(文・撮影=増渕由気子)
女子レスリングが初めてオリンピック種目に採用された2004年アテネ・オリンピックから2大会連続で銀メダルを獲得した伊調千春さんが、八戸工(青森)の監督として全国セコンド・デビューを果たした。
引率した選手は男子2選手と女子1選手。残念ながら個人戦の初日でいずれも敗退し、上位進出はならなかったが、伊調監督の目は「初めてのインターハイ。すべてにおいて勉強になりました。生徒がこの舞台で勝てるようにしたいです」と燃えていた。それは、今年4月に念願かなって同校に赴任してきてからだ。
伊調さんは2009年の全日本選手権を最後に選手活動を引退し、翌10年から地元・青森県の八戸西高に教師として赴任した。だが、レスリング部はなく、同好会を立ち上げて活動は始めたものの、部員は女子生徒一人。「自分が納得した練習を生徒にさせてあげられなかった」と満足のいく指導をやり切ることはできなかった。
今春、以前からレスリング部があった八戸工へ、前監督が退職されたのと入れ替わりで赴任することになり、これまでとは違った形で指導に携わることになった。現在の部員は男女合わせて11人。「中学までのレスリング経験者は2人で、あとは野球、サッカー、バスケットボールなどの経験者です」と初心者が中心のチーム。伊調監督は「高校から初めても強くなれる」と、部員全員の成長を期待している。
男女どちらかに指導の比重を置く高校が多いが、伊調監督は「男女ともに強くしたい」と意気込む。指導方法は、実際に選手と組み合って指導する実戦型も取っているようだが、体重が2倍ほどある男子選手とは、さすがにスパーリングはできず、言葉での指導がメーンになってくる。「男子の指導は難しいですね」と苦笑し、伊調監督自身にとっても勉強の日々だそうだ。
伊調監督は現役時代、常にトップ選手だった。指導対象が大学レベルになると、モチベーションが高い選手ばかりなので指導もしやすいが、高校生はレスリングのモチベーションも高め、さらに技術的なこともかみ砕いて分かりやすく伝えなければならない。
まだ手さぐりの部分があるようだが、学校側のサポートも手厚く、強くなれる環境は整っている。伊調監督は学校のバックアップを追い風に、「3、4年後くらいに男女ともにインターハイ王者を出してみたい」と目標を掲げた。