(文・撮影=保高幸子)
全日本選抜選手権の1週間後に行われた東日本春季新人選手権で、奈良勇太(日体大2年)がフリースタイル97kg級とグレコローマンスタイル98kg級で優勝し、両スタイルを制覇した。
昨年の全日本学生選手権の男子グレコローマン98kg級で1年生王者に輝いた逸材だが、その3ヶ月後にあった秋季新人選手権では両スタイルとも2位に終わり、まだ本物の実力がともなっていない事実を露呈してしまった。この優勝で着実に前進したことが証明されたと言えるだろう。
1週間前の全日本選抜選手権にも出場し、山本雄資(警視庁)相手に初戦(2回戦)敗退。今回の新人選手権では、その反省点を振り返りながら、技を確認しつつ試合を組み立てたという。
“本職”はグレコローマンだが、フリースタイルでも奮戦し、4試合で失点は1。「フリースタイルは練習していないので、グレコローマンの闘い方で攻めました。投げが決まってフォールできたのでよかったです」と話す。
グレコローマンでも、準決勝まで失点0のフォールとテクニカルフォールで勝ち進む圧倒的強さで勝ち進んだ。しかし、決勝では川上達也(大東大)と対戦し、あわやフォール負けという場面も作られてしまった。
「少し油断してしまいました。後半は相手もばてていたので、練習量では負けていないはず、取り返せる、と信じて攻めました」との思い通りに、後半に4点のバック投げを繰り出し、8-6でポイント勝ちをおさめた。
今後の目標は8月の全日本学生選手権での2連覇というが、もっと大きな目標がある。8月の世界ジュニア選手権(ブラジル)の出場が決まっており、「4年後のシニア世界選手権でオリンピック出場枠をとるイメージで、5位入賞を目指します」と、模擬予選のつもりで世界での闘いを見据えている。
父・英則さんは日大~警視庁で活躍した名選手で、世界選手権に3度出場。1990年のイタリア大会と91年のブルガリア大会では、不世出のレスラー、アレクサンダー・カレリン(ロシア)と闘い、日本選手で唯一、カレリンズ・リフトの洗礼を受けている“貴重な”選手だ。
父親がかなえられなかったオリンピック出場を目標に、奈良が世界へ飛躍する。