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2011.08.17

【特集】世界選手権へかける(5)…男子フリースタイル120kg級・荒木田進謙(専大ク)

(文=布施鋼治)

 2004年夏のアテネ五輪-。今年の世界選手権の男子フリースタイル120kg級代表の荒木田進謙(専大ク=右写真)は地元八戸で、八戸レスリングクラブの面々とテレビを食い入るように見つめ、一喜一憂していた。クラブの先輩である伊調千春(女子48kg級)と妹の馨(同63kg級)が出場していたからだ。表彰台に上がった伊調姉妹を見て、荒木田は「いつかは自分もオリンピックの舞台に上がる」と心に決めた。

 小学生の頃からオリンピックには出たいとは思っていたが、そこまで気持ちが高揚したのは初めてのことだった。幼少の頃から伊調姉妹に接していたので、雲の上の存在ではなかったことも荒木田の夢に拍車をかけた。クラブや高校の恩師も「オリンピックを目指してやれよ」と言い続け、彼の背中を後押しした。

■外国の重量級選手に勝つためには、スタミナで勝負

 夢は夢のまま終わらせない。青森・光星学院高校時代には2年連続高校三冠王に輝き、2年連続全日本選手権決勝にも進出。″スーパー高校生″と呼ばれた。高校時代から大学にかけて頻繁に海外の大会に出場するチャンスを得た。専大1年の時(2006年)にはアジアのジュニア・チャンピオンに。国際試合を通して、荒木田は日本人と外国人の闘い方の違いを肌で知った。

 「海外の重量級の選手は力が強くて、一発でとりにくる。対照的に日本人選手はトータルで勝てばいいという発想の人が多い。なので、中盤までにどれだけバテさせるかが勝負のカギを握ってくる」。闘い方だけではない。外国人と組み合った時には骨格の違いを痛感した。「基本的に海外の選手は骨格が大きい。例えば、僕が一般の人の二の腕をつかもうとしたら、普通に片手でつかめるじゃないですか。でも、外国人選手の二の腕はつかみ切れないんです」

 そんな対戦相手であっても、試合となれば勝たなければならない。2008年7月に世界ジュニア選手権で3位入賞したのは涙と汗の結晶だった。3位獲得理由を、荒木田は「完全にスタミナの差だった」と振り返る。「全部3ピリオド目まで行ったんですけど、最後は全部相手がバテて、勝負を諦めてくれました」

 スタミナで勝負するという方針は今も変わっていない。今夏も菅平では徹底的に走り込んだ。「自分でも、この菅平を乗り切れば何とかなると思っていました。周りからも『やれやれ』とハッパをかけられていたので、かなり力になったと思います」と振り返る。(左写真=全日本合宿で練習する荒木田)

■グレコローマンの練習も取り入れて実力アップ

 K-1をプロモートするFEG所属だった時期もあるが、K-1は未曾有の資金難に陥っていると伝えられている。荒木田は現在、専大クラブ所属として選手活動を続けている。「社会の荒波にもまれていますね」と突っ込むと、荒木田は相槌を打った。

 「でも、僕がやることは練習だけですからね。正直、一昨年あたりには(故障や不調で)、続けるかどうか悩んだ時期もあります。でも、親父も応援してくれるので、すぐに考えを改めました。親父は『お前は小さい頃からレスリングをやっている。レスリングが得意なんだから続けなさい」って」

 「いまの自分からレスリングをとったら何か残りますか」と聞くと、荒木田は声を大にして「いや何も残らないですね」と答えた。「本当に何も残らない。だから、僕はレスリングにかけるしかない」-。

 8月1日から東京・味の素トレーニングセンターでスタートした全日本男子チームの「40日合宿」では、グレコローマンの重量級代表と熱心に差し合いの練習に取り組んだ。「自分は結構差しを使うレスリングなので。差しながらどんどん前に出て相手をバテさせる。なので、グレコローマンの練習は結構やります。その方が調子もいい」と言う。

■同級最強のアルトゥール・タイマゾフを目標に

 男子フリースタイル120kg級には、2000年シドニー五輪で銀、2004年アテネ五輪と2008年北京五輪で金メダルを取ったアルトゥール・タイマゾフ(ウズベキスタン)がいて、ロンドン五輪で五輪3連覇を目指す。荒木田にとって、真摯にレスリングと接するタイマゾフは憧れの存在だ。(右写真=北京五輪で2度目の優勝を達成したタイマゾフ)

