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2015.08.12

【特集】2015年世界選手権へかける(9)…男子フリースタイル86kg級・松本篤史(ALSOK)

男子フリースタイル 57kg 61kg 65kg 70kg 74kg 86kg 97kg 125kg
男子グレコローマン 59kg 66kg 71kg 75kg 80kg 85kg 98kg 130kg
 女   子  48kg 53kg 55kg 58kg 60kg 63kg 69kg 75kg

《松本篤史・略歴》《松本篤史・国際大会成績》《男子フリースタイル86kg級展望》《勝者の素顔》
《オリンピック&世界選手権・歴代優勝選手と日本選手成績=男子フリースタイル》


(文=樋口郁夫)

 今年になってから出場した国際大会で、金(ブリヤート国際大会=ロシア)、金(モンゴル・オープン)、銀(アジア選手権=カタール)を獲得。絶好調で世界選手権(9月7~12日、米国・ラスベガス)へ臨む男子フリースタイル86kg級の松本篤史(ALSOK)。同じALSOKの金久保武大選手(男子グレコローマン75kg級)に続き、父親になったばかり。7月24日に長男・蘭太郎君が生まれた。

 それがモチベーションになっているのは言うまでもないが、松本は子供の誕生に際し、妻の出産に立ち会うため7月下旬の世界選手権代表チームのポーランド遠征を辞退。夫としての行動を優先した。「世界選手権で結果を出せなければ、『あの時、ポーランドへ行かなかったからだ』と言われることは分かっています」-。

 結果を出さなければならない。ポーランドへ行かなかった分、国内でとことん練習を積んでいるという自負がある。「夏の全日本合宿と日体大の草津合宿で、どこまで自分を追い込めるか。そこを耐え抜ければ、世界選手権でもいい結果が出ると思います」。

 守るべきものがある人間は強い、と言われる。家族のために信念の行動をとった松本。その強さがラスベガスのマットで発揮されるか。

■旧習にとらわれず、信念を貫いてポーランド遠征を辞退

 欧米では、夫が妻の出産に立ち会うのは当然という風潮があり、重要な仕事や会議があっても、欠席することはざらにある。スポーツ界でも、米大リーグには産休制度があり、ブルージェイズの川崎宗則選手やブルワーズの青木宣親選手(現ジャイアンツ)はこの制度を使って試合を欠場し、妻の出産に立ち会った。

 首位に立っていたゴルフの選手が、妻の陣痛が始まったという連絡を受けて以後のラウンドを棄権。「賞金1億円を捨てた」というニュースもあったほど。万人が賛成していなくとも、非難はされない。

 日本は、そうではない。戦後の高度経済成長を支えた世代の男なら、妻の出産で仕事を休むことなど考えられないだろう。時代は変わり、男の社員にも出産休暇や育児休暇を認めねばならない時代だが、上司や周囲の無言の圧力もあり、規定通りにいっていないのが現状ではないか。

 スポーツの場合は法律の規定がない分、慣例が続くことが多い。日本代表クラスになれば、出産で練習を1日だけ休むことはあっても、遠征を辞退するケースは、そう多くあるまい。最近のレスリング界でも、合宿や遠征のため、子を産む妻のそばにいてやれなかった選手は少なくない。

 「いろんな考え方がありますから、どちらが正しいとは言えないと思います」と松本。いずれにせよ、27歳の若さで旧習にとらわれない信念ある行動ができるのだから、その強さは必ずやマットの上で出てくるだろう。

■グレコローマンの練習も取り入れ、幅を広げる

 国際大会で3大会連続メダル獲得と言っても、松本に満足の気持ちはない。「金メダルを取ったといっても、相手はアジアの選手が多かった。ヨーロッパの選手なら、もっとレベルが高い。チャレンジャーであることには変わらないです」と現状を冷静に分析。

 アジア選手権では銀メダルをとったにもかかわらず、「反対ブロックに入っていたら1回戦負けするのと同じ」と、くじ運に助けられた銀メダルだったと解釈。これらの好成績が世界選手権での好成績を保証するものでないことは認識している。

 しかし、結果からして成長の証を感じるところは随所にある。昨年の世界選手権でのイラン選手との試合はテクニカルフォール負けだった。アジア選手権では、選手は違ったがイラン代表選手相手に3-6と6分間を闘い抜いたことは確実な前進。

 2012年のワールドカップ(W杯)では5戦全敗だったが、昨年のW杯では2勝をマーク。世界の強豪相手に勝てる実力は間違いなくついてきた。目下の課題は、前半の失点をいかに抑えるか。アジア選手権決勝のイラン戦では、後半も勝負できたことで、実感した課題。「前半は無理に攻めず、プレッシャーをかけて相手の攻撃をしのぎ、後半で勝負をかける」という勝利の方程式を描いている。

 強化の一環として、日体大ではグレコローマンの練習も取り入れている。タックル以外でポイントを取るケースが増えてきていること、外国選手の圧力に押し負けないこと、ばてた時の対処法など、自分の闘い方を貫くうえで必要だと感じて取り組んでいる。「チームに全日本チャンピオン(米平安寛=98kg級)や松本(慎吾)監督がいる」と練習相手はトップレベル。多角的なハイレベルの練習を積み、実力アップに余念がない。

 技術と戦術の幅が広がり、人間として強くなった松本。夫と父の強さを、ラスベガスで爆発させたい。


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