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2015.06.25

【全日本選抜選手権・特集】体力勝負でプレーオフを制す…男子グレコローマン66kg級・泉武志(一宮グループ)

(文=布施鋼治、撮影=矢吹建夫)

 今春、企業レスラーとなった元フリーターが国内大会で念願の初V-。オリンピアンと現役全日本王者が2人ずつ参加するという大激戦の男子グレコローマン66㎏級は、結局、全日本王者の泉武志(一宮グループ)が本戦を制した井上智裕とプレーオフで対戦し、7-2で撃破。日本代表の座を勝ち取った。

 泉は「フリーターの頃は楽しんでやっていたけど、今は違う」と振り返った。「一宮グループからレスリングでお金をもらっている立場なので、内容を求められるだけではなく、勝ってナンボ。責任を感じながら闘っていました」-。

 もっとも、出だしは最悪だった。初戦となった2回戦では、のちにもう一度闘うことになる井上に黒星。早々とプレーオフを待つことになってしまった。「正直、思い切りへこみました。もっと冷静に試合を進めていれば…。5月には初めてアジア選手権(カタール)に出場したけど、初戦で負けている。今回も初戦負けで終わってしまっては、とても会社に報告できない」

 無理もない。昨年12月に全日本選手権を制した実績を買われ、一宮グループ所属の企業レスラーになった。1日の過ごし方は激変。フリーターをしながらレスリングに打ち込んでいた頃は練習後にアルバイトに行かなければならなかったが、入社して以来、練習に集中できる環境を整えてもらい、しっかりとした休息もとれるようになったからだ。

 「いまは自分の時間も持てるようになった。レスリングと向き合える時間も以前より多くなっていると思う」

 環境が良くなったにもかかわらず結果を残せなければ、洒落にならない。泉は気持ちを入れ換えようと努めた。「シャワーを浴びて悪い運気を流し、後輩とともに会場を出てパスタを食べました」。

 プレーオフでは突進の際に頭突きによる反則をとられ、1-2とリードを許したまま迎えた第2ピリオドにクライマックスが訪れた。パーテレポジションになった井上をリフトアップ。ひねりを加えながら場外に投げ落とした。5-2と逆転。さらに相手の反則で2点を加算して勝負を決めた。

 「第1ピリオドでリードされた時には、焦りがありました。『頭突きなんて狙っていないよ』と言いたくなりましたよ」と、反則を取られたのは納得がいかない表情。逆転を呼び込んだのはスタミナの差か。「相手はこの日5試合目。自分は1試合しかやっていませんからね(苦笑)。試合前から体力勝負をするしかないと思っていました」

 プレーオフまでもつれ込んだ末にラスベガス行きのキップをもぎとった泉は、明確な青写真を描く。「僕を応援してくれる方々はオリンピック出場を願っている。世界選手権では3位以内に入賞し、リオデジャネイロ・オリンピック出場を決めたい」

 全ての失敗を糧にして今後に活かせる力を、いまの泉は持ち合わせている。


 







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