1993年にスタートし、毎年約1100選手を集めるJOCジュニアオリンピックカップは、神奈川県協会の尽力により、1999年大会から現在ま で横浜文化体育館を舞台に開催されている。その神奈川県出身の内藤由良(国士舘大=磯子工高)がジュニア・男子フリースタイル84kg級で優勝。地元の期待にこたえた。
2014年に横須賀アリーナで行われた地元インターハイは2位だった。昨年のこの大会は3位。地元で闘うビッグイベントは、おそらく今回が最後になると思われ、「やっと勝てましたね」とにっこり。地元の関係者や知り合いからの祝福を次々と受けて気持ちよさそうだ。大会終了後は神奈川県協会の大会役員や補助役員の記念撮影にメダルをかけておさまり、育ててもらった恩を示した。
神奈川県からは、内藤の磯子工高での後輩にあたる奈須川良太がカデット・男子グレコローマン85kg級で優勝し、先輩・後輩のアベック優勝となった。
神奈川県協会によると、神奈川県出身の選手がジュニアで優勝するのは、2000年の男子グレコローマン63kg級の村崎学志(拓大=向上高卒)と同76kg級の渡邊直人(東農大=横浜高卒)以来、16年ぶりのこと。カデットでは一昨年の男子グレコローマン50kg級の豆塚将文(日大藤沢高)に続く優勝だが、その前となると、2003年の男子フリースタイル58kg級で安澤薫(向上高=早大へ進学)ら3選手が優勝した時までさかのぼる。
■必殺のアンクルホールドは崩れたが…
男子フリースタイル84kg級の出場選手を見る限り、昨年の東日本学生秋季新人選手権を制している内藤が優勝候補の筆頭と思えた。決勝での激突が予想された同2位の石澤誠悠(山梨学院大)が準決勝で敗れ、決勝に出てきたのは高校生の横山凜太朗(三重・いなべ総合学園高)。
「去年、国士舘大の選手が高校生に負けていたので、嫌な予感を感じました」とのことだが、「勝ちにこだわって闘った」と言う。開始早々にテークダウンを取って相手の足首をがっちりロックすると、チームメートからは「決まった!」と、勝利を確信した声が数多く挙がった。
一気にテクニカルフォールへもっていける必殺技だからこその声だが、残念ならが1回転したところでロックが崩れてしまい、4-0でブレーク。しかし、この4点をしっかり守り切り、危なげない展開で勝った。
全試合を通じての失点は準決勝の2点だけ。脚をさわらせてもポイントを取られない練習を十分に積んでおり、「その成果を出せたのが勝因です」と言う。
■和田貴広監督が不在でも、中身のある練習
国士舘大の和田貴広監督は日本協会の男子フリースタイル強化委員長を務めており、現在は国士舘大の強化だけに専念できない状況。それでも、元世界王者の朝倉利夫部長のもと、和田監督が不在であっても「教えてもらった技を反復し、上を目指す先輩や同期とともにいい練習ができています」と言う。
試合前には、オリンピック予選でモンゴルに行っている和田監督から電話をもらい、異国からも気にかけてくれることに気持ちが盛り上がったようだ。
この優勝で世界ジュニア選手権(8月、フランス)への出場が内定した。「世界大会というのは初めてですが、その名前に恐れず、挑戦者として1試合ずつ勝ちに行きたい」と言う。
同選手権の74kg級には、インターハイ決勝で敗れた山崎弥十朗(早大=当時埼玉・埼玉栄高)が代表に内定している。「年下ですけど、目標ですね」。階級が違うので、このあと公式戦で闘う機会があるかどうかは分からないが、それだけに、山崎よりいい成績を残すことが彼への“リベンジ”になる。刺激材料は多い。
地元での優勝を機に、内藤が世界へ飛躍する。