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2016.02.12

【特集】逆転のオリンピック出場にかける…男子フリースタイル86kg級・松坂誠應(日体大)

(文・練習撮影=樋口郁夫)

 勝負の世界に番狂わせや新旧交代はつきもの。安泰と思われていた王者が陥落することは、決して珍しいことではない。昨年の全日本選手権は、3番手以下だった選手が王者のが城を崩したケースが多かった。

 男子フリースタイル86kg級もそのひとつ。前年は初戦敗退、半年前の全日本選抜選手権でもベスト8だった松坂誠應(まつさか・まさお=日体大)が世界選手権代表の松本篤史(ALSOK)を破って決勝へ進出。ベテランの松本真也(警視庁)の後塵を拝したもののオリンピック予選への挑戦資格を獲得し、逆転のオリンピック出場を狙っている。

 松本篤が下り坂の王者だったなら、新旧交代があってもおかしくはない。しかし、昨年冬のロシア~モンゴルへの遠征では2大会連続優勝。5月のアジア選手権(カタール)では銀メダルと、国際舞台でもトップレベルに近づき始めた成長株。その選手を破るのだから、ものすごい角度の成長曲線をたどっていることになる。

 松坂は、オリンピック予選に挑む前に、2月17日からのアジア選手権(タイ・バンコク)に出場する。「(アジア選手権は)自分の力がどこまで通じるかを試すいい機会。楽しみです。思い切りやってみたい」と闘志を燃やす。松本真がオリンピック出場枠を獲得してしまえば、もう手が届かなくなるリオデジャネイロ行きのキップだが、「自分の出番が来ると思って練習をやっています。アジア選手権もそのための経験。外国選手に技が通じるかを試したい」と話した。

■自分のスタミナを考え、前半は抑える作戦が当たる!

 全日本選手権では2回戦で松本篤と対戦。5-3のスコアで勝つことができた。相手は日体大の道場で毎日練習をやっている先輩。「篤史先輩がいたから、今の自分がある。思い切りやることしか考えていなかった」と、“思い切りのよさ”を勝因に挙げるが、開始からやみくもに攻めたわけでもなさそう。

 「自分はスタミナがないので、リードされて後半になったら追いつけません。第1ピリオドで大きな差をつけられないことが大事。第1ピリオドで体力を使い切ってしまわないよう闘いました」と、闘志の中にも考えた闘いを展開した。過去2回の対戦(前年の全日本選手権と半年前の全日本選抜選手権)では、ともに0-4の黒星。攻撃の糸口をつかめない試合だった。

 「練習では時にポイントを取れていましたが、試合ではまったくダメでした」と松本篤の試合運びのうまさに脱帽するとともに、その闘いの中から「抑えて、抑えて、勝負どころで力を出すこと」の必要性を感じ、取り組んできた。その成果が出た勝利だったのだろう。

■オリンピック予選へ向けて外国選手対策が急務

 だが、目標の選手を破ってしまうと、そこで気持ちが切れてしまうことは、よく見られる光景。そのため、「目標の選手はいない。全員がライバル」と自分に言い聞かせ、優勝こそを目標に定め、途中で気持ちが折れないようにしている選手も少なくない。

 松坂は「ホッとした部分があったかもしれませんね…」と、目標の選手を破ったことで緊張の糸が切れた可能性を否定しなかった。続く準決勝では今年2戦2勝の村山貴裕(大東大)に辛うじて勝ったものの、決勝は松本真の壁にはね返された。「心が充実した状態での闘いなら、勝てたのでは?」との問いには、松本真に気がねしてか明確な答えは返ってこなかったが、否定するような雰囲気はまったくなかった。

 ぜがひでもオリンピック出場枠を取り、松本真とのプレーオフに臨みたいところ。そのためにも、外国選手を相手にした強さを身につけなければならない。これまで世界ジュニア選手権を含めて3度の国際大会の経験があるが、まだメダルには手が届いていない。

 「(外国選手は)脚をさわられてからが強く、粘りがある。逆に脚をさわらせてしまうと、日本選手とは違うパワーで引きつけてくる。体が柔らかいので、自分が攻めてもなかなかポイントにつなげられない」といのうが外国選手から感じる平均的な特徴。

 ここを乗り越えてポイントにつなげるためには、「タックルに入ってからの処理をしっかりし、かつ素早く攻めること」などを考えている。日体大の松本慎吾監督からは「基礎体力が足りない。もっと体力をつけろ」というアドバイスを受けているという。

■全日本選手権前夜にあきらめかけたリオデジャネイロの道だが…

 全日本選手権の2回戦で松本篤と当たる組み合わせと分かった時、「正直言って、『リオデジャネイロはなくなったな』と落ち込みました」と振り返る。決勝で松本真に敗れたあとは、「自分を強くしてくれたのは篤史先輩。(先輩の夢を打ち砕いたのに)何で優勝できなかったんだ」と、情けなさで涙が止まらなかった。

 勝負の世界では、鍛えてくれた先輩に勝つことを「恩を返す」と言い、最高の恩返しとされている。インターハイ・ベスト16だった松坂を鍛えてくれた一人が松本篤。しかし、今の状態では恩を返したことにはなるまい。オリンピックのマットに立ってこそ、恩を返したことになる。恩人の無念を晴らすためにも、今が勝負の時!


 







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