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2015.10.05

【和歌山国体・特集】宇井大和(新宮高)と藪中コーチ(同高教)のタッグで和歌山県が総合優勝! 

(文・撮影=増渕由気子)

 「ベテランの成年」と「新勢力の少年」が力を合わせて勝ち取った優勝! 9月27〜30日に和歌山県那智勝浦町で行われた紀の国わかやま国体。フリースタイルでは成年61kg級に出場した2012年ロンドン・オリンピック銅メダリストの湯元進一(自衛隊)が優勝し、少年74kg級では吉田隆起(和歌山北)が圧勝で高校三冠王(全国高校選抜大会・インターハイ・国体)を達成。66kg級の三輪優翔(和歌山北)は2年生で国体王者になった。

 フリースタイル終了時点で5位と好位置につけた和歌山は、続くグレコローマンで大躍進。少年60kg級では宇井大和(新宮)が優勝し、55kg級では堀江耐志(和歌山東)が2位。成年も130kg級の谷田昇大(和歌山県教育庁)が2位、75kg級の阪部創(神大)が3位と表彰台に食い込み、得点を積んでいった。

 2位の秋田県との点差はわずか2点。総合力で勝ち取った優勝だった。

■和歌山国体は宇井で始まり、宇井で締めた

 国体で現役生活の引退を表明した湯元進一も感動的だったが、“主役”だったのは那智勝浦の隣町、新宮市で育った宇井の活躍だろう。選手宣誓の大役を果たし、地元選手としてのプレッシャーをはねのけての闘い。決勝では、今季四冠王を目指した成國大志(三重・いなべ総合学園)に快勝した。

 優勝した瞬間、セコンドの藪中(和歌山・新宮高教)コーチが思わずマットに駆け上がって宇井を抱きしめるシーンは、国体強化に取り組んできた和歌山県の努力が結実した瞬間だった。

 藪コーチは「以前は名前負けしているところもありましたが、成國選手と何度も対戦しているうちに、実力の差が縮まっていたことは明らかでした。この勢いであれば勝てる」と、自信を持って宇井をマットに送り込んだ。宇井も「成國君とは3回目の対戦。フリースタイルがいい流れを作ってくれたので、僕もその流れに乗るんだ、と言い聞かせた」という。

 5月のルール改正で、ジュニア以下の試合ではコーションによるパーテールポジションの選択が廃止され、グラウンド攻撃をするには、スタンドでテークダウンをとるしかなくなった。宇井は「グラウンドが得意だった僕にとっては、正直マイナスでした。けれども、ルールに適応するしかないので、夏の合宿では6分間、攻め続けられる体力を鍛えてきた」と振り返った。

 試合の後半、成國と四つ組の態勢になると、「胸を合わせたら、先に行かないと逆にやられる」と場外際で豪快なそり投げを決めて2点。リードを広げて成國の反撃意欲をそいだ。

 最終日に最大の見せ場を作った宇井。この活躍の陰には、藪コーチの5年間の闘いがあった。

■新宮高レスリング部の再建から始めて5年で国体王者を輩出

 藪コーチにとって宇井は、この国体のためにスカウトし、4年計画で大事に育ててきた逸材だった。「宇井は地元のキッズクラブの経験者ですが、中学で野球をやるために、小学校を卒業するタイミングでレスリングから離れていたのです」。その宇井が高校では野球を続けないという風のうわさを聞きつけた藪コーチは、キッズクラブの先生たちとともに、宇井のところに押しかけた。「宇井が3年の時に和歌山国体がある。この国体で、おまえがヒーローになるんだ!」

 「藪先生の勧誘がなかったらレスリングをやる考えはなかった」という宇井をマットに呼び戻してわずか3年。全国中学生選手権3連覇や高校でも多数のタイトルを獲得した成國を追い越すことに成功した。

 藪コーチは「私は5年前、和歌山国体で地元の選手を代表に出して優勝させるために新宮高に赴任しました。ですが、新宮高のレスリング部は廃部になっていて、再建するところから始まったんです」。

 和歌山市内、名古屋市内からそれぞれ3時間以上かかる“陸の孤島”。こうした立地ながらも、部の再建、選手のスカウト、そして強化育成を成し遂げた理由を、藪コーチは「新宮市の人たちが暖かく応援してくれたことと、和歌山市内の先生たちが、“チーム和歌山”として協力してくれたことが大きかった」と振り返った。

 さらに…。「僕は群馬大出身で卒業後も5年間、群馬に残って勉強していました。今年の世界選手権に後輩の木村安里が出場したり、全国少年少女選手権で高知クラブの櫻井優史が活躍(5名優勝)しているのを見て、『勇気をもらった僕も、国体でやってやる』という気持ちになりました」と、群大パワーが相乗効果になったことを明かした。

 国体を大成功に導いた敏腕指導者の藪コーチ。注目どころは指導力だけではない。国体直後の海外遠征(世界ベテランズ選手権=ギリシャ)で国際審判デビューを果たす。「今後も新宮高を拠点に、指導に、審判にと頑張っていきたい」。
 選手にもコーチにも、それぞれストーリーがたくさん詰まっている和歌山県。更なる飛躍を期待したい。


 







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