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2013.09.13

【特集】世界選手権へかける(21)完…女子51kg級・宮原優(東洋大)

《世界選手権へかけるシリーズ》

男子フリースタイル 55kg級 60kg級 66kg級 74kg級 84kg級 96kg級 120kg級
男子グレコローマン 55kg級 60kg級 66kg級 74kg級 84kg級 96kg級 120kg級
 女   子  48kg級 51kg級 55kg級 59kg級 63kg級 67kg級 72kg級

(文=樋口郁夫)

 JOCエリートアカデミー(以下アカデミー)は、日本オリンピック委員会(JOC)が若手選手の育成のために立ち上げたプロジェクト。本協会はその理念と方針に賛同してスタート時から参画。全国から選手を集めて育ててきた。レスリングのほか卓球、フェンシングの3競技が参加している“オリンピック・チャンピオン育成学校”で、今年、初めて世界選手権に出場する選手が現れた。

 女子51kg級に出場する宮原優(東洋大=右写真)。今年3月にアカデミーを卒業し(注=同所は中高校生のチームため)、現在は所属の東洋大を中心に都内のチームで練習しているが、アカデミーでの5年間の成果が試されることは言うまでもない。

 「緊張やプレッシャーはあります。これまでの国際大会と世界選手権は、気持ち的に全然違います。でも、今の自分がどこまでできるのか、という楽しみもあります」。2010年ユース・オリンピック優勝、2012年ゴールデンGP決勝大会優勝など国際舞台で優勝を重ねた19歳は、アカデミー初の世界選手権出場という重圧を感じさせない余裕すら見せている。

■プレーオフで勝って絶望の底からよみがえる

 アカデミーの第一期生として順調に力を伸ばしてきた宮原だが、初の世界選手権出場は、すんなりとは決まらなかった。昨年12月の全日本選手権は決勝で菅原ひかり(至学館大)に敗れ、今年6月の全日本選抜選手権も決勝で入江ななみ(九州共立大)に敗れた。

 従来の世界選手権代表選考方法なら、どちらも優勝を逃したこの時点で世界選手権への道は閉ざされた。ところが今回は「優勝選手が違った場合は両者でプレーオフを行う」という規定ではなく、その場合は強化委員会で話し合いが行われるという規定。

 両大会とも2位で国際大会でも成績を残している宮原にもプレーオフ出場のチャンスが与えられ、菅原、入江の3人で代表決定試合が実施されることになった。1週間後に行われた決戦で勝ち抜いたのが宮原。菅原を6-2、入江を8-0のテクニカルフォールで破り、絶望の淵からよみがえった。

 負けた2選手にリベンジしての世界選手権出場だから、文句なしの日本代表だが、選手の気持ちというのは、必ずしもそうではないようだ。国内の大会で優勝することなく世界選手権へ出場することの引け目が、心の奥底にわずかながらあるのだという。「他の選手は、みんなチャンピオンですから…」。

 しかし、2大会のチャンピオンに快勝できた事実は自信になっている。「トータルで考えるなら、プレーオフを経て代表になったことはプラスになっています。2位ですけど、『連れて行ってよかった』と言える成績を残したい。それは優勝しかありません」。心の底の引っかかりを消してくれるのは金色のメダルだけ。それ以外の色のメダルは、まったく見えていない。

■今年3月、世界チャンピオンと互角の試合

 8月中旬には世界ジュニア選手権(ブルガリア)に出場し、4試合に快勝して優勝した。「緊張することなく自信を持ってマットに上がれました。これをすれば勝てる、というものがあって、落ち着いて試合ができました」と、結果のみならず内容も満足のいった前哨戦。

 これが3分2ピリオドでの初の国際大会だった。「7点差をつければ勝てる、と思うと、思い切って攻められます。(旧ルールの)次のピリオドのために体力を残しておかなければ、という気持ちもなく、最初から攻められました」と、日本選手のご多分にもれず、歓迎の気持ちだ。

