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2017.08.06

【特集】2017年世界選手権へかける(15)…男子グレコローマン75kg級・屋比久翔平(ALSOK)

《JWFデータベース》《UWWデータベース》《国際大会成績》《勝者の素顔=JWFフェイスブック》


(文=樋口郁夫)

 今年の世界選手権に出場する男子グレコローマン・チームには、父がレスリング選手だったという二世選手が4人いる。必ずしも幼少の頃から強かったわけではなく、文田健一郎(59kg級)は遊びの延長のようなレスリング教室通い、奈良勇太(98kg級)は中学時代までは野球に打ち込んでいた。

 「オリンピック出場ならなかった父の無念を晴らしたい」という気持ちを早くから強く持っていたのが、75kg級の屋比久翔平(ALSOK)。そのステップとなる世界選手権初出場へ向け、「自分の形をしっかりつくり、泥くさくてもいいから勝ちにいく」と燃えている。

 7月前半はポーランド~スペインの遠征に参加。スペイン・グランプリ優勝という成果を残して帰国した。優勝は2014年12月の「ブラジルカップ」以来だが、大会レベルを考えれば価値は全然違う。アルメニアの選手を破っての金メダル獲得は「自信になる」と言う。

 課題もあらためて見つかった。体の軸がぶれること。グレコローマンは相手に圧力をかけて前に出ることが絶対必要条件だが、その時に崩されることが多いという。軸がぶれないことを考えていると前に出ることができず、相手の攻撃にスタミナをロスして不利な体勢に追い込まれてしまう。

 見本としたいのが、最近急激に力をつけている71kg級代表の泉武志。「構えが安定していて、崩れてもすぐ立ち直れる」と分析。この動きができれば、「ワンランク上に行けると思う」という。

■韓国の2人の世界王者の闘い方が見本

 目標とする選手が、もう2人いる。66・74kg級でオリンピックと世界を制した金炫雨(キム・ヒョンウ)と、66kg級で世界を制した柳漢壽(リュ・ハンス)の2人の韓国選手だ。強い選手の技術ややり方を取り入れるのは間違いではないが、骨格や体力などその民族特有の要素を無視し、何か何でも王者の闘いを真似すればいいものではない。

 その点、同じアジア民族として2人の王者の闘いは参考になることが多い。2015年秋、出身の沖縄県の事業で韓国へ遠征する機会があり、金炫雨らと徹底して練習したことがある。「腰がぶれずに前に出て行く。アジアの選手が勝つには、こうでなければならないことを肌で感じました」。

 屋比久が本命や対抗と思われた選手を破って全日本王者に輝き、オリンピック予選にコマを進めたのが、その2ヶ月後。“アジア人の世界王者”との練習が大きかったのは間違いあるまい。

 オリンピック予選は、アジア予選が5位(2戦2敗)で、世界予選が10位(1勝1敗)。オリンピックは遠かった。予選は、最後の関門をめがけてどの選手も血まなこになって闘う緊張感があるが、強豪選手が抜けている。レベル的には世界選手権の比ではない。

 オリンピックと世界選手権の両方でメダルを手にしている湯元健一・現日本文理大コーチ(前日体大コーチ)が「試合数が多いし、世界選手権の方がきつい」と話してくれたそうで、世界最高レベルの闘いはオリンピックではなく、世界選手権と言える。

 とはいえ、周囲の注目やそこからくるプレッシャーとの闘いはオリンピックの方が過酷。選手が究極的に目標とするのは、やはりオリンピックだ。「近づいてはいると思いますけど、まだ遠い。もっとピッチを上げて実力をつけなければならない」。初の世界選手権は今後の指針を教えてくれる重要な大会だ。

屋比久翔平(やびく・しょうへい=ALSOK) 初出場
 1995年1月4日生まれ、22歳。沖縄県出身。沖縄・浦添工高~日体大卒。174cm。2012年に全国高校生グレコローマン選手権と国体グレコローマンで優勝。JOC杯は2010~15年にカデット~ジュニアのグレコローマンで6連覇。2014~16年に2階級にわたって大学二冠王者に君臨するとともに、2015年全日本選手権で初優勝。
 翌年のリオデジャネイロ・オリンピックは出場ならなかった。2016年全日本選手権で優勝。父・保さんは1989・91年の全日本王者。

中学時代は全国3位が最高(右から2人目/2009年全国中学生選手権)=撮影・矢吹建夫

2015年JOC杯、カデットから通算して5連覇を果たす=撮影・矢吹建夫


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