の国際大会成績

 《2012年》

 【9月:世界選手権(カナダ)】=優勝(17選手出場)
決  勝 ○[フォール、2P0:52(2-0、F4-0)]Helen Louise Maroulis(米国)
準決勝 ○[フォール、3P1:44(0-4,1-0、F3-0)]Nataliya Synyshyn(ウクライナ)
3回戦  ○[フォール、2P0:29(1-0、F3-0)]Geeta(インド)
2回戦  ○[フォール、1P0:58(F3-0)]Akziya Dautbayeva(カザフスタン)
1回戦  BYE

 【9月:ロンドン・オリンピック】=優勝(19選手出場)
決  勝 ○[2-0(3-0,2-0)]Tonya Verbeek(カナダ)
準決勝 ○[2-0(1-0,2-0)]Valeriia Zholobova(ロシア) 
3回戦  ○[2-0(1-0,2-0)]Yuliya Ratkevich(アゼルバイジャン)
2回戦  ○[2-0(1-0,1-0)]Kelsey Campbell(米国)
1回戦   BYE

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 ◎吉田沙保里のオリンピック・世界選手権成績

 【2012年大会(カナダ)】=優勝(17選手出場)
決  勝 ○[フォール、2P0:52(2-0、F4-0)]Helen Louise Maroulis(米国)
準決勝 ○[フォール、3P1:44(0-4,1-0、F3-0)]Nataliya Synyshyn(ウクライナ)
3回戦  ○[フォール、2P0:29(1-0、F3-0)]Geeta(インド)
2回戦  ○[フォール、1P0:58(F3-0)]Akziya Dautbayeva(カザフスタン)
1回戦  BYE

 【2012年ロンドン・オリンピック】=優勝(19選手出場)
決  勝 ○[2-0(3-0,2-0)]Tonya Verbeek(カナダ)
準決勝 ○[2-0(1-0,2-0)]Valeriia Zholobova(ロシア) 
3回戦  ○[2-0(1-0,2-0)]Yuliya Ratkevich(アゼルバイジャン)
2回戦  ○[2-0(1-0,1-0)]Kelsey Campbell(米国)
1回戦   BYE

 【2011年大会(トルコ)】=優勝(41選手出場)
決  勝 ○[2-1(1-0,2-2B,3-2)]Tonya Verbeek(カナダ)
準決勝 ○[2-0(TF6-0=1:57,TF7-0=1:38)]Ida-theres Nerell(スウェーデン)
4回戦  ○[2-0(5-0,7-0=0:57)]Alma Escoto Valencia(メキシコ)
3回戦  ○[フォール、1P1:09(F4-0)]Helen Maroulis(米国)
2回戦  ○[フォール、1P1:17(F5-0)]Emiriye Musta(トルコ)
1回戦   BYE

 【2010年大会(ロシア)】=優勝(23選手出場)
決  勝 ○[2-0(2-0、TF6-0=0:38]Yuliya Ratkevich(アゼルバイジャン)
準決勝 ○[2-0(5-0,3-0)]Maria Gurova(ロシア)
3回戦  ○[2-0(3-0、TF7-0=1:25]Tatiana Yadira Suarez(米国)
2回戦  ○[2-0(TF6-0=0:48T,F6-0=1:33]Tamara Kazaryan(ウズベキスタン)
1回戦  ○[フォール、2P0:54(4-0、F3-0)]Um Ji Eun(韓国)

 【2009年大会(デンマーク)】=優勝(27選手出場)
決  勝 ○[2-0(3-0、TF6-0=1:16)]Sona Ahmedli(アゼルバイジャン)
準決勝 ○[2-0(3-0,3-2)]Tonya Verbeek(カナダ)
3回戦  ○[フォール、2P1:20(3-0,F3-0)]Ana Maria Paval(ルーマニア)
2回戦  ○[2-0(1-0,2-1)]Anna Gomis(フランス)
1回戦  ○[2-0(TF8-0=1:24,TF7-0=0:55]Rafaliharisolo Maminirina(マダガスカル)

