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2015.02.19

【特集】完全復活をかけてハンガリー遠征へ参加…男子グレコローマン98kg級・大坂昂(三菱電機)

 力道山時代、あるいはBIコンビ(ジャイアント馬場&アントニオ猪木)時代のプロレスを見ていた50代中盤より上の世代なら、かつてプロレスと三菱電機が“強力タッグチーム”を組み、全国に名をとどろかせていた歴史を知っているだろう。

 日本人が外国人をなぎ倒すプロレス中継は、日本人の心の面で戦後の復興に一役をかった。そのスポンサーが三菱電機。試合の合間に電気掃除機「風神」によってマット上のゴミやほこり掃除が行われ、実況アナウンサーが「風神による掃除が行われています。この番組は三菱電機の提供でお届けしています」と“番組内宣伝”。最高視聴率64%(力道山-ザ・デストロイヤー戦)、常時30~40%を誇っていた人気番組の力で、三菱電機の製品が全国に知れ渡り、電化面での近代化を促進した。

 それから約50年がたった現在、三菱電機はアチュアスポーツ選手を支援。日本オリンピック委員会(JOC)が行っているトップアスリート就職支援ナビゲ-ション「アスナビ」を通じて選手をスカウトし、オリンピックの舞台で「MITSUBISHI」の名が躍る日を心待ちにしている。

 レスリングでその期待を背負っている選手が、昨年の世界選手権(ウズベキスタン)の男子グレコローマン98kg級代表の大坂昂。昨年4月の入社直後に行われたアジア選手権(カザフスタン)ではイラン選手を破る殊勲を挙げて銀メダルを獲得。国際舞台で実績を残す好スタートを切り、会社の支援にこたえた。

■初の世界選手権は腰痛に悩まされ、結果を残せず!

 期待された世界選手権では、大会の約1ヶ月半前からの腰の痛みに悩まされ、「スパーリング1、2本くらいで腰に限界がきてしまう」という状況へ。試合中は鎮痛剤などのおかげもあって痛むことはなかったというが、この状況で勝てるほど世界は甘くなかった。「練習しなければ世界では勝てないことを、身に染みて感じました」。約1ヶ月後にあった長崎国体を棄権するなどして治療に専念し、再起にかけた。

 現在、腰痛はほとんどなくなったというが、ブランクの影響は少なくなかった。「アジア選手権で好調だった自分を見失ってしまった。体がしっくりしない。技を出す感覚とかが分からなくなっている」と、積み上げてきたものが崩れてしまった。絶好調の自分を取り戻す闘いの最中だという。

 昨年12月の全日本選手権は、準決勝で大学時代からのライバル、米平安寛(宮崎県協会)に0-4に敗れ、半年前に負けた斎川哲克(栃木・足利工高教)へのリベンジの機会を失った。しかし、「体調が悪い中でも、できうる調整はうまくいったと思う」と、かすかな希望がともった大会だった。

 3位決定戦では、前年の96kg級2位の山本雄資(警視庁)にテクニカルフォール勝ちし、6月に続いて山本戦2連勝をマーク。準決勝で負けて気持ちの切り替えが難しかった中、「社員30人くらいが応援に来てくれていた。他のスポーツと違って(自分の)試合開始時間がはっきり分からない中でも応援してくれているのに、2度も負けるところを見せられません」と、意地を見せての勝利だった。負けたあとの気持ちの切り替え方を経験し、会社や同僚の支援をしっかり感じることができたことは、今後の糧となることだろう。

■海外遠征で実力を伸ばした過去

 何よりも、3位になったことで全日本合宿に召集され、今月23日からのハンガリー遠征にも選抜されるプラスがあった。この抜てきは完全復活へ向けての大きなチャンスだと思っている。「海外遠征に行ったあとは調子がよくなるんですよ」と、遠征にはいい思い出があるからだ。

 2012年6月の全日本選抜選手権で優勝した時は、3ヶ月前にグルジアへ遠征しており、そこでの収穫をもって臨んだ大会だった。昨年のアジア選手権でも、大会前にウォーミングアップ場でインド選手と練習したところ、思いのほか闘えて気持ちが上向いたことが、銀メダル獲得の一因だという。「3位なのに選んでくれた期待にこたえたい。まだ体調は万全ではないですが、気持ちは上向いています」と燃えている。

 ただ、斎川の壁は高い。全日本選手権では、4試合すべてを無失点のテクニカルフォール勝ち。高校教員になったことで「実力は下がるだろう」という予想もあったが、そんなことは全くなかった。この壁を乗り越えてリオデジャネイロのマットに上がるには、よほどの成長が必要だ。

 やるべきことに近道はない。「目の前の練習に全力を尽くすことしかありません。斎川さんの練習を見て思ったことですが、細かな練習でも手を抜かず、必死にやっている。その積み重ねが強さにつながっているのだと思います」。斎川は2009~12年に4年連続でハンガリー遠征に参加し、合宿と大会出場で実力をつけてオリンピック出場を果たした。「その意味でも楽しみなハンガリー遠征です」と言う。

■グレコローマンの新ルールへも、真っ向から挑戦!

 今春にはグレコローマンのルールが変わる見込みで、グラウンドで勝ってきた大坂にとっては、スタンド戦が重要になる新ルールとの闘いもある。しかし、「自分が何を言っても(ルール変更は)変わらない。スタンドで勝てるように練習するだけ。それで勝てないのなら、それだけの選手ということ」と話し、テークダウンの技術を磨き、そこから得意のローリングへつなげる闘いへ挑む。

 三菱電機は大坂のほか、テコンドー(山田勇磨選手)、シンクロ(丸茂圭衣選手)、パラリンピックのアーチェリー(上山友裕選手)で選手をかかえており、オリンピック選手およびパラリンピック選手の輩出を目指している。いずれも昨春入社で、大坂はアジア選手権で2位へ、山田選手と丸茂選手は仁川アジア大会でメダルを獲得しており、切磋琢磨する間柄だ。

 今後も「各選手の競技活動を積極的に支援するとともに、トップアスリートならではの価値観や経験を生かし、当社の一員として事業の中でも活躍いただくことで、当社グループの連帯感を一層高めてくれることを期待しています」(同社ホームページより)と、トップアスリートの採用を継続する予定だという。

 人工衛星などにも参画し、宇宙規模で飛躍する三菱電機。「MITSUBISHI」が、オリンピックの舞台でも活躍する日は遠くない-。


 







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