日本レスリング協会公式サイト
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2016.10.17

【特集】2020年東京オリンピックへ向けて…栄和人・強化本部長に聞く(上)

 2020年東京オリンピックまでの強化体制が決まり、2013年12月に強化本部長に就任した栄和人氏が、引き続き強化本部長として強化を担当することになった。兼任していた女子強化委員長を外れ、これまで以上に男子の強化にも力を注いで“レスリング・ニッポン”の伝統継承に挑む。

 再任した栄和人強化本部長に、男子を中心とした強化方針について聞いた。(聞き手=樋口郁夫)


■ラスベガス世界選手権での「出場枠0」で協会上層部に危機感が充満

 ――最初に、反省を含めてリオデジャネイロ・オリンピックまでのことを振り返っていただきたい。

 栄本部長 2013年12月に強化本部長に就任し、最初の世界選手権(2014年9月=ウズベキスタン)で高谷惣亮(男子フリースタイル74kg級)が銀メダルを取り、それが普通だ、という気持ちがあった。翌年の世界選手権(米国)はメダルどころか5位以内がなし。責任を痛感し、ラスベガスから、ひと足先に日本に帰っていた福田富昭会長に電話を入れて辞任を申し出たが、「リオデジャネイロまでやれ」と言われた。帰国してみると会長はスキンヘッドになっており、私だけの責任ではなく協会全体の責任だという姿勢を見せてくれた。自分ひとりだけ逃げ出すわけにはいかなかった。

 ――協会首脳の危機感が伝わってきた、と。

 栄本部長 高田裕司専務理事も富山英明常務理事も髪を短くした。それが責任になるかどうかは別として、私にだけ責任を押しつけていないことは伝わってきた。そのあと、何度も強化委員会を開き、強化について話し合った。会長は、味の素トレーニングセンターだけではなく十日町にも来てくれて選手を激励し、コーチたちと話し合った。リオデジャネイロ。オリンピックで男子のメダル獲得の伝統を続けることができたのは、協会幹部の危機感のもとで強化委員会が力の限りを尽くしてやってくれたからだと思っている。

 ――日本代表選考方法をめぐって、かなりの対立があったことが伝わっている。

 栄本部長 2014年に世界選手権とアジア大会の代表についてのことがあった。強化委員会は基本的に同じ選手を代表にしたかったようだが、私は別の選手を代表にし、多くの選手に大舞台を経験させるよう伝え、そこでかなりの論議が行われた。最終的に別の選手にしたが、世界選手権で高谷が銀メダルを取り、アジア大会でも長谷川恒平(グレコローマン59kg級)が金メダルを獲得。銀メダル、銅メダルもいて上々の成績だったので、この方針でいいと思った。ところが翌年の世界選手権で結果が出ず、オリンピック代表の選考方法について考え直さないとならなくなった(注=その時点でオリンピック代表選考方法は理事会決定済み)。

 ――3年間で世界的な実績があっても、12月の全日本選手権で2位に入れなければ代表の道がない、という選考方法でした。世界5位やアジア大会2位などの成績があった選手が、全日本2位以内を逃してオリンピックへの道が閉ざされた。「3年以上、コーチを信じてついてきた選手を救済しないのか」という声があった。

 栄本部長 フリースタイルの和田貴広・強化委員長、グレコローマンの西口茂樹・強化委員長と連絡を密にし、しっかりと話し合った。強化委員会がそれでいく、というので彼らを信じ、任せることにした。腹を割っての話し合いの中で、強化委員会がまとまっていったように感じた。

■強化委員会が一丸となって取ったリオデジャネイロの銀メダル2個

 ――強化委員会は、勝負の世界の厳しさを要求したわけですね。米国は、現役の世界チャンピオンであっても、国内予選で負けたら代表になれないシステムだった。3戦2勝システム(3試合が予定され、2勝した選手が代表)であって、一発選考ではないものの、世界王者であっても優遇がないという厳しい選考方法だ。逆にロシアは、国内選手権の結果だけではなく、過去の実績や直近の国際大会の結果を加味して選考。階級によっては7月末まで代表が決まらず、最後にプレーオフをやって決めた。

