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2013.09.04

【特集】世界選手権へかける(13)…男子フリースタイル60kg級・前田翔吾(クリナップ)

《世界選手権へかけるシリーズ》

男子フリースタイル 55kg級 60kg級 66kg級 74kg級 84kg級 96kg級 120kg級
男子グレコローマン 55kg級 60kg級 66kg級 74kg級 84kg級 96kg級 120kg級
 女   子  48kg級 51kg級 55kg級 59kg級 63kg級 67kg級 72kg級

(文=増渕由気子)

 日本で最も層が厚い階級と言っても過言ではない男子フリースタイル60kg級。今年の世界選手権は、昨年のロンドン・オリンピックの国内予選で湯元健一と最後まで競り合った前田翔吾(クリナップ=右写真)が2度目の晴れ舞台に挑む。「4年ぶりの世界選手権に向けて、スタイルはほぼ固まってきている。いつ試合しても問題ない」と調整は万全。

 この階級は、2004年アテネ、2008年北京、2012年ロンドンと、最近のオリンピックの代表選考がいずれもプレーオフにもつれた階級。し烈な国内選考を勝ち抜いたとあって、アテネでは井上謙二が、北京では湯元健一がそれぞれ銅メダルを獲得。世界選手権でも2006年に高塚紀行、2011年には湯元健一が3位入賞と結果を出し、日本のレベルの高さを証明している。伝統に支えられた強さを発揮できるか。

■「ロンドン・オリンピックに一番近い」と言われた時期もあった

 前田のウィークポイントは体力やパワー面と言われていた。昨年1年間、至学館大学の職員として地元の愛知県に戻り、同大学を本拠地にしてトレーニングを積んだ。女子部員ばかりの環境を逆手に取り、以前からの課題だったウエートトレーニングや持久力トレーニングなどを黙々とこなして体力アップ。「持久戦に持ち込みたい。ずっと、最後の最後に飛び込めなくて負けてきた。ラスト何秒で勇気を持って飛び込めるようにしたい」と言えるまでに成長を遂げた。

 前田の世界選手権初出場は4年前の2009年。ロンドン・オリンピックの期待の星として出場。5位と好成績を残した。だが、所属選手の不祥事によってチームが活動停止となるアクシデントに見舞われ、ナショナルチームから後退。

 復帰後はスランプに陥り、国内予選を勝ち抜けない時期もあった。ロンドン・オリンピック最終選考を兼ねた2011年の全日本選手権で復活優勝。同年の世界選手権で3位となった湯元を含めて行われたプレーオフで、最後までオリンピック代表を争った。

 活動停止期間がなければロンドンの代表は前田だったという声も聞こえるほどで、170cmと長身で長い手足から繰り出される前田の理詰めのレスリングは魅力満載だ。

 多彩な技が見られるのを楽しみにしたいところだが、昨年1年間で肉体改造に成功し、体力面に自信をつけた前田は技にこだわりを見せなかった。「技を多く持っていても、世界選手権のレベルになるときれいに決まらない。崩して崩して、後半勝負です」と、泥臭いレスリングでの勝負を決めている。

 学生時代に世界5位と頭角を現した前田は、卒業後も常に“プロ選手”としての環境を確保してきた。今年4月からはクリナップに所属が決まり、愛知県から再上京して日体大で練習を積んでいる。

 実は昨年4月のプレーオフで敗れたあと、引退を覚悟した。「もう終わりだと思った。日体大での練習環境も失ったので…」。新しい環境は女子ばかりの至学館大学。東京などに出げいこに行かせてもらえる境遇だったが、これまでと同じレベルを維持するには限界があり、スポンサー企業がつかない限り現役引退は必至だった。

 しかし、レスリングの支援に実績があるクリナップに採用してもらえ、やる気で出てきたのは言うまでもない。「僕にとって3つ目の所属先です。勝たなければならない使命感があります。必ず勝って恩返ししたいです」と決意は固い。

