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2016.08.20

【リオデジャネイロ特集】20歳で銀メダル獲得、東京オリンピックの本命となるか…男子フリースタイル57kg級・樋口黎(日体大)

 【リオデジャネイロ特集/文=増渕由気子】世界デビュー戦のオリンピックで銀メダル獲得! 男子フリースタイル57kg級は、樋口黎(日体大)が初出場で銀メダルを獲得。日本のお家芸といわれるフリースタイルの最軽量級で、2004年アテネ大会から4大会続いているメダル獲得の伝統を守った。

 61kg級世界王者を含めて新旧世界王者が4人もひしめくことになった激戦のトーナメント。対する日本の樋口は、弱冠20歳とジュニアの年齢。肩書のある選手たちを倒さなければメダルがない中、初戦で2009・14年世界王者のヤン・ギョンイル(北朝鮮)に第2ピリオドで畳み掛ける攻撃でテクニカルフォール勝ち。準決勝は樋口が「高校生の時から知っている伝説の選手」と憧れだったハッサン・ラヒミ(イラン)を倒してメダルを確定させた。

■第2ピリオド途中までリードする展開だった決勝

 決勝の相手は昨年王者のウラジミール・キンチェガシビリ(ジョージア)。第1ピリオド1-0でリードし、第2ピリオド、樋口のタックルで3-0とリード。金メダルに大きく前進したかに見えた。

 だが、キンチェガシビリには世界での経験があった。樋口の高速タックルを紙一重で耐えるうちに、タイミングをはかったのか、第2ピリオドの樋口のタックルをがぶり返しで封じて2点。さらに、アクティブタイムを科せられた樋口が得点できず、あっという間に3-3の同点へ。このままのスコアなら、ラストポイントでキンチェガシビリの勝利となる。

 ラスト30秒、相手が必要に樋口の腕をつかむなどして、反撃できずに試合終了。終盤には相手が反則ギリギリの防御をしたことで、日本チームはチャレンジ。しかし結果は変わらず、日本はロンドン大会に続いての金メダルを獲得することはできなかった。

 世界王者に第2ピリオド途中までリードする展開だっただけに、金がすり抜けていった銀メダルとなり、樋口の表情に笑みはなかった。

 後の祭りだが、樋口は「片足に入れたけど、テークダウンしないといけないと思ってしまった」と、2点技にこだわりすぎてしまった点を反省点に挙げた。外に押し出して1点ずつ積み重ねていたら、違った展開になっていたかもしれない。経験の差が出た試合だった。

 「やっぱり1番じゃないとだめだと言い聞かせていたので、悔しい気持ちはたくさんあります。けれども、自分が持てる最大の武器は出しました。後悔はないです」。

■平均年齢25歳以上だったロンドンに比べて若手が活躍

 4年前のロンドン・オリンピックの時、樋口は高校2年生だった。新潟市で行われたインターハイに出場して個人戦優勝を決めた。「漠然としていましたが、なんとかしてリオに出てメダルを獲りたい」。この志からわずか4年で本当に成し遂げてしまったのだから驚きだ。

 1984年ロサンゼルス大会に19歳で銀メダルを獲得した赤石光生の記録こそ敗れなかったが、樋口や22歳でグレコローマンの銀メダルを獲得した太田忍(ALSOK)の若手がメダルを獲ったことは、近年の日本レスリング界では珍しいことだった。

 樋口は「27、28歳とベテランの選手がオリンピックに出るものだという固定概念がありました。それを打ち破れて、若くても世界の経験がなくてもここまで闘えるというのが分かってよかったです」。

 4年後にオリンピック開催を控える日本にとって、今回はメダルの伝統を守りつつ、4年後を見据えた闘いがどうできるかが焦点だった。一時は、実績がなくても経験を積むために若手を代表に、という案が浮上したほど若手育成が課題だった。

 今回のメダリストは、4連覇を決めた伊調馨以外は全員が23歳以下。4年後は選手生活のピークを迎える選手がメダリストになったのは大きな収穫だった。2008年北京大会で銀メダルだった松永共広・日本協会専任コーチは、「僕は28歳で銀メダルだった。それを20歳でやりとげたことはすごい」と樋口のポテンシャルに舌を巻いた。

■和田貴広強化委員長が「あんな20歳見たことない」と舌を巻いた20歳

 和田貴広強化委員長も「あんな20歳見たことない。これだけのプレッシャーの中、淡々と練習し、浮き足立つこともない。東京に必ずつながる」と若手の飛躍に期待を寄せた。

 「僕の高校生の世代は、史上最強世代と言われています。その第一弾として僕がオリンピックに出て、世界に通用する闘いができた。リオでも金メダルを狙っていたけど、東京で(今回よりも)いい結果を出すステップでもあります」。

 銀以上の結果は金しかない。4年後に向けて樋口が課題に挙げるのは、練習以外のこと。「練習することは努力だと思わない。レスリングが好きだから。けれども、食事などは…。今回の減量では気が狂うかと思いました」と、食事の面ではいつも周囲に世話を焼かせている。

 お菓子好きなキャラもすっかり定着し、「1週間は好きなものを食べます。マカロンが食べたい」と最後はごく普通の大学生の顔をのぞかせ、マスコミ陣を笑わせた。東京オリンピックに向けて日本のお家芸を守るのは、この樋口黎か―。


 







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