 【2008年大会(東京)】=優勝(23選手出場)
決  勝 ○[負傷棄権、2P1:03(1-0,5-0)]Lazareva Tetyana(ウクライナ)
準決勝 ○[フォール、1P0:25(F4-0)] Laverdure Brittanee(カナダ)
3回戦  ○[フォール、1P0:40(F2-0)]Zwirydowska Anna(ポーランド)
2回戦  ○[フォール、1P0:20(F6-0)]Kamlesh Devi(インド)
1回戦   BYE

 【2008年北京オリンピック】=優勝(16選手出場)
決  勝 ○[フォール、2P0:43(2-0,F5-0)]Xu Li(許莉=中国)
準決勝 ○[2-0(2-0,6-0=1:59)]Tonya Verbeek(カナダ)
2回戦  ○[2-0(2-1,4-0)]Natalia Golts(ロシア)
1回戦  ○[2-0(3-1,4-0)]Ida-Theres Nerell(スウェーデン)

 【2007年大会(アゼルバイジャン)】=優勝(38選手出場)
決  勝 ○[2-0(1-0,TF7-0=1:00)]Ida-Therese Karlsson(スウェーデン)
準決勝 ○[2-0(1-0,TF6-0=0:42)]AlenaFilipova(ベラルーシ)
4回戦  ○[2-0(①L-1,4-2)]Olga Smirnova(カザフスタン)
3回戦  ○[2-1(2-3,2-1,3-0)]Jackellne Renteria(コロンビア)
2回戦  ○[フォール、2P0:36(4-0,F6-0)]Joica Silva(ブラジル)
1回戦  ○[2-0(3-0,TF6-0=1:12)]Jessica Bechtel(ドイツ)

 【2006年大会(中国)】=優勝(27選手出場)
決  勝 ○[2-0(TF7-0=0:28,TF6-0=1:45)]Maryia Egorova(ベラルーシ)
準決勝 ○[2-0(4-0,6-3)]Ida-Teres Karlsson(スウェーデン)
3回戦  ○[2-0(1-0,2-1)]Anna Gomis(フランス) 
2回戦  ○[2-0(5-0,3-0)]Golts Natalia(ロシア)
1回戦  ○[2-0(4-3,2-0)]Andrade Marcia(ベネズエラ) 

 【2005年大会(ハンガリー)】=優勝(24選手出場)
決  勝 ○[2-0(3-0,3-0)]Su Lihui(中国)
準決勝 ○[2-0(3-0,1-0)]Tonya Verbeek(カナダ)
3回戦  ○[2-0(4-0,2-0)]Ludmila Cristea(モルドバ)
2回戦  ○[フォール1P0:32(F0:32=3-0)]Ana Maria Paval(ルーマニア)
1回戦  ○[フォール2P0:22(TF6-0=0:53,F0:22=4-0)]Neha Rathi Sh. J. Singh(インド)

 【2004年アテネ・オリンピック】=優勝(12選手出場)
決    勝  ○[6-0]Tonya Verbeek(カナダ)
準 決 勝  ○[7-6]Anna Gomis(フランス)
予選3回戦 ○[Tフォール、6:00=10-0]Diletta Giampiccolo(イタリア)
予選2回戦 ○[Tフォール、3:47=11-0]Su Dong Mei(中国)
予選1回戦  BYE

 【2003年大会(米国)】=優勝(29選手出場)
決     勝 ○[5-2]Tina George(米国)
準  決  勝 ○[3-2]Natalia Golts(ロシア)
準 々 決 勝 ○[Tフォール、2:51=10-0]Jennifer Ryz(カナダ)
決勝T1回戦 ○[フォール、0:20=4-0]Monika Michalik(ポーランド)
予選3回戦  ○[フォール、0:38=3-0]Kitti Godo(ハンガリー)
予選2回戦  ○[Tフォール、4:16=10-0]Olga Serbina(ベラルーシ)
予選1回戦   BYE

 【2002年大会(ギリシャ)】=優勝(23選手出場)
決      勝  ○[10-4]Tina George-Wilson(米国)
準  決  勝  ○[Tフォール、3:00=10-0]Ida-Theres Karlsson(スウェーデン)
決勝T1回戦  ○[Tフォール、2:13=11-0]Jennifer Ryz(カナダ)
予選3回戦   BYE
予選2回戦  ○[10-1]Minerva Montero(スペイン)
予選1回戦  ○[フォール、0:55=3-0]Tatiana Lazareva(ウクライナ)


 







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