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2016.01.27

【特集】逆転のオリンピック出場にかける…男子グレコローマン66kg級・高橋昭五(日体大)

(文・練習撮影=保高幸子)

 2015年、大きく飛躍した選手のひとりに男子グレコローマン66kg級の高橋昭五(日体大)がいる。12月の全日本選手権で2位の成績を残したことで、条件付きではあるがリオデジャネイロ・オリンピック出場のチャンスを得た。

 昨年6月に行われた全日本選抜選手権では、2012年ロンドン・オリンピック代表の藤村義(自衛隊)との3位決定戦に勝って3位に入賞。昨年の全日本選手権でも3位入賞を果たしてはいるが、オリンピアンを破ったことで、より価値のある3位だったといえよう。オリンピック予選出場をかけた12月の全日本選手権でも藤村を撃破。表彰台も一つ高いところへと進んだ。

 決勝は兵庫・育英高校時代の恩師である井上智裕(三恵海運)との闘いだった。「レスリングはまぐれでは勝てない。本当に実力勝負ですが、今回は準決勝まで、すべて勝ったことのある相手だったので気持ちが楽でした」と、くじ運のよさを口にするとともに、準決勝で勝った時点で「2位以内が確定してオリンピックのチャンスがつながってホッとした」と言う。

 決勝前は「オリンピックの可能性が0ではないという気持ちと、日本で一番を決める決勝で恩師と試合ができることがうれしかった」と話す。内容はローリングを3回連続で受けるなどして、2分7秒、0-8のテクニカルフォール負け。その時は「井上先生には練習でもまったく歯が立たなかったし、実力差があったから」と思ったが、試合後に松本隆太郎コーチに言われた言葉が今になって身にしみるという。

 「『オリンピックがかかっている試合で、なぜあんなに簡単に負けたんだ、もっとできたはずだ』と言われました。その時はよく分わからなかったんです。でも今は、言われたことが分かります。もっとやれたんじゃないか、と。期待してもらっていたのに…」と口を真一文字に結ぶ。

 「もう後悔しない。チャンスがある限り、がむしゃらにやるんだ」と決心し、チャンスが来た時のために練習に励んでいる。

■全日本2位で、名実とものターゲット選手へ!

 学生タイトルは全日本選手権の約2ヶ月前に行われた全日本グレコローマン選手権のみ。レスリングを始めて6年目の秋にやっととったタイトルだ(JOC杯ジュニアを除く)。2020年東京オリンピックのターゲット選手に指定されてはいるが、同じターゲット選手であり、日体大同期の屋比久翔平(75kg級)などは学生タイトルが当然のような成績を残していた。

 「(ターゲット選手が)僕でいいのかな、という思いは結構ありました。いつまでこういう扱いをしてもらえるかな、って」と、引け目を感じていただけに、念願の学生タイトル獲得だった。しかし、昨年の全日本選抜選手権で表彰台に登って以来、「チャンスは学生のタイトルだけじゃない、全日本で結果を」というひとつ高い目標を持った。

 高橋は現在日体大3年生で、来季のグレコローマンの主将に推された。中学校まではサッカーをやっていたが、高校では個人競技に挑戦してみたいと思っていた。そこに、現在プロ総合格闘家として修斗のリングで活躍する兄の遼伍さんの「レスリングやってみたら?」という一言があったという。地元から通える高校の入学案内を取り寄せた中で育英高校の部活紹介が目に止まり、進学を決めた。

■キッズ・レスリング経験者の中で踏ん張った高校時代

 高校からレスリングを始めた選手が最初にぶつかる試練を、高橋も経験した。キッズからやっている選手との差があり、初心者で入部した同期はほとんどがやめていった。最後まで残ったのは高橋ともうひとりだけだったという。高橋もなかなか勝てなかったが「逃げたくない、負けたくない。これでやめたら、これからも何からも逃げる人生になる」と、踏ん張った。

 最終的には、3年生になってやっと表彰台に上がることができた。全国高校選抜大会とインターハイで3位、国体グレコローマン2位の成績を残すことができた。「もっと強くなりたい」と大学でも続けることを希望したが、強者が集まる日体大にあっては特待生とはいかない成績だった。「やりたいことをやらせてくれる親に、ずっと感謝しています」―。

 高橋のモチベーションは応援してくれる肉親への恩返し、そして、レスリングの強さはレスリング歴の長さではないことを見せたいという思いだ。大学の先輩やOBにはトップレスラーが大勢おり、刺激を受ける。「オリンピックに出た先輩がたくさんいて、やっぱり自分まだまだだ。次元が違うな、と感じます。トップの環境で練習させてもらっていて、あらためてすごい環境でやらせてもらっているなと思います」と顔がほころぶ。

■地元の期待を受け、チャンスがある限り前進!

 ロンドン・オリンピックをテレビで見たのは高校3年生の時。そのオリンピックのグレコローマン60kg級で銅メダルを取った松本隆太郎が現在のコーチだ。「(全日本選手権のグレコローマン75kg級で優勝した屋比久)翔平も松本コーチの直接指導を受けていて、今回ついに優勝しました。うれしかったし、やっぱり練習はうそをつかないんだ、と思えました」と、今まさに自信を強め、実力をつけているところだ。

 オリンピックの出場枠をかけた予選は残り3大会。最初に行われる3月のアジア予選(カザフスタン)には王者・井上が出場する。井上がここで出場枠を獲得したら、その瞬間に高橋のリオデジャネイロ・オリンピックの可能性が消える。外からみればそうかもしれない。だが高橋にとって、今はそれよりも、可能性が残っているということが大きい。「地元に帰ったとき、みな期待してくれているのをひしひしと感じました。やっぱりオリンピックなんです。頑張る、頑張る、と皆に言ってきました」-。

 全日本選手権での後悔を2度としないためにも、応援してくれる人たちのためにも、チャンスがある限り、高橋は前進する。


 







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