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【特集】男子フリースタイル65kg級の第一人者の地位を獲得、世界へ飛躍する鴨居正和(自衛隊)

 非オリンピック階級からオリンピック階級にアップして約1年。男子フリースタイル65kg級の鴨居正和(自衛隊)が昨年12月の全日本選手権を制し、2014年61kg級に続く日本一を達成した。5月の全日本選抜選手権も65kg級で優勝しているので、65kg級として本格スタートした年に全日本の二冠を制覇。2020年東京オリンピックへ向けての一番手の位置をつかんだ。

 だが、鴨居に満足感はない。「選抜も今回も絶対的な強さという優勝ではありません。切羽詰まった末の優勝で、いつ負けてもおかしくない内容です」と話し、この優勝が今後も確実に続く手ごたえは感じていない。

■国体から全日本選手権の間に増量に取り組み、体力をアップ

 決勝で闘った学生二冠王者の米澤圭(早大)との一戦にしても、攻撃の糸口をつかめないまま、お互いにコーションのポイントのみによる2-1の勝利。ルールをよく知らない人が見たら、どちらが勝ったか分からないような内容だった。

6月の全日本選抜選手権優勝の時は喜びのガッツポーズ(上)。12月の全日本選手権優勝は、納得のできない内容のため座り込み、喜びの表情はなかった(下)=撮影・矢吹建夫

昨年2位でオリンピック予選に出場した藤波勇飛(山梨学院大)が計量失格で不出場のもとでの優勝だったことも、満足感を感じることのできない要因だ。藤波には2ヶ月半前の岩手国体の2回戦で闘い、1-5で敗れている。

 立場としては下の階級から上がってきた鴨居が“挑む側”となろうが、4歳年下の選手に敗れたことは「悔しい」出来事。リベンジしての優勝が目標だっただけに、それが達成できなかった日本一では、胸を張れないのはもっともだろう。
 
 藤波は体が大きくなっており、今後も65kg級で闘うかどうかは分からないが、国内では1階級上の選手に勝つくらいでなければ、世界、そしてオリンピックでメダルは取れまい。藤波が階級を上げても勝つだけの盤石な強さを身につけ、世界に再出撃したいところだ。

 まだ65kg級の体になり切っていないことは感じる。「国体で負けて、体がしっかりできていないことを痛感しました。それから全日本選手権までの間、自衛隊の栄養課のサポートを受け、やっと68kgくらいまで体重が増えて力負けしないようになってきました」と、この面では日本一の設備・体制を誇る自衛隊で時間をかけて強化していく腹積もりだ。

■今月の下旬にはレスリング大国・ロシアへ挑戦

 今月の下旬にはロシアへ遠征し、ロシアのトップ選手が参加することで有名な「ヤリギン国際大会」に出場する。外国選手相手にどこまで通じるかを試す。

65kg級で初の国際大会となった昨年2月のアジア選手権は3位決定戦でモンゴル選手にフォール負け

これまで65kg級の国際大会としては、昨年2月のアジア選手権(タイ)と6月のジオルコウスキ国際大会(ポーランド)の2度を経験。ともにメダルを取れず、大きな差を感じた。「外国選手は体がひと回り大きく、力もある。なかなか崩せず、自分のペースにもっていけない」というのが実情だ。

 ロシアの65kg級と言えば、リオデジャネイロ・オリンピックでソスラン・ラモノフが優勝した階級。ラモノフが出てくるかどうかは分からないが、世界最高レベルの選手の中に挑むことになる。厳しい闘いが予想される。

 しかし、「ロシアの選手と闘えるのは楽しみです。闘ってみて、その実力を知りたい」と気持ちは上向いている。やみくもに挑むつもりはない。「パワーでは対抗しない。試合運びで優勢をとり、要所でタックル。先制して、相手が反撃してくるところをカウンターで」といった作戦を考えており、自分のレスリングを貫くのが目標だ。

 2012年のアジア・ジュニア選手権を皮切りに、2度の世界選手権を含めて14度の国際大会に出場している鴨居だが、ロシア選手と闘ったのは2014年世界学生選手権(61kg級)の3位決定戦の1試合のみ。ロシアを征服しなければ世界では勝てない。できるだけ多くのロシア選手との手合わせが望まれる。

全日本合宿で練習する鴨居

■非オリンピック階級で闘ってきたことは「間違いではなかった」

 2013年までは60kg級で闘い、学生二冠王になるなど順調に力を伸ばしてきた。2014年の階級区分変更によって61kg級での闘いになったが、この階級は非オリンピック階級。「4kgの差は厳しい」として一気に65kg級へ挑むことをせず、61kg級で基礎固め。2015年に世界5位の成績を残してから階級アップへ踏み切った。

 「(61kg級でやってきたことに)意味はありました。外国選手との試合を経験させてもらえ、学ぶことは多かったです」。最初から65kg級で闘っていたなら、今の鴨居があったかどうか。リオデジャネイロは“捨てた”形となったが、段階を追って実力を養成してきたやり方は「間違っていなかったと思います」と言う。

 今年の目標は、もちろんオリンピック階級として初の世界選手権出場だ。体力アップと試合経験を積み、国内で「絶対的な強さ」を身につけて世界へ挑むことが期待される。



 

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