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【全日本マスターズ選手権・特集】気合の入った選手宣誓で注目! 61歳の山岸善雄さん(石川・金沢市協会)の日本一奪還ストーリー

(文・撮影=増渕由気子)

 気合の入った選手宣誓だった。全日本マスターズ選手権の選手宣誓は、還暦を迎えて連盟から特別表彰を受賞した山岸善雄さん(石川・金沢市協会)が行い、出だしで、「マスターズ選手権は年寄りの集まりではない。全国から精鋭が集う大会」と切り出して、何気なく聞いていた参加者たちを一気に引き込んだ。

 結びは「けがなく試合を終えて、無事に家族の元に帰ることを誓います」。試合で全力を尽くすことはスポーツマンシップとしてあるべき姿だが、格闘技では、けがをするリスクも高い。マスターズは社会人選手が多くを占める。試合の翌日には通常通りの仕事が待っている。そのことを考慮しての言葉。山岸さんの選手宣誓が心に響いたのか、会場からは例年以上の拍手と声援が巻き起こった。

■石川・星稜高校~法大でレスリングに打ち込む

 山岸さんは全日本マスターズ選手権に10回以上参加している常連選手だ。石川・星稜高校~法大時代にレスリング部に所属して腕を磨いた経歴を持つ。現在は、地元、金沢で食品製造業に携わる現役の“働きマン”だ。

 腕やお腹が引き締まった60歳とは思えない体を見ていると、山岸さんがいかに鍛えているかが想像できる。法大卒業後は、ずっとレスリングからは遠ざかっていて、学生時代の思い出の一つにすぎなかったが、「体だけは鍛えていた」と誇らしげに振り返る。

 「昔、レスリングをやっていたことにプライドがあり、元レスラーとして恥じない体調を維持していました」。社会人になっても、ひまがあればジムでトレーニングを重ね、レスリング選手としての引き締まった体を保持していた。

 転機となったのは48歳の時。高校のコーチを打診された。「高校の先輩の息子さんが星稜高校への入学が決まり、レスリング部に入ることになったんです。当時、レスリングの経験を持つ顧問が不在で、外部コーチとしてレスリングを教えることになったんです」。

■体は鍛えていたが、初参加のマスターズ選手権では完敗

 星稜高でOBがレスリングを教えているという噂が広まり、金沢市レスリング協会からマスターズへの参加を打診された。「二流選手だった」と謙そんするが、山岸さんは学生時代に新人選手権2位や大学選手権4位の成績を残した腕前を持つ。学生時代に日本一になれなかったことから「今度は本当に日本一になりたい」とマスターズへの参加を決めた。

優勝を目指して闘う山岸さん

 社会人になってもジムで鍛え続け、高校生とも日々練習を重ねていたことから、「まだまだやれる」と自信をもって臨んだ最初の全日本マスターズ選手権だったが、こてんぱんにやられて負けた。「マスターズをなめていました」。そこから山岸さんのレスリング熱が再燃。

 教えるにとどまらず、自分のためのトレーニングを本格的に開始し、マスターズの常連選手になり優勝も果たした。「7年くらいかかったけど、念願の日本一を達成できた」と、学生時代の“記録”を塗り替えることもできた。

■2連覇ならず、来年以降への闘志が沸いた!

 今年は61~65歳部門の58kg級に参戦。昨年の56~60歳の部の55kg級に続いて部門を超えての連覇を狙っていたが、三者リーグで1敗を喫し2位。敗れた相手は65歳と年上だった。「ひどい負け方をしてショックです。また鍛えなおさないと。また来年、日本一を取り戻す」と出直しを誓った。

 山岸さんは、「これからも続けますか?」という愚問にも快く答えてくれた。「80歳の方も出ていましたからね。私も負けていられない」と力強く話した。

 北陸新幹線が開通し、これまでの夜行バスを使っての上京から一転して、新幹線で楽に往復できることも追い風だ。「本当に楽になった。今夜は泊って明日の朝、新幹線で帰って昼から仕事です」。生涯現役レスラー山岸さんの日本一奪還のストーリー。来年はどんな試合を見せてくれるだろうか。

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