日本レスリング協会公式サイト
JAPAN WRESTLING FEDERATION
日本レスリング協会公式サイト
2011.03.09

【特集】リベンジの俵返し、爆発するか?…男子グレコローマン74kg級・金久保武大(マイ・スポーツ・ハウス)

(文・練習撮影=保高幸子)

 2007年から男子グレコローマン74kg級を牽引してきたのが鶴巻宰(自衛隊)だが、昨年の世界選手権(ロシア)では、鶴巻の負傷辞退によりに、金久保武大(マイ・スポーツ・ハウス=右写真:全日本合宿で練習する金久保=左)が繰り上げ出場。大健闘の5位入賞を果たした。暮れの全日本選手権での焦点は、この階級を制するのは両者のどちらか、ということだった。
 
 しかし第1シードの鶴巻は2回戦で田村和男(早大)に黒星。それによって優勝はほぼ間違いなしと思われた金久保だったが、決勝で同じく田村に不覚を取った。大番狂わせで田村が優勝。誰も予想していなかった結果に終わった。
 
 全日本選手権決勝の直後、「鶴巻選手の対策しかしていなかった」と口にした自らのコメントを、「今思えば苦しい言い訳。甘い部分が出て負けたんです。みんな勝ちにきているのだから…」と振り返る。鶴巻とは2009・10年とも全日本選抜選手権の決勝とプレーオフを闘い、どちらも決勝では勝って優勝しているものの、代表権をかけたプレーオフで負け、世界選手権の正代表を逃してきた。
 
 当時は鶴巻の対策しかしていなかったとしても当然と言える。しかし、もうそんな段階ではなかった。「相四つ対策など鶴巻選手に合わせた練習だけをしてしまっていた。自分の形がなかったと思います」と全日本選手権での敗因を分析。「コーチにも、何がしたいのか分からない、と言われるんです」と言う。今の課題は、人に合わせるのではなく自分のレスリングの形を作ることだ。
 
■スタンドを強化して負ける要素をなくす!
 
 そんな金久保には目指すレスリングがある。「初めて勝った試合が、俵返しだったんです」と言う金久保のレスリング歴はまだ6年。2004年アテネ五輪で俵返しをする松本慎吾・現日体大監督をテレビで見たことがきっかけで柔道から転向した。同じ大学で憧れの先輩となった松本監督の豪快なレスリングは、金久保に大きく影響している。

 「将来的にはローリングも強化しなくてはならないですが、俵返しで投げて豪快に勝ちたいという気持ちはあります」と、得意技で自分のレスリングを貫きたい思いがある。グラウンドは得意な方で、今はしっかり守って、しっかり返す、という形ができている。そこで、スタンドの強化の必要が出てきた。「田村選手に負けたのもスタンドが原因です。スタンドは以前から苦手でした。まずはそこを強化して、負ける要素をひとつでも減らしたい」と、目指す方向は決まっている。(左写真=全日本選手権決勝で田村に押し出される金久保)
 
 初めての世界選手権で5位という成績だったことについては、「実力が世界の5位だとは思っていない。他の海外遠征では勝てていないので」と控えめ。昨年の代表繰り上げは金久保にとって大きなチャンスとなったが、繰り上げ出場が2度も起こることではないことは本人が一番分かっている。今年の世界選手権代表は自分の力で勝ち取りたい。
 
 過去2回の全日本選抜選手権で優勝しながらも、代表権をかけたプレーオフで負けてしまったのは「気が急いていたから。これで世界選手権にいけるかもしれない、と思った」からだという。一度世界に出てしまった今となれば、これはもう克服したと言えるだろう。
 
■ハンガリーでリベンジのエネルギーを蓄える
 
 今冬の遠征第一弾の「デーブ・シュルツ国際大会」は、大学院の論文発表と重なってしまい出場できなかった。現在行っているハンガリー遠征にかける思いは強い。海外ではリフト対策や練習方法が変わり、緊張感も違ったものになるからだ。
 
 出発前、「知らない選手との練習は、試合の感覚でできます。何をやってくるか分からないですから。それに、うまい選手を近くで見られるだけでも勉強になります」と語っていた金久保。日本の選手よりもリフトやがぶりを得意とする選手が多く、研究好きな金久保にとっては絶好の学び場。試合となれば、それ以上の経験が得られる。「知らない選手の予測できない動きに対処できるか確かめたい」と抱負をもって現地に乗り込んだ。

 5日に行われた「ハンガリー・グランプリ」では、2008年欧州選手権2位で北京五輪代表、2010年世界学生選手権3位のセレフ・ツエフェンク(トルコ)と対戦。スタンドでも積極的なレスリングで格上に立ち向かった(右写真)。結果は初戦敗退だったが、得る物があったはず。このあと現地で行われる合宿で、試合数が少なかった分を取り返してくるに違いない。
 
■初戦で鶴巻と当たることになっても、「勝たなくてはならない」
 
 全日本選手権で鶴巻が2回戦で負けたため、慣例からすれば4月末の全日本選抜選手権では鶴巻はノーシード。金久保と鶴巻が初戦で当たるかもしれない。「そういう気持ちの準備はしています。何があっても勝たなくてはならないです」と、闘志を燃やしている。
 
 全日本王者の田村は、卒業を機に第一線からの引退も示唆していたが、2月の全日本合宿に参加しており、現役続行の意思があるようだ。長く74kg級代表の座を守ってきた鶴巻を追い、勢いがついた新星・田村に追われる立場となった金久保。「まずは選抜選手権とプレーオフで勝って、代表権をとります」と、先のことよりも目の前の試合一つ一つを大事にしていく。
 
 ハンガリー遠征で自分のレスリングの形を見つけ、不動の日本代表となるべく全日本選抜選手権3連覇と世界選手権出場を目指す。日本国内で勝った先には当然、世界選手権、そして来年のロンドン五輪が待っている。この日本の激戦を勝ち抜くことができたなら、世界で層の厚い74kg級でも必ずや結果を残してくれるだろう。






JWF WRESTLERS DATABASE 日本レスリング協会 選手&大会データベース

年別ニュース一覧

サイト内検索


【報道】取材申請について
-------------

● 間違いはご指摘ください
本ホームページ上に掲載されている記録や人名に誤りがある場合は、遠慮なくご指摘ください。調査のうえ善処いたします。 記録は、一度間違うと、後世まで間違ったまま伝わります。正確な記録を残すためにも、ご協力ください。


アスリートの盗撮、写真・動画の悪用、悪質なSNSの投稿は卑劣な行為です。
BIG、totoのご購入はこちら

SPORTS PHARMACIST

JADA HOMEPAGE

フェアプレイで日本を元気に