【和歌山国体／第２日・特集】リオ候補に急浮上！ 樋口黎（大阪・日体大）が全日本王者を破って初優勝
（文・撮影＝増渕由気子） 全日本王者を破って国体初優勝の樋口黎（大阪・日体大）
世界選手権代表の高橋侑希（山梨学院大）はけがのため欠場したが、全日本級のトーナメントを制したことで、白紙に戻ったリオデジャネイロ・オリンピックの代表候補に躍り出た。樋口は「得意のアンクルホールドが決まった。グラウンドは自信があるので、バックを１本取れたら何とかできる」と喜びをかみしめた。
■高橋侑希、森下史崇の“２強時代”に樋口が割って入れるか
日体大に入学当初は、霞ヶ浦高の先輩で憧れでもあった森下に歯が立たなかったが、「練習ではそこそこやれるようになってきた」と、実力が縮まっていることを実感していた。今年３月のモンゴル・オープンでは２－４と接戦。しかし、練習と試合は違う。「12月（全日本選手権）に勝つために、自分の力がどれだけあるのか試したかった」という樋口は、準決勝でついに森下と対峙（たいじ）した。
開始早々、仕掛けたのは樋口だった。腕取りからのタックルでバックを奪って２点。４分すぎまで２－０とリードする展開から、森下がバックを奪って２－２となったが、樋口がグラウンドで体を入れ替え、アンクルホールドの体勢へ。がっちり決まって“アンクル地獄”となり、一気に12－２。「モンゴル・オープンの反省を生かして技を出した」と、“衝撃”とも言えるテクニカルフォールを決めて見せた。
2012年のロンドン・オリンピックが終わったあと、リオデジャネイロに向けては森下と高橋の“二強時代か”と言われてきた。ダークホース的存在だった樋口が、ついに２強の片棒を倒した。高橋に勝てばオリンピックが現実味を帯びてくる。高橋とは過去２度対戦し、樋口が２敗しているが、いずれも接戦で主導権は樋口が握っていたようにも見える内容だった。 森下戦で開始早々ポイントを奪う樋口黎（青）
■全日本選抜選手権での減量失敗は、私生活に原因あり
実は、今年の世界選手権の代表候補として注目は浴びていた。予選となった６月の全日本選抜選手権で樋口の記録はない。エントリーしたものの、体重が落とせず棄権したからだ。「けがで練習ができず、体重調整が間に合わなかった」ことも理由の一つだが、減量失敗の大きな原因がもう一つあった。
「実はかなりの偏食家。野菜や米が苦手で、肉や魚中心の食生活。さらに、間食でお菓子を食べるのが大好きだった」。周囲に改善を指摘されても、結果を残していたため偏食生活を続けていたことで、減量ができない体になっていた。
「本当は今年の世界選手権に自分が出場しなければいけなかった。食生活の改善をしないと次のステップに進めないと現実を受け止めました」と、６月の失敗を猛省した樋口は、野菜嫌いは克服できてないものの、お菓子を断ってバランスのある食事を心がけるようになった。全日本選手権まであと３ヶ月弱。肉体改造でさらに強さに磨きをかけられるか。
オリンピック1次予選の世界選手権が終わり、残りはアジア予選と２度の世界最終予選と３度のチャンスが残っている。男子フリースタイル57kg級のアジア強豪国は、イランやモンゴルなどが軒並み世界選手権で枠を取り、来年３月のアジア予選にはインドとキルギスあたりが日本のライバル国となりそうだ。
樋口は「アジア予選の代表がオリンピックに行けると思う。全日本選手権で優勝して僕が（オリンピックに）出ます！ 計量失格もしないし、（昨年の全日本選手権で警告失格となった）シングレットもつかみません」。同じ轍（てつ）を踏まず、樋口が地力でオリンピックロードを走り抜けるか。
