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2016.10.14

【特集】一部リーグ定着にかける慶大、八田忠朗氏のクリニックで実力アップへ

(文・撮影=樋口郁夫)

 今年5月の東日本学生リーグ戦・二部リーグで優勝し、入れ替え戦でも勝って一部リーグ昇格を果たした慶大。来年は1972年以来、45年ぶりに一部リーグでの闘いが待っている。

 慶大といえば、早大と並ぶ私立大学の雄。レスリングでは日本で3番目に歴史のある大学チームだ。しかし、強豪大学にあるような「スポーツ推薦」という名称の入試制度は存在しない。スポーツほかの実績をもとにした「AO入試」という制度はあり、この時期に行われているが、学業の成績もなければならない。

 他大学の「スポーツ推薦」も、スポーツの実績に学力が加味されて入学が決まるケースが多いだろうが、慶大は学力のラインが高く、学部によっては高校での評定が4.5以上という厳しい条件がある。端的に表現するなら、「スポーツさえできれば学業はどうでもいい、という学生は要らない」という方針を、明確に打ち出している大学だ。

 一般入試に必要な偏差値が65とも70とも言われている大学だけに、AO入試にもそれに準じた学力が要求される。高校時代に机に向かうことの少なかった選手には、高い敷居の大学となっている。

■26人の部員の半数以上が入学後にレスリングを始めた選手

 そのため、選手集めはAO入試で合格した選手か、一般入試を受けて大学生になった選手が中心となる。現在の1~4年生の部員は26人(他に女子マネジャーが4人)。そのうち、高校時代にレスリングをやっていた選手は11人で、インターハイに出場している選手は4人だ。

 そんなメンバーで勝ち取った一部リーグの座。浪山和義監督は昇格が決まった時のことを、「選手が喜び、OBが喜んでくれたが、私自身が本当にうれしかった」と振り返る。前任の北原義之監督の時代に、警視庁の土方政和監督が時に練習に顔を出してくれるようになり、ハイレベルの指導を受けることができた。

 世界選手権代表にまでなった石田智嗣選手ら警視庁所属の全日本トップ選手も時に顔を出し、新人選手権のBグループで優勝選手が出るチームになった。そんな状況下でバトンを受けたのだから、責任は重かった。リーグ戦のネット生中継が開始されたことで、大会時のOBの関心度もアップ。期待は高まっていたという。

 すぐに「来年が大変だ」と気が引き締まった。昇格の主となった4年生11人が抜ける。気を引き締めていかなければ、すぐに二部へ逆戻りとなる。今夏は法大にお願いして合同合宿。一部リーグの大学の実力を実感しており、浪山監督は「差があるので、来年までにしっかり鍛えたい」と話す。さらに、「二部と一部とでは試合も違うので、選手数も必要」と、来春、一人でも多くのレスリング経験者の入部を期待する。

■「レスリングはルールのあるケンカ!」…闘争心の必要性を訴える八田忠朗さん

 実力アップを目指す一環として、10月4日、米国ナショナルチームのコーチを務めたこともある八田忠朗さんを講師に招いてクリニックを行った。八田さんは昨年から日本各地でクリニックを実施しており、慶大でのクリニックは昨年に続いて2度目。

 八田さんは、実は、慶大に入学した過去を持つ。慶應高校の選手として1960(昭和35)年のインターハイで優勝し、翌春、いったん慶大に入学したが、休学して米国へ。そのままオクラホマ州立大に入学することになり、慶大は退学することになった。

 したがって、慶大のOBではない。それでも、「いったん入学して籍はあったわけですから、慶大の血が流れています」と、“母校”での指導に熱が入った。

 八田さんは、まず学生選手に「レスリングとは何か?」と問いかけた。答えは「難しく考えなくていい。ルールのあるケンカ」-。野蛮という意味ではなく、闘争心をもって挑まねばならないことを伝えた。

 また、大リーグで10年連続200安打など不滅の記録をマークしているイチロー選手(現マーリンズ)は「30%の確率でヒットを打てばいい」のに対し、レスリングは、「一発入ったら必ず取る、という100%成功させる気持ちが大事。一発一中の気持ちで闘ってほしい。そのためには、相手を追い込み、抵抗できないような体勢にすることが必要」と力説した。

 他に、宮本武蔵ら昔の侍、剣道、合気道などを例に出し、レスリングの動きは日常の中にあり、決して難しいことではないと強調。レスリングの初心者に対して必ず教えるのが足の運び方。「歩く時に考えて歩いている人はいない」と、考えることなく足が動くまで反復練習する必要性を伝えた。

■一部昇格がゴールではない、ここからがスタートだ!

 選手側からは、「がぶりからバックに回ることを確実に決める方法は?」「タックルに入れても、テークダウンにつなげられないので、その対策は?」などの質問が出て、選手のやる気がうかがえた、

 伊藤睴主将(千葉・八千代松陰高卒)は、八田さんのクリニックを「動きひとつひとつの意味を説明してもらえ、分かりやすかった。基礎から説明してくれてためになった。一部リーグ定着のための刺激になります」と言う。

 自身は来年3月に卒業なので、一部リーグで闘うことはないが、12月に予定されている早慶定期戦を目指して最後の奮戦中。「自分が頑張ることが、後輩の刺激になる。何としても一部リーグに定着してほしい」と後輩にエールを送った。

 「OBからは『ここがゴールではない。ここからがスタートだ!』との期待を込めた叱咤激励を受けています」と浪山監督。だが、期待は慶大OBからだけではない。

 警視庁の土方監督が足を運ぶようになったのは、OBで岐阜県協会の丸山充信会長が日本協会の福田富昭会長にハイレベルの指導者の派遣を依頼し、福田会長の命を受けてのこと。早慶が強い競技は、世間からの注目が違う。レスリングがメジャーな存在になるためには、慶大の隆盛が必要。慶大の発展は、レスリングの発展を目指す人たちの願いでもある。

 一部リーグへ復帰した慶大の奮戦が注目される。

一部昇格の立役者の4年生

特別参加した元世界3位の甲斐(現姓岡田)友梨さん。女子マネ3人の挑戦を受け、3人おんぶに成功!


 







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