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2016.10.30

【特集】30回を迎えた押立杯関西少年選手権…吹田市連盟・西脇義隆会長に聞く

 1987(昭和62)年に「14クラブ217選手」でスタートした押立杯関西少年少女選手権が第30回大会を迎えた。創始者であり、のちに全国少年少女連盟の会長も務めた押立吉男代表は2008年に亡くなられたが、遺志はしっかりと受け継がれ、吹田市の全面的な支援のもと、キッズ選手の目標となる大会となっている。
 
 主催する吹田市レスリング連盟の西脇義隆会長(大阪府少年少女連盟会長)に節目を振り返り、今後の展望などを聞いた。(聞き手=樋口郁夫)
 
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30回大会を記念し、全国少年少女連盟から贈られた感謝状を持つ西脇義隆会長

 ――1987年にスタートした押立杯関西少年少女選手権も、30回大会を迎えました。30年を振り返ってください。
 
 西脇会長 吹田市民教室の押立吉男会長の尽力によって始まりました。私は途中から携わることになったわけですが、押立会長が吹田市と太いパイプをつくり、吹田市のスポーツ行政の力強いバックアップを得て、ここまで成長してきました。大会を運営しているのは吹田市民レスリング教室です。コーチや保護者がボランティアで尽力してくれ、毎年、しっかりとこなしてきました。
 
 ――押立会長が亡くなったあとも、吹田市とのつながりは強いようですね。
 
 西脇会長 引き継いでみて、そのつながりの強さを再認識しました。吹田市には38のスポーツ連盟がありますが、その中でレスリングは最高の支援を受けていると言っていい状況です。強いパイプを私達に残してくれました。その遺産を途切れさせることなく続けていくことに努力しています。
 

開会式であいさつする後藤圭二・吹田市長

――今年の大会の開会式にも、後藤圭二・吹田市長が直々に参列してくださいました。
 
 西脇会長 そのくらい強い結びつきなんです。市長から聞いた話ですが、周辺自治体の市長や関係者との会合で、時たま、「吹田はレスリングが強いですね」と言われるそうです。
 
 ――吹田市の少年少女スポーツを代表するスポーツがレスリングなわけですね。
 
 西脇会長 吹田市民教室は4歳から参加できます。他の競技は小学生からです。4歳から受け入れられる体制をつくっていることが、大きなアピール材料です。けがの少ないスポーツですが、けがをしないよう細心の注意を払っていることが市からも認められていると思います。スタッフは常時15人ほどいて、けがのないような練習を心がけています。1人が見る人数には限界がありますので、指導者が多いということが、選手数の多さにつながっています。
 
■コーチのほか、保護者の力でクラブと大会を運営
 

1987年の第1回大会。この時は吹田市ではなく、高槻市で行われた

――吹田市内で数ヶ所、練習場がありますね。
 
 西脇会長 5教室あり、火・木・金・土・日曜にどこかの練習に参加できる体制になっています。平日は35選手くらい、土日曜日には70選手くらいが練習します。リオデジャネイロで銀メダルを取った樋口黎選手(吹田市民教室出身)の効果もあり、選手数が増えて、今は110選手を超えていると思います。大会は30年目ですが、教室は38年目。多少の上下がありますが、ずっとそのくらいの人数でやってきました。コーチはすべてボランティアですが、家族を含めてその方たちが支えてくださることで、毎年、この大会を開催することができています。
 
 ――コーチが多ければ、だれかが仕事で来られなくとも、他の人がカバーできます。
 
 西脇会長 皆さん仕事を持っているので、平日の練習開始の6時半には、なかなか間に合わないです。私は今年80歳で、唯一の無職のスタッフ(笑)。6時半前には会場に行って練習場をつくり、練習を開始させて、他のコーチが来るのを待っています。
 
 ――吹田市民教室が今の規模をキープできなければ、この大会の運営もかなり厳しくなってきますね。
 
 西脇会長 いつまでも続けられるよう、団結していきたいと思います。やっぱり保護者の力ですね。実は20数年前、押立代表に頼まれて少年少女レスリングにかかわることになった時、保護者の存在にびっくりしたんです。私の若い頃は、親が試合を見に来たことは一度もありませんでした。レスリングの応援に行くよりも稼がなければならなかったわけです。「なんて過保護な!」というのが、最初の気持ちでした(笑)。
 

第1回大会での押立吉男代表

――高度経済成長の時代、親は働くことで精いっぱいだったのですね。
 
 西脇会長 そうでしょうね。豊かな時代となってスポーツに対する考え方も変わり、今は、保護者の後ろ盾があってこその活動なんですね。練習の時から親が見ていて、選手はいい技が決まると親の方を見て、親の喜ぶ顔を見て喜び、やる気を出す時代。私達の時代の感覚をもってきてはなりません。ふだんの練習でも、自転車で来ることのできる選手もいますが、親が車で送ってくれなければ練習に参加できない子もいるわけです。大会運営も、保護者が参加してくれなければ成り立ちません。保護者の存在があってこその教室運営であり、大会運営です。
 
