(文・撮影=増渕由気子)
けがを気合で乗り越えた! 関東高校選抜大会の個人戦74kg級は、前田明都(埼玉・花咲徳栄)が決勝で八木海里(埼玉・埼玉栄)を8-0で破って1年生チャンピオンに輝いた。前田が「本当にうれしかったです」と振り返るように、試合内容は4試合中、2試合がテクニカルフォール、3試合が無失点と、スコアだけだと圧巻の勝利だ。
だが高坂拓也監督が「棄権してもおかしくなかった」と話すように、腰痛に悩まされる状態で闘っていた。前田は「昨年末に痛めて、年明けはずっと病院通い。2、3週間くらい全く練習ができなかった」と振り返り、優勝を目指すには苦しい状況だった。
同門の先輩で66kg級の第1シードの中村剛士も、けがで団体戦は棄権。個人戦も3月の全国選抜大会出場の権利となるベスト8を決めたあと棄権するなど、花咲徳栄は全体的にけが人が多かった。
学校対抗戦、個人戦ともに優勝を狙う高校だけに、前田は負傷にもかかわらず団体戦、個人戦ともにマットに上がった。「できるだけ腰に負担をかけないよう、力勝負には持っていかず、相手と距離を取ってグラウンドで終わらせる(テクニカルフォール)ようにした」と、万全ではないなりに作戦を立てた。
試合の最終調整段階でけがは快方に向かったが、「大会が始まったら、また痛くなってきてしまった。けれど気合で乗り切りました」。その結果が、学校対抗戦、個人戦含めて全8試合全勝だった。腰をかばって勝負に徹すると決めていたが、決勝戦では前田の集中力が腰の痛みに勝ったのか、「あまり痛みは感じず、けっこう攻めることができた」。積極的に前に出てアンクルホールドを決めるなど、けがを感じさせない動きを見せた。
昨年インターハイを制した花咲徳栄は、創部以来、全国から才能ある選手が多く集まる強豪校に成長した。前田も福井出身で、兄の頼夢(現日大)のあと追うようにして花咲徳栄に進学した。高坂監督は「才能がある選手の中でも、よく練習する。コツコツとやるタイプ」と、地道に努力する前田を評価する。3月の全国高校選抜大会には万全の体調で臨みたいところだ。
前田は「けがをしっかり治して、練習を積んで、全国の舞台で闘える選手になりたい」と今シーズの目標を力強く語った。