【全国中学選抜選手権・特集】３階級制覇にも正田絢子コーチ（京都・網野町少年教室）は「喜び半分、悔しさ半分」
（文＝樋口郁夫、撮影＝矢吹建夫） 左から正田絢子コーチ、伊藤海、田村生吹、清水美海。
小学校時代に吉田沙保里に匹敵するような注目を受けた伊藤は、１回戦、決勝とも10－０のテクニカルフォール勝ち。「決勝は前に一度闘ったことのある選手。前の試合の時より点差を広げて勝つことはできたので、うれしいです」と言う。前に出て距離を詰めてタックルに入ることがよくできたことで、実力差を広げる結果となったと分析した。
全国中学生選手権で１年生チャンピオンに輝き、期待にたがわぬ成績を残したが、それから半年近く、「組み手がうまくでき、相手を崩せるようになった」と成長を実感している。しかし、１年生にして勝ったことで、さらに研究され、標的にされるのも事実。それでも「あと２年、両方の大会で勝てるように頑張りたい」と話した。
清水はアジア・カデット選手権（インド）出場のため全国中学生選手権は欠場したが、アジア一となって自信をつけ、８月の世界カデット選手権（ボスニアヘルツェゴビナ）でも優勝。全国一になる以上の成績を残した。しかし、10月の全日本女子オープン選手権は２回戦で敗退。今回が再起戦だった。
結果は４試合に勝っての優勝。10月に負けた相手との対戦は実現しなかったが、「中学で最後の選抜大会で優勝することができてうれしいです」とにっこり。決勝の相手は全国中学生選手権のチャンピオンで、同じ京都の京都海洋教室の選手。試合も練習も何度もやっている。ポイントの取り合いとはならなかったが、全国優勝選手を倒しての優勝に「勝ててよかったです」と言う。 宿敵を破って優勝した清水
高校へ進学する来年は、当然、1年生でのインターハイ・チャンピオンを目指すことになろうが、「一番下の階級は46kg級。まだその体重に行っていない」と、体重を増やすことが最優先課題となりそう。
■清水とともに来年は１年生インターハイ・チャンピオンを目指す田村生吹
田村は夏秋制覇に加え、優秀選手に与えられる大会会長賞を受賞した。「もらえるとは思っていなかった。大きな賞をもらえてうれしい」と話しつつ、「（もらえるかもという気持ちが）ちょっとはありました」と照れ笑い。
だが、内容は決して100パーセント満足していなかったのは確か。ローリングがしっかり返すことができなかったなど、快勝続きの中にも反省することが多かったようだ。清水と同じく来年はインターハイでの１年生チャンピオンを目指す立場だが、こちらは体重の心配はなし。「目指します」ときっぱり言い切った。
同教室で女子を中心に指導している正田絢子コーチは、３階級制覇を「３年生を中心によくやってくれました」と前置きしたあと。「でも、もっと取れたかな？ 負けた選手はそれぞれ反省材料がある。指導者として、もっとしっかりできたのでは、という気持ちもある。喜び半分、悔しさ半分です」と欲の深いところを見せた。
それは優勝した選手への希望にも表れている。１年生で二冠を制した伊藤を「自信を持って闘っている」と評価する一方、「出場選手数が少ないから勝てている面もある。体を大きくし、厳しい階級で勝ち抜けるよう成長してほしい」と期待。
清水は「アジアと世界で勝って自信をつけたし、パワーがついてきた」としながら、本人も口にしていたように、インターハイの最軽量級で闘えるだけの体重と体力の養成を希望。田村は「キャプテンでプレッシャーもあった中、よく勝ってくれた。でも、準決勝でもしかしたらフォール負け、というシーンがあった。いい刺激材料です」と、気を抜くことなく闘うことを注文。それぞれ、来季の飛躍を期待した。
