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2016.08.19

【リオデジャネイロ特集】吉田沙保里が獲得した2つのメダル 「涙の銀メダル」と「見えない金メダル」

 【リオデジャネイロ/文=増渕由気子、撮影=保高幸子】最強女子レスラー、明暗分かれる-。女子58kg級の伊調馨(ALSOK)に続いてオリンピック4連覇を狙った女子53kg級の吉田沙保里(フリー)は、決勝でヘレン・マロウリス(米国)に1-4で敗れた。得意のタックルが1本も決まらず、逆に2度のテークダウンを奪われて4失点。

 吉田が「タックルを2回決めないといけない大きな点差が開いてしまった」と振り返ったように、1度のアタックでは埋まらない点差を尻目に時間だけが過ぎ、終了のブザーが鳴った。

 「金メダルがよかったんですけど、悔しいです。いろんな人に金メダルを獲って見せる約束をしていたので、果たせずに申し訳ない。日本チームの選手団主将として役目を果たせず、すごく悔しいです」。吉田は、うつむきながら涙を流し、声を絞り出した。

■決勝は宿敵ではなく、過去2戦2勝の若手選手

 前日、伊調ら3選手全員が金メダルを獲得。日本にとってこれ以上ないスタートだった。吉田もそれに続くべく準決勝まで無失点で勝ち進み、いつも通りにメダルを確定させていた。

 準決勝後のミックスゾーンで、吉田はあっけらかんとこう答えた。「組み合わせが良くて」-。1回戦のアゼルバイジャン、2回戦のセネガル、3回戦のベネズエラとは、これまでの実績から考えると、問題のない相手ばかりだった。

 しかも決勝の相手は、予想されていたソフィア・マットソン(スウェーデン)ではなく、マロウリスだ。マットソンをフォールで破って決勝に上がってきたとはいえ、過去の2度の対戦では、いずれもフォールで下している相手。昨年は55kg級で世界女王に輝いたが、それはあくまで非オリンピック階級での話だ。

 今回からシード制が採用され、昨年の世界選手権1、2位の選手は自動的に反対ブロックになるシステムを導入した。マットソンと決勝以前に闘うことはないが、逆に吉田は決めつけてしまった。「決勝戦はマットソンが来る」-。

 ふたを開けてみれば拍子抜け。”対戦成績のいい若手選手が決勝”という気持ちになってしまった。ところが、55kg級でチャンピオンになったマロウリスは思った以上に成長していた。「4年前からパワーがついて、55kg級でも減量が多かったのに、そこから53kg級に落として、しっかり動けていた。ヘレンは強くなっていました」。

 スピードと俊敏性が売りの吉田をがっちりと捕まえたマロウリスは、吉田の自由を奪って優位に試合を進めた。足を取られても元55kg級の体格差を生かして、グラウンドでも譲らなかった。「相手の押しが強くて空回りした」。スピードではなく強引なパワー勝負に持ちこまれた。

■「沙保里の銀は、金メダル以上の銀」…栄和人強化本部長

 敗因は何だったのか。53kg級リミット計量は11ヶ月ぶりと間が空いて実戦経験不足も懸念されたが「それは関係ない」ときっぱり。2014年に急逝した父でありコーチだった栄勝さん存在の欠如についても、「(父の代わりに)たくさんの人に支えていただいたので大丈夫」と答えた。敗北の理由として、「気持ちで負けてしまった」点を挙げ、若手の勢いに押されたことを認めた。

 「カオリン(伊調馨)が4連覇して、とてもうらやましくて、私もしたいと思ったんですけど、できなくて…。一緒に4連覇しようって言っていたのに残念です」。

 明暗が分かれてしまったレスリング界の2大スター。吉田は自分を「情けない」と反省しきりだったが、栄和人強化本部長は違った見解を示した。今回の女子代表は全員、至学館大の後輩。どの選手も強い吉田にあこがれ、慕ってきた。オリンピックを4度経験しているものとして、吉田は合宿や生活面でも常にチームをけん引する存在だった。

 栄強化本部長は「私にも馨にも気をつかい、チームを引っ張ってくれた。沙保里は負けたけど、若手がここまで金メダルを獲れたのは、沙保里のおかげ。だから沙保里の銀は、金メダル以上の銀だと思う」と感謝の言葉をつづった。

 連覇や個人戦の連勝記録などいろいろな記録がストップしてしまったショックは計り知れない。けれども、女子が6階級に増えた最初のオリンピックで、4個の金メダル、1個の銀メダルと史上最高の結果を出せた。世界選手権のように国別対抗の記録があるなら、あきらかに日本が“金メダル”に値する。

 個人の銀メダルに加えてもう一つ、“日本団体1位”という見えない“金メダル”が吉田の首にかけられていた。


 







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