日本レスリング協会公式サイト
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2011.02.16

【特集】目指せメジャースポーツ!…ローマ五輪代表・平田孝さんからの熱きメッセージ(上)

(文=樋口郁夫)

 1960年ローマ五輪4位の実績を持ち、米国の実業界でも成功をおさめた平田孝さん(法大OB=75歳、右写真)が、全日本マスターズ大会出場を目指して先月、帰国した。体調不良で出場はかなわなかったが、同五輪以前のみならず、同世代以下にも鬼籍に入る人が出てくる中、「来年こそは出てくれるかな」と思わせるような元気な姿を見せてくれた。
 
 日本におけるグレコローマンのパイオニアでもある。日本のレスリング界が最も昇り調子だった時代に、青春をレスリングに捧げた平田さんが、伝統復活を目指す日本レスリング界にメッセージを残した。(1月下旬の帰国前に取材)
 
 
 
 

 「レスリングに55年間接してきて、日本のレスリングは、今が一番いいムードで進んでいると思います」。平田さんの口から、現在の日本レスリング界の姿勢を評価する言葉が出てきた。「福田富昭会長を中心にした、いい意味のワンマン体制で、勝利を目指して一丸となっているように感じます」。

 船頭が多くなっては、船が沈んでしまう。「スポーツに民主主義はない」が持論。強烈な統率力を持ったリーダーが引っ張ってこそ、いい方向に向かって行くという。少し前のレスリング界は、何をやりたいのか、どの方向へ行きたいのか、自分達には見えなかったという。今は明確に進むべき道が感じられるそうだ。それがゆえに、2012年ロンドン五輪の勝利と、その後の栄光を願う気持ちが強い。
 
 苦言もある。まず「大会の盛り上げ方にもうひと工夫がほしい」こと。最近では、全日本選手権の決勝などはかなりのショーアップがなされているが、「米国に比べれば、まだまだ。決勝だけではなく、予選から選手を紹介したりして、観客の注目を集めるような努力をしてくべきだ。全日本選手権だけではなく、もっと多くの大会で」と主張する。
 
 平田さんの3人の孫はアメリカンフットボールをやっている。米国の花形スポーツの観客の盛り上がりや熱狂を見ているだけに、大会の演出の必要性を感じる。「今やパフォーマンスの時代です。応援もないところで黙々とやらせていては駄目ですね」と言う。
 
■米国の花形スポーツに接しているだけに感じるレスリングのマイナー性
 
 ナイキ社が世界で販売しているレスリングシューズは約50万足と言われているそうだが、「ナイキの中では物の数ではないですよ。サッカーやアメリカンフットボールなど他の競技では、けたが違います」。米国におけるアメリカンフットボールの競技人口と熱狂に接しているだけに、レスリングのマイナー性に目がいってしまう。

 大学のアメリカンフットボールの監督は、年間1億円のコーチ料などはざら。3億円、4億円もいる。レスリングでも1000万円を下ることはない。このくらいの規模で運営されているのが米国のスポーツ。日本のレスリングも、これに一歩でも近づけるよう努力してほしいと要望する。(左写真=全日本マスターズ連盟の創立10周年記念パーティーであいさつする平田さん)
 
 それはレスリングに対する苦言だけではない。自らのホームページ「俺言魂(おれごんだましい)」には、今回の帰国時に山口県で見た高校のバスケットボール大会の観客無視の運営を厳しく指摘している。以下は、その抜粋。
 
 「大会名、対戦学校名、トーナメント表などどうして掲げないのだろうか。同行した太田先生の解説がなかったら、ほとんど状況が判らず、最後まで退屈しただろう。観衆を無視した関係者の試合のセッティングに呆れた。観客動員と収入と云う、学生スポーツに大切な資金源を考えない関係者は、『無努力』『無能力』『意気地なし』の三拍子である。日本のスポーツ界は資金調達のための観客動員施策について、まったく成長していない。そもそも、学生の大会が平日学業のある時間帯に開催されるとはどういうことか。米国では特に限られた全米最終決勝戦など以外には、休校して試合に行くなど考えられない。そもそもどの学校もそんなことは許可しないのだ」。
 
 単なる批判と受け止めてならないことは、言うまでもない。
 
■“幼稚園レスリング”の元祖は平田さん
 
 最近盛んになっているキッズ・レスリングの隆盛に対しても、ひと言ある。「あまりレスリング一筋でやらせては、いけません」。今でこそ全国で250近くのクラブがあり、全国大会には1500人近い選手が集まるキッズ・レスリング。幼稚園児の選手も数多くいる。
 
 そのスタートは山口・斎藤道場で、その後、東京・木口道場が続いているが、レスリングを幼稚園の活動に取り入れたのは平田さんが最初だという。1970年に神奈川県の平間幼稚園で園児を相手に、レスリングを教えた。
 
 「幼稚園に対しては、『レスリング』ということはひと言も言っていない。子供たちをマットの上でゴロゴロ転がしていただけです」。“ゴキブリ体操”と名付けた運動。ゴキブリに殺虫剤をかけた時に似ている動きをさせる。そうやっていくいと、それはレスリングの動きになり、自然とレスリングになっていったという。

 そんな子供たちが小学生になると、保護者から「レスリングをやらせたい」と言ってくれるようになった。そこで、当時の八田一朗会長に、できたばかりのスポーツ会館で「ちびっ子レスリングの教室をやりたい」と話したところ、「もし事故があったらどうするんだ」という答え。すかさず、「会長らしくないですね。もし、なんて考えていたら、新しいことには何もチャレンジできませんよ」と、レスリング界で“天皇”だった八田会長の言葉に反論した。(右写真=スポーツ会館でちびっ子選手を教える平田さん。写真の選手は、のちにペンシルベニア州立大へ進み、全米学生王者、1996年アトランタ五輪代表になった阿部三子郎さん)
 
 「どうやって安全に指導できるかを考えればいいんです。それが指導者の腕です。安全には自信があります」「どういう自信だ?」「そんなもの紙に書けるものじゃないです。幼稚園でレスリング体操を教えてきたんです」。経験があるからこそできた反論。八田会長も返す言葉はなかったという。
 
 「もし、なんてことを言っていたら、世界記録なんて生まれない。不可能を可能にするには、チャレンジが必要」という持論。これほどまでして情熱を捧げたキッズ・レスリングだが、「レスリング一筋はよくない」と語気を強めた。
 
(続く=次回は2月18日掲載予定)
 






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