(文=増渕由気子、撮影=矢吹建夫)
世界ジュニア選手権2連覇へ大きく前進-。4月7日のジュニアクイーンズカップ・ジュニア55㎏級は村田夏南子(日大)が決勝で昨年と同じ相手、浜田千穂(日体大)に7-0、6―0のテクニカルフォールで圧巻の勝利を挙げて優勝。優秀選手賞を受賞し、今秋の世界ジュニア選手権(9月4~9日。タイ・パタヤ)のキップをほぼ手中にした。昨年12月の全日本選手権の決勝で、世界V10の凱旋試合となった吉田沙保里(ALSOK)からタックルでポイントを奪うなど、打倒・吉田が現実味を帯びてきた。“試合に負けて勝負に勝った”とも言える内容だったが、負けは負け。夢のロンドン五輪代表は女王・吉田に決まり、村田の出場はかなわなかった。
■ロンドン五輪は逃したが、落ち込む暇はない!
だが、まだ18歳の村田に落ち込んでいる暇はない。2連覇がかかっている世界ジュニア選手権のみならず、世界女子選手権(9月27~29日、カナダ・チャンピオナト)の代表など、“大舞台”のチャンスをつかまねばならない。今年3月にJOCアカデミーを卒業して日大へ進学。心気一転、日大シングレットでのデビュー戦も飾った。
決勝は、昨年も決勝で闘い辛勝した相手の浜田だった。村田が柔道からの転向でレスリング歴が浅いのに対し、浜田はキッズ時代から名を馳せていたエリート・レスラー。昨年は第1ピリオド4-1でものにしたが、第2、3ピリオドは決め手を欠いてクリンチ勝負となり、それぞれ分け合って2-1で村田が薄氷を踏む思いで勝った。最大のライバル同士の対戦は今年も接戦が予想されたが…。試合は完全なワンサイドゲームに。第1ピリオドはタックルから相手のバックに回りこむと、肩を極めて3度のローリングで7-0のテクニカルフォール。
第2ピリオド、浜田にタックルを防がれたが、突破口を見出していた1分22秒、村田の柔道仕込みの大内刈りが見事に決まって1点を奪うと、そこからはアンクルホールドに切り替え、アンクル地獄でテクニカルフォール。
吉田沙保里を苦しめた実力は本物。村田は、同世代で完全に頭一つ抜けた実力者へと成長した。
■今年の目標はW杯、世界ジュニア選手権、世界女子選手権
快勝で終えた決勝だったが、村田は満足していない。「まだ(グラウンドでの)手が極まっていない時が多い。しっかりとクラッチを組んで、テークダウンを取ったら確実に決めて得意技としたい」と修正ポイントを挙げた。1回戦でがぶり返しをうけて2失点している部分については、「取られても焦らずにやることを目標に挙げていた」と、目標どおりに失点の5秒後には両足タックルで反撃し、3-2で取り返した。練習の成果が出たと満足げだった。
ジュニア時代は、年間の試合が最も多い時期。“多忙”を極める村田に今シーズの目標を聞いてみた。「5月のワールドカップ(W杯東京)で出番があったら、しっかりやりたい。9月の世界選手権に出たい」。今年の村田も進化が止まらない―。