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2011.11.25

【特集】学生二冠王を捨て、全日本選手権にかける…男子フリースタイル60kg級・石田智嗣(早大)

(文=増渕由気子)

 今年の全日本選手権(12月21~23日、東京・代々木競技場第2体育館)で来年のロンドン五輪の代表が決まる可能性がある男子の階級は、世界選手権でメダルを獲得したフリースタイル60kg級と66kg級。全日本選手権で湯元健一(ALSOK=60kg級)と米満達弘(自衛隊)に優勝を許してしまうと、他の選手は五輪の夢が途絶える。

■全日本選抜選手権では湯元健一と決勝を争う

 だが、日本の看板階級のフリースタイル軽量級は世界選手権代表以外でも世界レベルの選手が多く、他の選手は“横取り五輪代表”を虎視眈々(こしたんたん)と狙っている。

 その一人が学生王者の石田智嗣(早大=右写真)だ。全日本学生選手権のフリースタイル66kg級から60kg級に落としながら3連覇を達成し、昨年の世界学生選手権では66kg級で優勝。国内外の学生界では敵なしの強さ。今年の4月の全日本選抜選手権では、ついに湯元健一とともに決勝の舞台へ進出した。

 内容は完敗だったものの、湯元健一に最も近い存在にまで駆け上がった。その後、9月の全日本学生選手権を難なく優勝。山口国体では前田翔悟(ニューギン)に2ピリオドともクリンチによる0-2で敗れた。その前田も2009年世界5位の肩書きを持つ選手だ。

 11月の全日本大学選手権には、早大の団体優勝と個人の学生二冠王をかけてエントリーするかと思われたが、3年生の柏木健太が出場した。石田は「ロンドン五輪のため」ときっぱり。優勝候補最右翼にも関わらず、学生最後の大会を棒に振って12月の全日本選手権での優勝を目標に掲げた。

■最高の状態で全日本選手権h臨みたい

 9月の世界選手権で湯元が銅メダルを獲得し、湯元が五輪代表にぐっと近づいたのは間違いない。石田は「ショックではなかった」と湯元の実力を認め、その上で12月の全日本選手権が本当の勝負と位置づけた。

全日本学生選手権で優勝、学生間で無敵の存在へ

 ただし、石田は「早大」の所属選手。昨年は62年ぶりに東日本学生リーグ戦で優勝を遂げ完全復活した日本最古参のチーム。全日本大学選手権では、まだ優勝がない。層の厚い早大とはいえ、石田をエントリーから外す構想はなかった。(終わってみると、全日本大学選手権で団体優勝した拓大と早大の差はわずか5点。石田が出場して優勝していれば、団体優勝の可能性も高かった)

 だが、石田は「全日本の舞台で勝ちたくなった。自分が一番強い状態で、悔いが残らない状態でオリンピックに挑みたい」と、太田拓弥コーチやチームと誠意を持って話し合った。元66㎏級の選手だけに、60㎏級では大柄で減量はきつい。ロンドン五輪に必ず出ることを引き換えに、大学選手権の欠場が認めてもらった。

 「もし、全日本選手権で負けたとき、1ヶ月前にもリミット計量したからという逃げ道を作りたくなかった。同期の剛(山口=主将)も『絶対、(全日本で)勝てよ」と言ってくれました」と石田。大学選手権での減量や調整をスキップしたため、11月もフルに重厚な練習を積み、仲間の応援を背に湯元との対戦に備えている。

全日本選抜選手権決勝で湯元と闘う石田(青)

■高校時代に身についた短時間集中練習

 湯元には過去4度対戦しており、すべて負けている。湯元を「勝負どころに得意技でポイントを取れる」と分析する。石田はディフェンスが持ち味だが、得点能力をもう少し伸ばしたいところだ。攻撃の要となるタックルは「処理が少しよくなってきた」と周囲からの客観的評価も上昇し、自信につなげているところ。

 石田の練習時の集中力の高さは目を見張る。「立命館宇治高時代の1日の練習時間は、わずか1時間半ほどだった」と、短時間で密度の濃い練習をする習慣が出来上がり、それは早大に来ても続いている。後輩からは「(集中の)スイッチが入っていて、練習のときに石田さんにはむやみに話しかけられない」という声があがるほど、オーラ全開なのだ。

 意識する選手は湯元だけではない。「苦手な選手はいないけど、湯元さん以外も十分に強い」と、相手ありきの練習をせず、「誰とやっても強いので、自分の実力を上げることを目標にしてきた」という。

■湯元健一と石田智嗣の対戦成績

2011年全日本選抜選手権 湯元健一 2-0(1-0=2:21,5-0) 石田智嗣
2010年全日本選手権 湯元健一 2-1(2-0,0-1=2:03,3-0=2:13) 石田智嗣
2009年全日本選手権 湯元健一 2-0(3-0=2:02,4-0) 石田智嗣
2007年全日本選抜選手権 湯元健一 2-0(3-1,2-0) 石田智嗣

今年7月にはゴールデンGP決勝大会に出場。世界での闘いの準備もできている

■“新生早大”から初の五輪代表を目指す

 早大が21世紀になって、再び強豪チームの仲間入りとなり、2005年には佐藤吏(現千葉読売広告社)が早大現役生として25年ぶりに全日本選手権で優勝。2009年にはOBの長島和幸(現クリナップ)が世界選手権に出場し、昨年アジア大会では銀メダルを獲得するなど、学生の頂点に立ち、かつ世界で活躍する選手も増えてきた。

 だが、まだ“新生早大”から五輪代表は出ていない。その一番手として名乗りを上げたのが石田だ。「僕が、オリンピックに出てワセダにいい流れを吹き込みたいです」。

 これまで、他選手が取って来た五輪出場枠を“横取り”した選手は少ないが、1992年バルセロナ五輪の原喜彦(フリースタイル74kg級)や花原大介(グレコローマン57kg級)など、いないわけではない。わずかな可能性にかけ、湯元健一の五輪連続出場に石田が“待った”の手をかける-。

石田智嗣(いしだ・ともつぐ)=早大

 1989年5月24日、三重県生まれ。22歳。三重・鳥羽ジュニア教室で幼稚園の時からレスリングを始める。中学では全国2位が2度で優勝はなかったが、京都・立命館宇治高時代の06年のアジア・カデット選手権63kg級で3位、07年に高校三冠王へ。早大へ進み、08・09年に世界ジュニア選手権に連続出場。09年に全日本学生選手権で優勝し、10・11年は60kg級に落として3連覇達成。この間の10年には世界学生選手権66kg級で優勝した。今年の全日本選抜選手権は2位。168cm。

 







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