 旧ルールでのもとでは、ことし3月のワールドカップ(モンゴル)で昨年の世界選手権優勝のジェシカ・マクドナルド(カナダ)と闘っている。ピリオドスコア1-2で敗れたが、第3ピリオドはクリンチの防御を強いられた末の黒星だった。「相手はばてていました。自分もばてていましたけど、まだできると思った」と、負けたという気のしない黒星。スタミナは絶対にまさっているという感覚があり、ルールに負けた一戦だった。

 闘った者同士だけが感じる勝ち負けはどうだったのか? 「技術や場数では相手が上ですね」と世界チャンピオンに敬意を表する一方、「気持ちでどんどん行けば、勝てる相手だと思います」ときっぱり。スタミナ戦に持ち込んでの勝利の方程式は、しっかりと出来上がっている。

■アカデミー初の「世界挑戦」から、初の「世界チャンピオン」へ

 アカデミーを出ての生活は、多くのことを自分でやらなければならなくなった。「今までは、シーツ交換やごみ捨てを含めてすべてをやってもらっていました」。アカデミーの生活にあらためて感謝の気持ちが湧き、恩返ししたいという一方、人間としての自立が選手としての成長につながることは言うまでもなく、これも必要な試練だと受け止めている。

 アカデミーの「世界挑戦第1号」の栄誉を勝ち取った宮原。“世界チャンピオン第1号”というさらに輝いている栄光は目の前だ。

宮原優(みやはら・ゆう=東洋大)    初出場
 1994年4月27日、富山県生まれ、19歳。富山・MIYAHARA GYM~東京・安部学院高卒。JOCアカデミーの一期生。2010年にアジア・カデット選手権やユース・オリンピックで優勝。2011年に世界カデット選手権で勝ち、同年の全日本選手権は17歳で初優勝。
 2012年はアジア選手権やゴールデンGP決勝大会で優勝するなど、シニアの国際大会でも成績を残した。今年は8月の世界ジュニア選手権で勝ち、シニアとのダブル優勝を目指す。158cm。

 ◎宮原優の最近の国際大会成績

 《2013年》

 【8月:世界ジュニア選手権】=優勝(18選手出場)
決  勝 ○[Tフォール、1P(7-0)]Stalvira Orshush(ロシア)
準決勝 ○[Tフォール、2P(8-0)]Patimat Bagomedova(アゼルバイジャン)
3回戦  ○[6-2]Davaachimeg Erkhembayar(モンゴル)
2回戦  ○[Tフォール、1P(7-0)]Ana Randelovic(セルビア)
1回戦   BYE

 【3月:ワールドカップ(モンゴル)】=個人2位
3決戦 ○[フォール、2P0:55(0-1,F4-0)]●Jessica Medina(米国)
3回戦 ○[フォール、2P0:34(2-0,F3-0)]●Davaachimeg Erkhembayar(モンゴル)
2回戦 ●[1-2(1-0,1-2,0-3=2:03)]Jessica Macdonald(カナダ)
1回戦 ○[2-0(1-0,5-0)]●Vinesh Vinesh(インド)

 【2月:クリッパン女子国際大会(スウェーデ)】=優勝(9選手出場)
 決  勝 ○[2-0(1-0,4-0)]Ekaterina Krasnova(ロシア)
 準決勝 ○[フォール、1P1:17]Stine Mared(スェーデン)
 2回戦  ○[2-0(5-0,6-0)]Haley Aguello(米国)
 1回戦   BYE

 《2012年》

 【9月:ゴールデンGP決勝大会】=優勝(11選手出場)
決  勝 ○[フォール、1P(F7-0)]Anzhela Dorogan(アゼルバイジャン)
準決勝 ○[2-0(1-0,1-0)]Roksana Marta Zasina(ポーランド)
2回戦  ○[2-0(TF5-0,TF6-0)]Renata Malgorzata Omilusik(ポーランド)
1回戦  ○[2-0(TF6-0,TF7-0)]Samantha Klinger(米国)


 







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