2020年までの全日本強化スタッフ
【強化本部長】栄和人(ナショナルコーチ)
【強化本部長補佐】赤石光生(ジャパンビバレッジ)
【強化副本部長】西口茂樹(拓大教)

【男子グレコローマン強化委員会】
▼委員長 松本慎吾(日体大教)
▼ヘッドコーチ 豊田雅俊(警視庁)
▼コーチ 飯室雅規(自衛隊)、笹本睦(ナショナルアシスタントコーチ)、鶴巻宰(自衛隊)、長谷川恒平(青山学院大職)、松本隆太郎(日体大職)、清水博之(自衛隊)

【男子フリースタイル強化委員会】
▼委員長 井上謙二(自衛隊)
▼ヘッドコーチ 小平清貴(警視庁)
▼コーチ 松永共広(NTC担当コーチ=予定)、湯元進一(自衛隊)、湯元健一(日本文理大職)、前田翔吾(クリナップ)、太田拓弥(早大コーチ)、米満達弘(自衛隊、現在米国へコーチ留学=来年夏~予定)

【女子強化委員会】
▼委員長 笹山秀雄(自衛隊)
▼ヘッドコーチ 齊藤将士(警視庁)
▼コーチ 木名瀬重夫(専任コーチ)、志土地翔大(至学館大職)、冨田和秀(自衛隊)、吉村祥子(エステティックTBC)、金浜良(ジャパンビバレッジ)、吉田沙保里=選手兼任(フリー)

 栄本部長 どちらが正しいかは分からない。ただ、オリンピック選手が決まったあと、強化委員会のコーチは本当に必死になってやってくれた。和田、西口両強化委員長のもと、樋口黎には松永共広コーチ、高谷には井上謙二コーチ、グレコローマンの2人には松本慎吾コーチが中心となり、太田忍には豊田雅俊コーチもが加わって徹底的に鍛えてくれた。そのおかげでメダル獲得につながったと感謝している。

 ――リオデジャネイロでは、初日に太田忍が銀メダルを取ってメダル獲得の伝統を継続。その時点で、他の選手もよけいな力が抜けていったのではないですか?

 栄本部長 ウォーミングアップ場で私と高田専務理事は、抱き合って涙を流したんですよ。あれで、女子も勢いがついたと思う。紙一重の金メダル獲得であっても、男女を通じて「金4、銀3」という成績は、協会と強化委員会がひとつになっての結果だったと自負している。

■副本部長に西口茂樹氏が就任し、赤石光生氏が入閣

 ――好成績を受け、2020年東京オリンピックまで強化本部長を継続することになったわけですが、その抱負をお願いしたい。

 栄本部長 今回の好成績が来年以降も続くとは限らないので、気を引き締めてやらねばならない。強化体制は、副本部長を新設して、グレコローマンの強化委員長だった西口君にお願いすることになった。私がすべての遠征についていけるわけではないので、そういう時に帯同をお願いしたい。私と若いコーチとのパイプ役となり、コーチから遠慮のない意見を吸い上げてほしい。フリースタイルの強化委員長だった和田君からは「大学の強化に力を注ぎたい」との申し入れがあり、残念だが退くことになった。学生との合同合宿などがあれば、指導をお願いすることもあると思うので、そうした機会にハイレベルな技術を教えてほしい。

 ――オリンピック銀・銅メダリストの赤石光生君(ジャパンビバレッジ)が本部長補佐に入りましたね。

 栄本部長 会社の理解を得られ、東京オリンピックまでかなりレスリング活動に力を注げると聞いている。私も西口副本部長も遠征に同行できない場合に行ってもらうこともあるだろうし、世界で通じた技術を選手に伝えてもほしい。

《続く》


 







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