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2015.04.28

【JOC杯・特集】学生王者を倒してJOC杯優勝! 本領発揮なるか…男子フリースタイル60kg級・樋口黎(日体大)

(文=増渕由気子、撮影=矢吹建夫)

 JOC杯のジュニア・男子フリースタイル60kg級は、57kg級を主戦場としている選手が軒並みエントリー。その中の一人、茨城・霞ヶ浦時代に高校三冠王となり、昨年日体大に鳴り物入りで入学した樋口黎(日体大)が準決勝で学生二冠王者の中村倫也(専大)を4分40秒、12-2のテクニカルフォールで撃破。決勝も全日本大学選手権3位の前田頼夢(日大)を3分19秒、11-0と圧勝して優勝した。

 失点は中村相手の2ポイントのみで、それ以外は無失点という内容でのジュニア初優勝。樋口は「無駄な失点がなかったので、自分のいいレスリングができた。及第点です」と満足そうに話した。

 2020年東京オリンピックの期待の選手として、注目を浴びて日体大に進学したが、昨年のJOC杯はけがで欠場。東日本学生新人選手権こそ春と秋で2階級制覇を達成したが、1年生王者が期待された夏の全日本学生選手権は3位で、秋の全日本大学選手権では3回戦敗退(61kg級)と、主要タイトルの獲得はならなかった。

 「インカレは(山崎)達哉先輩に負けて、大学選手権は鴨居(正和)選手に残り数秒で負けた。学生のタイトルを獲りたかったのに、結果的に新人戦のタイトルしかないのは悔しかった」と悔やむ樋口だが、逸材をアピールする機会は十分にあった。

 昨年6月、初出場だった全日本選抜選手権の初戦で、3ヶ月後に世界5位となる高橋侑希(山梨学院大)に8-10と肉薄した。中盤は大量リードを奪い、館内がざわついたほど。さらに、昨年12月の全日本選手権では、2回戦で再び高橋と対戦。「結果的にシングレットをつかんだように見えてしまった」と、最後は警告3つで失格負けしたが、高橋から終始ポイントをリードしていたことは、タイトル獲得に勝るとも劣らないインパクトがあった。―やはり樋口の実力はすごい―。

■世界5位と接戦を演じても、難敵は多いフリースタイル57kg級

 だが、“強いそうだ”という目で見られるのは、もうたくさん。「今年は結果にこだわっていきたい。リオ・オリンピックの予選が始まるので、学生の試合よりも全日本に照準を絞って勝ちに行くのが一番大事です」と、目標は来年のオリンピック出場だ。

 6月の全日本選抜選手権への試金石にするためにも、この大会は準決勝の中村戦がヤマ場だった。中村は、全日本学生選手権では高橋の欠場した中での優勝だったが、全日本大学選手権では高橋を破っての優勝。一躍、リオの代表候補の一角になった選手だ。樋口は「大学に入ってから対戦したのは初めて。少しびびってしまった部分があったので、勝った瞬間、ガッツポーズが力んでしまった」と振り返った。

 学生王者を含めた全員にフォール勝ちかテクニカルフォール勝ちを収められたのは、冬の遠征の賜物だったようだ。「ロシアとモンゴルの遠征に参加させていただき、外国人の組手や攻め方、攻撃の切り方を吸収できて、今回の試合にも生かすことができました」と、大幅にスキルアップできた自分を思う存分にこの大会で披露した。

 日本のお家芸となる男子フリースタイル最軽量級は、有望な選手たちでひしめきあう“戦国状態”。高橋といい勝負を繰り広げても、学生二冠王者の中村に勝っても、まだまだ難敵は数知れない。

 社会人選手に目を向ければ、2012年ロンドン・オリンピック銅メダリストの湯元進一(自衛隊)と昨年のアジア大会代表で全日本王者の森下史崇(ぼてぢゅう&Bum’s)の2人が強敵。その中でも、高校~大学と同門の森下には手の内を知り尽くされて、対戦成績は全敗だ。

 だが、「今の段階でいい勝負はできると思っている」と実力差を急ピッチで縮めていることに自信をのぞかせる。事実、3月のモンゴル・オープンで森下と対戦し2-4のスコア。現役王者に一歩もひかない構えを見せた。

 「いい選手、で終わりたくない。強い選手として勝ち切りたい」―。今年こそ、タイトルホルダーの樋口黎が見られるかー。


 







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