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2015.04.15

【特集】180度変わった練習環境! “企業レスラー”として世界へ挑む…男子グレコローマン66kg級・泉武志(一宮グループ)

 5月6~10日にカタール・ドーハで行われるアジア選手権で、“フリーター・レスラー”改め“企業レスラー”の泉武志(一宮グループ)が男子グレコローマン66kg級に初挑戦する。

 泉は日体大を卒業後、テレビ局のADとして社会人生活をおくっていたが、オリンピックへの思いが再燃し、仕事を辞めてレスリング活動へ戻った。アルバイトで生活費を稼ぐという厳しい環境下だったが、全日本社会人選手権で2年連続優勝(昨年は75kg級)するなど実力を取り戻し、昨年12月の全日本選手権で初の日本一へ。逆境をはねのけて栄冠を勝ち取った。

 そんな努力家に一宮グループが手を差し伸べ、リオデジャネイロ・オリンピックへの道を全面的にサポートしてくれることになった。泉は「(アルバイトをしないので)疲れ方が全然違います。生活に余裕ができました。日本代表として初の国際大会ですし、優勝を目指します」と話し、これまでとは違った気持ちでマットに打ち込む。

■今冬のハンガリー遠征は負傷で無念の棄権

 2011年に学生王者に輝いた泉だが、遅咲きということもあって学生時代に国際大会の経験はなく、これまでに出場した国際大会は、復帰後に社会人選抜チームのメンバーとして遠征したニューヨークでの2大会のみ。そのうちのひとつは優勝しているが、アジアや欧州の強豪が出場する大会の経験はない。

 今年2月にはハンガリー遠征のメンバーに入っており、ここで欧州の強豪と練習と試合をしっかりこなす予定だったが、右足首の負傷のため参加を取りやめた。そのため、練習不足という不安も懸念されるが。「それはありません。大事をとって遠征をやめただけであり、けがをした2週間後には普通に練習していました」と言う。

 不安材料があるとしたら、イランや韓国といった強豪と闘った経験がないままアジア選手権へ臨まねばならないこと。しかし、2013年世界王者であり、昨年のアジア大会優勝の柳漢壽(リュ・ハンス=韓国)とは、韓国チームが2013年12月に来日した時に何度も手合せしており、「けがをしていたみたいでしたが、それほど強いというイメージはなかった。試合ではどうか分かりませんが、勝てない選手ではない」という感触を得ている。

 イラン選手とは練習でも闘ったことはないが、「力とテクニックがあり、そってくるイメージもある」と分析。そこをスタミナで上回って勝つという青写真を描いている。韓国でもイランでも、自分の実力を試す意味で「やってみたいですね」と気持ちは盛り上がっており、挑戦者の気持ちを強く持っている。

■アルバイト生活の中で、“挑む気持ち”を忘れずにつかんだ日本一

 挑戦-。それは実力アップに欠かせない要素だ。昨年の全日本社会人選手権で2階級上の75kg級に出たのは、「上の階級でどこまで通用するか試してみたかったから」という挑戦魂からだった。優勝選手への“ご褒美”である米国遠征では、何も75kg級にこだわる必要はなかったのだが、ここでも75kg級に出場した。

 結果は4位に終わったが、「組み手が全然できていないことが分かりました。当たっていくだけでは通じない」と課題を見つけることができた。前年と同じ66kg級に出場して優勝しても、得られない経験だったかもしれない。こうした“挑む姿勢”が全日本王者奪取につながったことは間違いあるまい。イランや韓国に“挑む姿勢”によって、実力アップの何かが得られることだろう。

 現在の世界のグレコローマン選手の共通の悩みは、ルールがどうなるかという問題。今年初めには、コーション(警告)でのパーテールポジションの選択が廃止され、スタンドで試合が続くように変わるとされたが、有力理事などからオリンピックまで1年半を切った段階でのルール改正への疑義が提案され、浮いた状態となっている。

 泉はグラウンドでポイントを取るタイプではなく、「グラウンドの防御は弱い方だと思います」とのこと。“新ルール”の方が有利だが、アジア選手権は現行ルールで行われる可能性もある。それでも「スタンドでポイントを取っていけば関係ありません」と、組み手や差しといったスタンド技術のレベルアップに力を入れていく予定だ。

■松本隆太郎や井上智裕らの壁を乗り越え、ラスベガスのマットに立てるか

 アジア選手権の約40日後には、全日本選抜選手権(6月19~21日、東京・代々木競技場第2体育館)が控え、世界選手権(9月7~12日、米国・ラスベガス)の日本代表をかけた闘いが待っている。

 全日本王者として有利な立場にいる泉だが、全日本選手権決勝で闘った音泉秀幸(ALSOK)のみならず、けがで同選手権を欠場したロンドン・オリンピック60kg級代表の松本隆太郎(日体大職)の参戦という大きな壁が立ちふさがる。71kg級全日本王者の井上智裕(三恵海運)の階級ダウンも予想され、下からは高橋昭五(日体大=JOC杯優勝)という成長株が突き上げてくる。厳しい闘いを余儀なくされる。

 「松本先輩は相手を徹底的に研究しているようで、相手に合わせたレスリングをやってきます(勝つには)スタミナと執念しかないかもしれません」と壁の高さを感じているが、「(執念は)勝負の世界で大切なこと。『1回は負けてもいい』ではなく、優勝して世界選手権代表を決めたい」ときっぱり。そのためにも、アジア選手権で好成績を残し、「自信をつけたい」と言う。

 晴れて“企業レスラー”となった泉は、オリンピック出場とともに、もうひとつ、「やらねばならないことがある」という。アルバイト生活の期間、遠征費用を含め親からかなりの支援を受けていた。「初月給はまだですが、使わせたお金を親に返していきたい」-。その姿勢は「立派」の一言だが、両親は、お金を返してもらうより先に、リオデジャネイロのマットに立つわが子の晴れ姿を見ることを望んでいるに違いない。


 







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