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2017.04.01

【全国高校選抜大会・特集】一昨年に世界カデット5位を輩出! レスリング王国復活を目指す帯広北(北海道)

(文・撮影=樋口郁夫)

 北海道は、金メダリスト5人を含めてオリンピック選手21人(都道府県別最多)を輩出したかつてのレスリング王国。勢力図の中心が青森県や茨城県などに移ったあとも、1994年の全国高校選抜大会・学校対抗戦で岩見沢農が“常勝”霞ヶ浦(茨城)を破って優勝。同校からオリンピック選手も生まれており、意地を見せていた。

 しかし、2000年を最後に岩見沢農にレスリング部がなくなると状況は一転。全国で勝つのが難しくなってしまった。全国高校選抜大会・学校対抗戦で北海道のチームが勝ったのは1999年の岩見沢農が最後。以後、初戦敗退が続いている。

 今年の大会には帯広北が出場。「1勝」の壁に挑んだが、初戦(2回戦)で花咲徳栄(埼玉)に1-6で敗れ、17年連続初戦敗退という結果に終わった(震災で中止の2011年を除く)。藤島忠監督は、優勝候補の一角だったチームとの対戦に「50kg級と60kg級の2つは取れると思っていたが…」と残念そう。

 「ほとんどが高校に入ってからレスリングを始めた選手。(中学時代の)優秀な選手を集めたチームとは差がありましたね」と話し、限られた中で精いっぱいやった選手をねぎらった。

■格闘技のみならず、スポーツ全般で人口が減っている北海道

 かつては道内の約50校にレスリング部があったという。昭和50年代に入っても30校を超える高校が高体連レスリング専門部に加盟していたが、レスリングに取り組む選手が徐々に減少。10年前に10校あった加盟校が、現在では4校。北海道大会の個人戦では、6人出場する階級があれば「よく集まった」(藤島監督)といった状況だという。

 北海道は「大相撲王国」でもあった。これまで千代の富士ら8人の横綱を輩出したが、それも「今は昔」のこと。1998年に幕内力士が「0」となり、現在は十両の旭大星が北海道から25年ぶりの新入幕なるか、ということが注目されている状況。

 柔道も競技人口は激減しているが、選手数の減少は格闘技に限ったことではなく、雪国ならではのスキーやスケートも激減しているという。伸びているのはサッカーくらい。少子化の影響と思われるが、それ以外に若者のスポーツ離れの影響も大きい。少子化は教員の数が減ることを意味し、指導者も減ることを意味する。北海道の高校で一番若いレスリングの教員でも40歳を超えているという。将来の選手育成も決して明るい状況ではない。

 北海道の場合、面積が広いため、高校間で団結することもきついのが現状。札幌市には札幌東豊高にレスリング部があるが、その帯広からの距離は約200kmあり、道東自動車道を経由しても片道3時間。東京と静岡・焼津市くらいに匹敵し、そうそう合同練習できる距離ではない。「団結」「切磋琢磨」とかけ声をかけても、なかなか行動に移せないのが現実だ。

■キッズ・レスリングは順調だが、ご他聞にもれず中学の壁

 昨年、旭川市が全日本女子チームの合宿を招へいし、レスリング選手の知名度、親近感が高まったのは確かだが、「自分でレスリングをやろう」という中学・高校生が何人いたかは疑問。藤島監督は「今の子は、格闘技を見るのは好きでも、自分ではなかなかやろうとはしません」と説明する。

 ご他聞にもれずキッズ・レスリングは順調だ。2013年には札幌市で全国少年少女選手権を開催するほど熱が入っており、昨年の全国少年少女選手権(東京)には、遠方にもかかわらず5チームから35選手が参加。小さな芽は育ちつつある。

 しかし、同じく“ご他聞にもれず”中学で途切れてしまう。十勝地区の中学では必ず何らかのクラブに入ることになっているが、レスリング部がなければ他のスポーツをやらざるをえない。キッズクラブに引き続いて所属することもできるが、中学生の場合、学校の顧問が帯同していないと、高校に行って練習することが禁じられているという。

 そうした規則がなければ、どこかのクラブに所属する一方、週末に帯広北高に通って練習し、細々とながらもレスリングを続けることができるが、それができず、完全にレスリングからフェードアウトしてしまう。オリンピックを目指してレスリングを続ける選手は、関東の高校に引っ張られて北海道を去るのが現状だ。

■「北海道の人間は我慢強いのが特徴。絶対に強くなれる」…田南部力(警視庁コーチ)

 藤島監督は、中学時代に札幌市の体育館でやっていたレスリング教室に通ったことでレスリングの道に足を踏み入れた。当時では珍しい中学レスリングの経験者。その後、札幌一高、国士舘大と続け、大学では現在の朝倉利夫部長と同期。黄金時代の国士舘大でレスリングを学び、チームとしてリーグ戦の優勝を経験。個人では全日本ジュニア選手権3位、新人選手権2位などの成績がある。

 卒業後、札幌のスポーツ振興事業団で勤務。レスリングから離れていたが、1986年に帯広北高校へ教員として赴任し、レスリング部をつくって選手を育ててきた。岩見沢農や北海が強かったが、その中ででも選手を育て、1990年代半ばくらいからは個人戦で全国大会に出場できる選手を育成してきた。

 最近では、2015年JOC杯カデット・グレコローマン42kg級で清水賢亮(1998年長野オリンピック・スピードスケート金メダリスト、清水宏保さんのおい)が優勝し、世界カデット選手権(ボスニアヘルツェゴビナ)で5位入賞と結果を出させた。

 現在の部員は11人(新3年生8人、新2年生3人)。4月からは女子1人を含めて3人が入部予定と、団体戦を組めるだけの人数をキープしているのは、藤島監督の情熱のたまものだろう。

 王国復活の方策を聞いても、答えがなかなか出てこないが、元自衛隊体育学校の五十嵐真人代表が創設し、埼玉栄高OBの小西隼人コーチが指導する帯広クラブが目覚ましい活躍をしており(クリック)、ベースは確実にてきでいる。

 北海道出身の最後のオリンピック選手で、全日本のコーチも務めた田南部力・警視庁コーチ(岩見沢農高~日体大卒)は「北海道のことはいつも気にしている。北海道の人間は我慢強いのが特徴。持ち味を生かせば、絶対に強くなれる。キッズも盛んになっているし、頑張ってほしい」とエール。

 指導の依頼があれば、「故郷のためなら、喜んで受けます」と、かつてのレスリング王国の活躍を願っていた。


 







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