日本レスリング協会公式サイト
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2015.06.25

【特集】授乳期のママさんレフェリーが大会参加…東日本学生連盟が女性参画促進の英断

 レスリングがオリンピックの中核競技として存続するため、現在のレスリング界に求められているひとつが女性の参画と登用の促進・拡大だ。国際オリンピック委員会(IOC)の理念のひとつ、男女平等の実現のため、男子選手や男性役員に偏ることは許されない。

 6月24日に始まった東日本学生春季新人選手権(東京・駒沢体育館)で、東日本学生連盟が授乳期のママさんレフェリーを登用。女性レフェリー参加の手段として、結婚しても審判活動が継続できる道筋を示した。

 レフェリーとして参加したのは、青山学院大OGの佐藤(旧姓小林)弘美さん。昨年3月に結婚した元全日本チャンピオンの亮太さんとの間に、今年4月2日、長女・結逢(ゆあ)ちゃんを出産。現在でも数時間に1度、授乳をする子育ての真っ最中だ。

 これまでなら大会参加は考えられない時期だが、日本協会のB級ライセンスを持っている小林さんは、できるだけ早い時期にA級に合格し、さらに国際審判員として世界に飛躍したい希望を持っていた。

 この大会の副審判長に大学時代の恩師の太田浩史監督の名前があったことで、「参加できませんか? 2~3時間に1度、授乳しなければなりませんが…」と打診してみた。太田監督から吉本収運営委員長(神奈川大監督)に伝えられ、平日でOB・OG審判員の確保が難しい事情もあって参加を認めてもらった。

 審判のローテーションの谷間に授乳をすれば、審判は問題なくこなせる。審判をやっている間、子供はベビーカーに乗せて大会控室に置かせてもらい、大会の補助役員として参加している女子学生選手が仕事をやりながら見張り番。泣き出したらあやしてくれるなど全面協力してくれ、無事、初日の仕事を終えた。

 「多くの人に支えられ、本当に感謝します」と感謝感激の佐藤さんは、「レスリングに育ててもらいました。レスリングに恩返しがしたいです」と話し、子育てをしながらA級ライセンスを目指すという。東日本学生連盟の多賀恒雄会長は「何の問題もなかった。女性審判を登用するひとつの方法ができたと思う。(希望する)人数が多ければ託児所をつくってもいい」と話した。

 今回は生後2ヶ月半で、授乳の問題はある一方、動き回られる心配がないから実現した。もう少し大きい子なら補助役員の学生選手では手に負えず、多賀会長の言葉通り託児室を作り、遊び道具を置くなどの本格的な託児システムが必要になってくる。保育士を雇う経費の問題も出てきて、すんなりと実現することではない。

 しかし、物ごとは踏み出さなければスタートしない。踏み出せば、その一歩が道となるのであり、迷わずに行くことが大事。迷わずにママさんレフェリーの登用を続けるべきだろう。

 日本における女性レフェリーの第1号は、1981年の前田佳子さん(大阪・吹田市民教室)。1980年代の後半、少年少女レスリングにママさんレフェリーが誕生した後、1993年に増田(現姓高橋)早苗さんが初めて国内A級、翌年には国際ライセンスを獲得した。以来、多くの女性レフェリーが誕生したが、結婚・出産によって子育てが忙しくなり、気持ちはあっても活動ができなくなっていくのが普通だった。

 時代は変わっている。柔道では女性審判・役員のため、会場に託児所を設けて子供を預かる大会もあるし、味の素トレーニングセンターでは子持ち選手のため託児所が開設され、女性の参画を後押ししている。

 そんな中、レスリング界の女性参画促進の動きは、まだ本格化していないのが現実だ。今回の東日本学生連盟の英断は、レスリング界に革命をもたらす大きな転機になるかもしれない。


 







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