(文・撮影=増渕由気子)
総当たり戦になっても少数精鋭の福岡大は強かった! 男子部員が15人の福岡大が、西日本学生秋季リーグ戦で、近大には4-3と苦戦したが、春の王者の同志社大には7-0で完勝。そのほかの試合も危なげなく勝ち、2季ぶり27度目の優勝を飾った。年間の総決算となる秋季に限れば3連覇となる。
今季の一部リーグは、従来2グループに分けて行っていたシステムを8チームの総当たり戦で実施した。これまでの予選グループの3試合と順位決定戦の合計4試合から7試合となり、試合数は約2倍になった。部員が多いチームに有利な形式だと思われていた。
最終戦となった中京学院大戦は、ともに全勝での対決となり、事実上の優勝決定戦。中京学院大は福岡大の約2倍の選手を擁し、総当たり戦になったことが追い風となっている典型的なチームだった。
福岡大の関口巡主将(86kg級)は「福岡大的には、以前の予選グループ制の方がありがたかった」と苦笑したが、優勝にこだわったのには理由がある。「去年、福岡大は春秋連覇しましたけど、86kg級に花山(尚生)先輩がいましたから、僕は出場しなかったんです。自分が出て、この手で優勝をつかみたかった」。
この半年間、体力強化に重点を置いて強化してきた。福岡大には、長島和幸総監督や、池松和彦コーチなど、世界で活躍した指導者が複数いる。少数精鋭で総当たり戦を勝ち抜くために、長島総監督のスペシャルメニューが関口たちを成長させたようだ。
「朝の走り込みが増えましたけど、レスリングを意識したメニューばかりでした」。長島総監督らの指導を信じて練習し、地力を伸ばずことに成功。“優勝決定戦”では3番手に出場し(注=同リーグは抽選で試合順が決まる)、終盤に逆転劇を演じてチームの勝利を引き寄せる白星を挙げ、一部の最優秀選手賞を受賞した。
すべてが順風満帆だったわけでもなかった。関口主将は「いろいろあって…。まとまりがなくなった時もありました」と唇をかみしめながら切り出した。リーグ戦優勝のため主将として何をするべきかを、1ヶ月前の全日本大学選手権で解決方法を見い出した。
「拓大が優勝者なしで団体優勝した記事を読んで、これだなって思いました。少数精鋭でリーグ戦を勝ち抜くには、レギュラー以外の全員の力が必要です。リーグ戦のテーマとして、チームメートにずっと『総合力が大事だよ』と言い聞かせてきました」。
1年前、花山先輩の控えということで、完全に応援態勢に回っていた関口は、ほかにもそういう選手がいると見抜き、控え選手たちに「7試合あるんだから、全員が出るつもりで頑張らないと勝ち抜けない」と鼓舞して結束力を強めた。
昨年主将を務めた花山と関口は対照的な経歴を持つ主将だった。関口は、高校時代は富山・桜井高で部員は一人。それでもレスリングが好きで努力を怠らなかった。福岡大に進み、オリンピアンの指導をスポンジのように吸収。その結果、西日本の花形選手だった花山と同様、チームを優勝に導いた。
引率した池松コーチは、福岡大の強さに人間力を挙げた。「うちは、タックルよりも人間力を教えている」と、レスリングの競技の枠を超えた指導を展開していると自負。それが体力、技術を超えて7試合を勝ち抜く精神力の土台になったことは言うまでもない。