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2015.12.17

【連載】ネバーギブアップ! 2020年、金メダル10個への挑戦(17)…オリンピックをかけた闘い! 不安の多くは幻想であり、恐れることは何もない!

(日本協会強化本部長・栄和人)

前回記事(女子の“団体7冠制覇”の原動力は地方指導者の努力と意識の高さ


 天皇杯全日本選手権が21日(月)から東京・代々木競技場第2体育館で始まります。9月の世界選手権(米国・ラスベガス)でメダルを取った女子5階級に関しては、オリンピックの日本代表争いとはなりませんが、女子75kg級と男子の全階級はオリンピックの出場をかけた壮絶な闘いとなります。

 大舞台に臨む時の不安と緊張は、言葉では言い表せません。経験した人でないと分からないでしょう。どんなに「十分に練習した」と思い込んでも、「やり残したことがあるのではないか」「ライバルはもっと練習して強くなっているのではないか」などと思ってしまい、不安から逃れることはありません。

 「早く試合をしたい」という気持ちは、いつしか焦りへとつながります。また、これまで多くのところで話し、書いてきたことですが、私の場合、初めてのオリンピック挑戦だった1984年ロサンゼルス大会の予選では、「負けてもいいから、早く試合が終わってほしい」とさえ思ってしまいました。

 前年の世界選手権(ソ連・キエフ)では4位でした。そんな実績を自信に変えようとしても、次々に襲ってくる強烈な不安、緊張、重圧を押さえることができず、平静を保つことができなかったのです。

■不安、緊張、重圧に対処することができたことで獲得できたオリンピック代表

 そんな私ですが、次の1988年ソウル・オリンピックの時は、精神的にも成長したようで、ロサンゼルスの時より余裕ができたように感じました。不安、緊張、重圧に対処することができたことで、オリンピックの出場権を勝ち取ることができたと思います。

勝負は最後まであきらめてはいけない!(2013年ユニバーシアードより=You tube)

 技術、体力、戦術のどれもがすぐれていても、気持ちで負けてしまっては勝つことができません。まず気持ちをしっかり持ってください。不安の多くは幻想です。「やってきたことが、できるかどうか」という気持ちや、「相手は強くなっているのでは?」と思いこんでしまうことが、不安を生んでしまいます。

 でも、考えてみてください。相手も必死に闘う真剣勝負の世界では、自分の技がすべてかかるものではありません。ライオンが狩りに成功する確率は20~30%でしかないそうです。狩りに失敗し続ければ死が待っている世界ですら、この数字です。

 真剣勝負の世界において、出した技がすべてかかることはありません。技がかからない自分を想像してしまっても、2度、3度と挑む姿を描いてください。実際の試合においても、最初に技がかからなくても、続けて挑めばいいのです。

 スポーツの場合は、成功しなくても命は取られません。そう思えば、かなり気が楽になるのではないでしょうか。

 「相手は強くなっているのでは?」という不安も、根拠のない思い込みでしかいないでしょう。自分自身のことを考えてみてください。短期間で2倍、3倍もの強さになることがありえますか? そんな方法がありますか?

 相手も同じです。わずかの期間で別人のように強くなっていることなどあり得ません。勢いがその選手を大きく見せることはあると思いますが、根本の強さはミリ単位でしか身につきません。技量が同じくらいの相手との闘いは、気持ちの問題です。自分の気持ちの持ちようで、1の力の選手が10に見える時もありますし、その逆もありえます。相手の幻想に踊らされてはいけません。

■負けても、応援してくれる人との人間関係は変わらない

 大舞台に出る選手は、自分を育て、支えてくれた人のことを思い浮かべると思います。両親、家族、過去から現在までの恩師、先輩、同僚…。大きな力になりますが、「その人達のために負けられない」という気持ちが、「負けたら合わす顔がない」というプレッシャーとなってしまうこともありえます。

 でも、あなたを応援してきた人たちは、あなたがオリンピックに出場できなかったからといって、態度が変わるでしょうか。何も変わらないはずです。変わったとしたら、本当の支援者ではありません。

 芸能界やプロスポーツ界では、スター選手にはたくさんの人が群がってきます。しかし、その人に商品価値がなくなったとなると、あっという間にいなくなってしまうものです。拓大の須藤元気監督も、交通事故で選手生命を断たれそうになった時、そんなことを経験しているそうです。

 純粋な気持ちでオリンピックを目指してきた皆さんの周りには、金もうけ目当てという人はいないと思います。オリンピックの夢が断たれても、皆さんを引き続き応援してくれる人達ばかりのはずです。

 負けても、人間関係は何も変わりません。勝ってオリンピック代表となれば、なおいっそう応援してくれる人ばかりだと思います。恐れるものは何もないのです。

 オリンピックに向けて、最後の大舞台がスタートします。いろんな楽しみを封印して厳しい練習に耐え抜いてきたのは、まず、この舞台で勝つためだったはずです。自分を信じ、支えてくれた人を信じ、自分の力を出し切ってください。

 選手諸君の健闘を期待します。


栄和人強化本部長・略歴

《ネバーギブアップ! 2020年、金メダル10個への挑戦》

■第16回: 女子の“団体7冠制覇”の原動力は地方指導者の努力と意識の高さ(2015年10月9日)

■第15回: 2015年世界選手権を終えて(2015年10月5日)

■第14回: 今を全力で生きれば、必ず勝利の女神がほほ笑む(2015年7月22日)

■第13回: 負けた時こそ、“負けることを恐れない勇気”が必要(2015年5月3日)

■第12回: 女子ワールドカップ優勝で感じたキッズ指導者の重要性(2015年3月17日)

■第11回: 米満達弘選手に感謝するとともに、必ず伝統を引き継ぎます (2015年2月13日)

■第10回: 人生は、ネバーギブアップ! 挑戦する気持ちを忘れずに (2015年1月1日)

■第9回: 審判の真剣さとき然さが、日本レスリング界を支える (2014年11月20日)

■第8回: 新たな応援のスタイルを生み出したネット中継 (2014年10月10日)

■第7回: レスリングを支援してくれるお母さんが増えてほしい (2014年8月17日)

■第6回: 試合後にゴミ拾いをしたサッカー・サポーターに学びたい (2014年7月17日)

■第5回: 感謝の気持ちを忘れなかった教え子を、誇りに思います (2014年6月23日)

■第4回: 天国の堀幸奈さんに、必ず世界一の感動を届けます  (2014年5月26日)

■第3回: 35年前の世界ジュニア選手権でのほろ苦い思い出 (2014年5月9日)

■第2回: 米国で頑張る永島聖子さんにエールを贈ります (2014年4月25日)

■第1回: 吉田栄勝さんの功績と思い出 (2014年4月18日)


 







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