 ――選手が頑張るためにも親のサポートが必要な時代、と、
 
 西脇会長 もちろん、コーチの存在が大きいです。無給で指導してくださることに、いつも感謝の気持ちを持っています。ただ、周囲のレベルが上がり、勝負の面では厳しい状況です。この大会も25回くらいまでは、時に団体2位になることはあっても、他チームとの差がありましたが、そのあとは厳しい状況を実感しています。全国大会に団体表彰はなくなりましたが、優勝選手の数でAACC(東京)などに遅れをとっています。今川ヘッドコーチ(日体大OB)を中心に、強化にも力を入れています。他教室の練習の様子を聞き、たまには見せてもらいながら、再び実力で全国一になれるよう、頑張りたいと思います。
 
■オリンピック選手輩出でワンランクアップの飛躍を
 

2005年3・4年28kg級で優勝した樋口黎。闘っている相手は奥野里菜(一志ジュニア=現至学館大)

 ――やっとオリンピック選手が生まれました。復活を目指すいい機会ではないでしょうか。
 
 西脇会長 坂本涼子(女子57kg級)、正田絢子(女子63kg級)、西牧未央(女子63kg級)、高塚紀行(男子フリースタイル60kg級)と、世界選手権で活躍した選手はいましたが、オリンピック選手はいませんでした。樋口選手は幼年の年中から中学1年まで吹田にいて、全国大会5連覇しています。ウチは基礎づくりだけであって、オリンピックで2位までいけたのは、その後の堺リベラルキッズさん、霞ヶ浦高校、日体大の力なわけですが、それでも基礎を教えられたというのは誇りです。これからも“若鳥”に基礎を教えられるようなチームでありたいと思います。
 
 ――押立代表の存在が大きすぎ、「押立会長が亡くなったら、吹田は分裂する」という声もありました。力道山亡き後のプロレス界、大山倍達亡き後の極真空手界など、どこでもそういう例はあります。押立代表の耳にも入っていて、「そうなるかもしれないな」と言っていました。でも、8年経っても続いていますね。
 
 西脇会長 押立代表の遺産を守ろう、という気持ちでやってきましたからね。ただ、コーチの気持ちの中には、「自分たちのチームだ」という気持ちが芽生えて当然です。押立代表のやっていた時代のように、タックルとローリングだけでいい、という技術では通じない。押立代表の残したものをベースに、新しいチームをつくっていくことでいいと思います。
 

吹田市民教室の選手のTシャツには樋口黎選手のサインがある

――分裂ではないですが、正田絢子さんが網野で頑張り、中筋祐太君が大垣でチームをつくるなど、吹田育ちの選手が“分家”して頑張っています。
 
 西脇会長 どこへ行っても、「故郷は吹田」という気持ちを少しでも持ってくれていると信じています。
 
■レスリングの競技人口の増加に貢献したい
 
 ――大会の話に戻りますが、一時600人を超えて飽和状態。全国大会に合わせて幼年の部をなくしましたが(毎年1月に幼年だけで開催)、それでも今年は460人が集まり、4面マット、1日でやるのはかなり厳しい状況です。
 
 西脇会長 2面マットの最初の何試合かは、マットを半分に区切って行う状況ですからね。これは改善したいと思っています。吹田市に体育館の拡張などのお願いをしていく予定です。小学校が統合され、なくなる学校があるのですが、そうしたところの体育館を使わせてもらうとか、動いてはいるのですが、行政は簡単に動いてくれません。
 
 ――土曜日の夕方から1日半でやるのも一案ではないでしょうか。
 
 西脇会長 1日に1つのマットでやるのは90試合くらいが限度でしょう。4面で360試合。1日半での大会にすることも考えていかないとなりません。遠方から経費をかけて来てくださるわけですから、きちんとしたマットで試合をしていただくことが礼儀だと思っています。
 
 ――西日本、そして全国のキッズレスリングのためにも頑張っていただきたい。
 
 西脇会長 第30回大会を記念し、全国少年少女連盟から感謝状をいただきました。期待を感じます。全国のスポーツ人口は4000万人とも言われます。ランニング、野球、サッカーは別格として、剣道でも70万人とか。レスリングも競技人口の拡大が課題だと思います。今の5倍になれば、オリンピックの金メダルも増えると思います。日本レスリングの発展に微力ながら協力したいと思います。
 

 

 






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