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2014.07.18

【ワセダカップ・特集】レスリングを通じて成長するダウン症・自閉症児者


(文・撮影=増渕由気子)

 ダウン症児者と自閉症児者のレスリング交流戦である「わくわくワセダカップ」。2009年に始まった同大会は、今年で6回目。この大会と「ワセダクラブ」を主宰している1996年アトランタ・オリンピック銅メダリストの太田拓弥代表(早大コーチ)は、今年も成功に終わってほっとした表情を浮かべた。(関連記事)

 ワセダクラブは週1回、ダウン症児者と自閉症児者のレスリング教室を開催している。太田コーチは「レスリングのレベルが段々上がってきている。ここ数年は『セコンドも自分たちでやりたい』と言い出したのです」と選手の成長をひしひしと感じている。保護者たちの見る目も肥えてきた。「子供たちにかける言葉を聞いていると、レスリングのルールの理解度が高くなっています」と、始めた当初から見るといろいろなことに驚きを隠せない。

 立ち上げ当初、「障害者に格闘技だなんて…」という意見があり、細心の注意を払うことで払拭してきた。「確かにけがのリスクはあります。けれど、クラブを立ち上げて9年になりますが、大事故は一度もありません。練習や試合ともに、危険な体勢になったらすぐにストップするようにしてきました」と胸を張る。

 今大会の審判は、元全日本王者の田村和男(ワセダクラブ)が担当し、タックルされた選手の受け身を手伝ったりと、審判以外の部分にも注力していた。

 ダウン症児者らに指導を続けている太田代表は、選手たちから受け取るものも多い。「健常者が年を取るにつれてなくなってくる純粋な気持ち、それを思い出させてくれるのです」。それが顕著だったのは閉会式。大会MVPを発表する時に、優勝した選手(MVPの権利がある)たちが祈るような姿勢で発表するマイクを握った太田コーチを見つめ、会場全体が微笑ましい雰囲気になったことだ。

 来年はクラブ創設10年目という節目を迎える。ワセダカップも軌道に乗っていることから、太田コーチは次の目標を見据えた。「一般の大会で、デモストレーションをやりたいです。3対3の団体戦などを行って、一般の方たちに、もっとダウン症児者と自閉症児者のレスリングがあることを知ってもらいたいです」。

 そのために、協賛企業も募っている。今回は、ルーダススポーツ、イデア工房に加え、早大OBが所属している阪神酒販にも協賛企業になってもらい、飲み物なの提供を受けた。今後の発展を目指して太田代表の挑戦は、まだまだ続く。

■京都でも“ダウン症クラス”やっています…京都八幡クラブ

 ワセダカップの常連として毎年参加している京都八幡クラブからは、今大会6人の選手が参加した。クラブを率いる浅井努監督は「毎年、観光バス1台を貸し切って上京するほどだったんですが、今年は日程の都合で6選手と少なくて…。普段は倍以上出ているのですが」と多くの選手が参加できなかったことを少し寂しそうに話した。

 それもそのはず、京都八幡クラブのダウン症・自閉症クラスには小学生から大人まで約30人が所属し、常時練習に来るのは20人近くを数えるという大盛況ぶりだからだ。一度参加したら細く長く続ける選手が多く、「今いる20代(大人)の選手は、中学生くらいに入会して、ずっと続けてここまできた選手がほとんどです」と驚異の継続率を誇る。

 指導スタイルに関して浅井監督は「僕は口で指示しているだけ(笑)。実際、手取り足取り指導しているのは高校生たちです。田中幸太郎や北村公平(ともに同高~早大~阪神酒販)も指導していました。偉いのは高校生たちです」と謙そんしたが、そのスタイルは親御さんたちに大好評。「もっと開講してほしい」という声があがっているようだ。

 「月2回開講ですが、京都八幡はキッズから中学、高校までのクラスがありますので、試合などで休講にすることも多いのです。特に夏場は。でも、ここにいる子供たちは活動の場が限られているから、本当はもっと開講回数を増やしたいと思っています」と、環境が整い次第、拡大していく意向を示した。

 そこまで浅井監督を熱くさせるのは、やはりダウン症児者らの成長が手に取るようにわかるからだ。「昨年の大会で、一人でマットに上がれない選手がいました。親御さんが手をひいてやっとマットに上がれたのです。でも、その選手が今年は一人でマットに上がって試合ができたのです。本当にすごく成長したなと思いました」。

 さらに浅井監督がうなったのは、閉会式の整列風景。「きちんと並びなさい」という指示がない中、それぞれのクラブ選手が、まとまって静かに整列していた。「健常者から見たら、当たり前のことかもしれませんが、きちんと座ることができるってすごいことなんです」と試合以外の面での成長にも目を細めていた。


 







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