 「タイマゾフには外国人っぽい力強さもあれば、うまさや身体の柔らかさも兼ね備えている。以前はスタミナの部分に課題があったけど、それで失敗したら次の試合からは同じ轍(てつ)を踏まないようになっていた。少しずつ成長しているという点でも見習うべき点は多い。まだ一度も闘ったこともなければ練習したこともないので、闘えることがあれば光栄です。どんな威圧感があるのか、ぜひ確かめたい」

 重量級では世界の壁が厚い。果たして今回、荒木田にタイマゾフとからむ機会はあるのか。タイマゾフを目標に全力を尽くして今回の世界選手権に挑めば、ロンドン五輪出場の糸口が見えてくるかもしれない。

 


 荒木田進謙(あらきだ・のぶよし=専大クラブ)
 1988年3月26日、青森県生まれ、23歳。八戸クラブ出身。青森・光星学院高~専大出。高校時代の04・05年に2年連続で高校三冠王を獲得するとともに、2年連続で全日本選手権2位。専大に進み、1年生の時(06年)にJOC杯ジュニアオリンピック、全日本学生選手権、全日本大学選手権と国体の学生タイトルを総なめにするとともに、アジア・ジュニア選手権で優勝。07年は故障で戦列を離れたが、12月の全日本選手権で復帰し2位。08年はJOC杯ジュニアオリンピックで優勝し、全日本選抜選手権、全日本選手権でいずれも初優勝。180cm。

 


 ◎荒木田進謙の最近の国際大会成績

 《2011年》
 【5月:アジア選手権(ウズベキスタン】10位(11選手出場)
2回戦 ●[2-0(1-0,1-0)]Deng Zhiwei(中国)
1回戦  BYE

 【2月:デーブ・シュルツ国際大会(米国)】(9選手出場)
敗復戦 ●[0-2(0-1,1-2)]Andrew Delaney(米国)
2回戦 ●[0-2(TF0-6,TF0-7)]Aleksei Shemarov(ベラルーシ)
1回戦  BYE

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 《2010年》
 【11月:アジア大会(中国)】11位(13選手出場
1回戦 ●[0-2(0-1,1-2)]Lei Liang(梁磊=中国)

 【2月:デーブ・シュルツ国際大会】(12選手出場)
敗復戦 ●[フォール、2P0:27(0-2、F)]Aaron Anspach(米国)
1回戦 ●[0-2(1-2,0-7)]Ryan Flores(米国)

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 《2009年》
 【9月:世界選手権(デンマーク)】26位(27選手出場)
1回戦 ●[0-2(TF0-7=0:59,0-4)]Kara Recep(トルコ)

 【5月:アジア選手権(タイ)】3位(9選手出場)
3決戦 ○[フォール、1P(F6-2)]Hei Yisahabei(中国)
敗復戦 ○[2-0(1-0,3-1)]Sahah Mahammad(イラク)
1回戦 ●[0-2(1-5,1-5)]Nam Kyung-Jin(韓国)

 【2月:デーブ・シュルツ国際大会(米国)】5位(6選手出場)
リーグ5回戦 ●[フォール]Jamie Cox(カナダ)
リーグ4回戦 ○[フォール]Brad Peters(米国)
リーグ3回戦 ●[0-2(0-1,0-2)]Valery Bedoev(ロシア)
リーグ2回戦 ●[0-2(0-2,0-3)]Rajiv Tomar(インド)
リーグ1回戦 ●[1-2(0-3,1-1,1-4)]Nick Matuhin(ドイツ)

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 《2008年》
 【8月:世界ジュニア選手権】3位(18選手出場)
3決戦 ○[2-1(0-2,4-1,3-1)]Jack Clayton(米国)
準決勝 ●[フォール、2P(0-3,0-7)]Soslan Gagloev(ロシア)
3回戦 ○[2-1(1-2,5-2,5-0)]Vyacheslav Muzaev(ウクライナ)
2回戦 ○[2-1(0-2,2-2,2-0)]Mustafa Cebeci(トルコ)
1回戦  BYE

 







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