■最大のライバルだった湯元健一が全面支援

 フィジカル、メンタルともに良好さの秘密は、ロンドン・オリンピックまで激しく火花を散らしてきた湯元の存在だ。自ら「湯元先輩のおかげです」と口火を切った。

 湯元とは同じ日体大出身で、湯元が3つ年上。湯元が卒業したあとも、ともに日体大で練習していた。同じ階級のライバルだっただけに、公私ともに接点はほとんどなかった。「お互いに、なあなあになることが嫌いなタイプ。練習もしなければ、会話もあいさつくらいでした」と、ライバル関係を意識した付き合いをしてきた。

 ロンドン・オリンピックの後は湯元から前田に歩み寄ってきた。「おまえのいいところは、ここなんだ」-。全日本合宿で複数のコーチからアドバイスをもらい、それをどう自分に取り入れようか迷っている時に、「第3の目としてアドバイスをくれるんです。おかげで、自分のレスリングが崩れずに成長できて非常に助かっています」。

 最大のライバルだった湯元は、前田のことを一番研究していた選手。裏を返せば、一番の理解者だ。競技の第一線から退き、指導者として歩みだした湯元が、長年の“データ”を前田に還元し始めたとなれば、前田にとってこれ以上頼もしい存在はいないだろう。

 「体も心も金メダルを目指す状態になってきました。以前はばく然と世界王者を狙っていたけど、今ははっきりと『金メダルしか狙っていない』と言えます」。試練を乗り越え、最大の味方をつけた前田翔吾が、満を持して世界へ“翔ける”!

前田翔吾(まえだ・しょうご=クリナップ)   3大会ぶり2度目の出場
 1987年5月23日、愛知県生まれ、26歳。愛知・星城高~日体大卒。2008年全日本大学選手権優勝のあと、2009年の全日本選抜選手権で優勝。同年の世界選手権で5位に入賞。2010年はアジア選手権2位など。2011年全日本選手権で優勝するも、ロンドン・オリンピックは逃す。休養のあと、2012年全日本選手権で勝ち、2013年はワールドカップ個人2位の成績。170cm。

 ◎前田翔吾の最近の国際大会成績

 《2013年》

 【4月:アジア選手権(インド)】=5位(16選手出場)
3決戦  ●[0-2(1-1.1-3)]Bajrang Bajrang(インド)
準決勝 ●[0-2(TF0-6,4-9)]Hwang Ryong Hak(北朝鮮)
2回戦  ○[2-0(3-0,6-1)]Sypar Satymkylov(キルギス)
1回戦  ○[2-0(3-0,3-1)]Ramil Rejepov(トルクメニスタン)

 【2月:ワールドカップ(イラン)】=個人2位
7・8決戦 ○[2-0(2-1,1-0)]Sayatbek Okassov(カザフスタン)
5回戦 ○[2-1(0-1,4-3,5-5)]Malkhaz Kurdiani(グルジア)
4回戦  BYE
3回戦 ○[2-0(6-0,6-0)]Stefan Ganchev Ivanov(ブルガリア) 
2回戦 ○[2-0(1-0,1-0)]James Joseph Kennedy(米国)
1回戦 ●[0-2(0-2,0-1)]M. M. Esmaeilpoorjouybari(イラン)

 【1月:ヤリギン国際大会(ロシア)】=13位(32選手出場)
2回戦 ●[1-2(4-2,0-2,0-4)]Coleman Scott(米国)
1回戦 ○[2-0(6-3,3-0)]Arash Dangesaraki(イラン)

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 ◎前田の世界選手権成績

 【2009年大会(デンマーク)】=5位(32選手出場)
3決戦  ●[1-2(1-0=2:02,2-4,0-1=2:04)]Dilshod Mansurov(ウズベキスタン)
敗復戦 ○[2-1(1-4,6-5,③-3)]Artur Alkelyan(アルメニア)
3回戦  ●[0-2(4-7,1-4)]Zalimkhan Huseynov(アゼルバイジャン)
2回戦  ○[2-0(1-0,1-0=2:03)]Roberth Cesar(ベネズエラ)
1回戦  ○[2-1(2-0,2-4,TF6-0=0:41)]Hardeep Singh(インド)


 







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