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2015.07.29

【全国少年少女選手権・特集】キッズ・レスリングの中心を目指した闘いがスタート! “吹田魂”を受け継ぐ大垣市少年団・中筋祐太代表

(文・撮影=樋口郁夫)

 「日本の中心地は?」という質問には、多くの人が「東京」と答えるだろう。歴史的な見地からすれば「京都」か。地理的な面で考えれば、岐阜県大垣市となる。弓なりの日本列島の中央付近に位置するのが大垣市だ。

 江戸時代の俳人、松尾芭蕉が「奥の細道」を終えた地であり、人気プロレスラー・棚橋弘至の出身地。高校野球ファンなら、今夏は駄目だったが、大垣日大高校が岐阜県の伝統を復活すべく奮戦していることを思いつくはずだ。

 その大垣日大高校を本拠に、今年の全国少年少女大会に初出場を果たしたのが大垣市レスリング少年団。日大で副主将を務めた中筋祐太氏が2005年に同高に赴任してレスリング部を創設。少年団は5年前に前任者(林健太郎代表)から引き継ぎ、練習場所を同高に変えて再スタート。今回、念願の全国デビューを果たした。

 「今の時代、部をつくっていきなり全国大会、とうのは厳しいですよ」と中筋代表。スタート直後は地方の大会に出ても勝てない状況で、試合には出ず、大会の見学に行くなどして周囲のレベルを感じさせることから始まった。

 基礎をしっかりつくり、東海大会で優勝選手を輩出できるようになったことで、今年、5選手が晴れて全国大会初出場を果たした。結果は小学生の部5年生30kg級Blueで碓井晴登選手が銅メダルを獲得。上々のデビュー戦を飾り、「保護者の皆様の強力で、やっとここまで来ることができました。今回の経験をもとに、来年はさらにステップアップしていきたい」と今後の希望を話した。

■逃げ回って勝利を目指すことは絶対にやらせない!

 中筋代表はキッズ・レスリングの名門、大阪・吹田市民教室でレスリングを始め、全国大会優勝、全国中学生選手権優勝、高校三冠王獲得などのエリートコースを歩んだ。日大でも2004年全日本大学選手権の大学対抗得点優勝などを支えた選手。経験上、「レスリングは、相手の距離やタイミングなどで感覚的なことが多くを占めるスポーツ。言葉で教えることは難しく、何度も反復練習をやり、その中から体で覚えるスポーツ」と説明する。

 それを知っていても、教えるとなると別問題。どうやったら選手が技術や身のこなしを覚えてくれるかを自問自答しながらやっているという。ただ、「特に宣伝とかはしていませんが、兄に連れられて来たり、保護者同士のつながりで選手はけっこう集まってくれます」とのこと。部員数は約30人というから、部員集めに四苦八苦しているクラブからすればうらやましい限りだ。

 練習は週2回、高校生と一緒にやっている。「メニューに差はつけていません。でも、けっこう楽しくやっています。週2回で足りない選手は、他の日も練習に来て高校生相手に練習します」と言うから、創部5年目にして選手の意識もかなり高くなっているようだ。

 自身のキッズ時代と比べ、展開されている技術が格段に進歩しているのは間違いない事実。中筋代表もそれは感じるが、「以前に比べると、勝ち上がっていくために何をするべきかを選手も指導者もしっかり研究していること」が大きな違いだと言う。それに応じて「自分も勉強していかなければならない」と言う。

 変わらない信念もある。吹田時代は、試合に勝っても最後逃げ回って勝つような内容だと、「押立先生(吉男=故人)にめちゃくちゃ怒られました。高校、大学、それ以降につなげることを考えれば、目先の勝利にこだわっていてはいけません。押立先生の教えは、私の指導の根幹です」と言い、逃げ回って勝利を目指すことは絶対にやらせないという。

■コーチは元全日本チャンピオン、平野孝喜氏

 そんな中筋代表を手助けするのが、1991年に男子フリースタイル48kg級で全日本王者に輝き、世界選手権(ブルガリア)にも出場した平野孝喜コーチ。現在の日本協会・栄和人強化本部長が京樽にチームを作った時の男子の一番弟子だ。

 「3年前に息子(長男・敬太)がレスリングをやることになり、時間を見つけて練習も手伝うようになりました」。選手活動を終えて地元へ戻り、現在は会社員をやっているので、いつも時間がとれるわけではないが、「子供が、自分のやっていたスポーツを『やりたい』と言ってくれたのはうれしかったです」と、気持ちはマットへ戻っている。

 今回は1勝をマークしたものの、メダルには手が届かなかった。「まだ全国で勝てるレベルではないですね。ただ、こうした雰囲気を経験できたことはよかった。来年は2勝、3勝を目指して頑張ってほしいです」と焦らずに育てる方針。

 「自分は高校からレスリングをやってきた人間。正直言って、キッズ・レスリングのことはよく分からないのです。中筋代表の後方支援で頑張っていきたいと思います」と謙そんするが、元全日本王者が指導陣にいるのは、チームにとって心強い限り。技術を学んだ選手が一気に飛躍する可能性は十分だ。

 中筋代表は「今年は、みんな(全国大会の)空気にのまれていましたね。来年はオリンピックの壮行会があるのでしょう。もっとすごい雰囲気になりますよね。でも、そうした空気に触れることで、『自分も将来、オリンピックに出てみたい』という気持ちになり、その中で闘ったことを自信につなげてくれればいいですね」と期待する。

 かつてキッズ・レスリングを席けんした吹田市民教室の分家であり、“日本の中心”にある大垣市少年団。キッズ・レスリングの中心を目指した闘いが本格スタートした。

日大時代の中筋祐太代表=2004年全日本大学選手権74kg級決勝

京樽時代の平野孝喜コーチ(青)=1991年全日本選手権


 







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