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2016.10.04

【特集】廃部寸前からの再起! 1年生部員3人で再スタートを切った東農大

(文・撮影=樋口郁夫)

 今年3月、3人残っていた4年生選手が卒業し、存続が危ぶまれた東農大レスリング部。長い間、部員を指導してきた宮下久雄コーチが4月からオホーツクキャンパス(北海道・網走市)に転勤となり、絶体絶命のピンチに陥った。

 しかし、入れ替わりで3人の1年生部員が入部し、首の皮1枚つながった。いずれもレスリングの経験者。飯山禮文監督は、ゴールデンウイークには強豪大学に出げいこ、夏休みには他大学との合同合宿を敢行。来年のリーグ戦での復活参戦も視野に入れ、チームを盛り立てている。

■部員「0」のピンチを経験者3人の入部でしのぐ

 飯山監督は「ゴールデンウイークには国士舘大、明大、神奈川大、青山学院大に出げいこに行きました。マットに復帰したばかりの選手たちなので、きつかったと思います。夏休みは国士舘大、中大、東海大の菅平合宿に加えてもらいました。一部リーグの大学との練習は大変だったと思いますが、あえてやりました」と、再スタートとなった4月からここまでを振り返る。

 仕事の関係で、監督が全日程に参加することはできなかったが、行ける日は自身も同行。三浦コーチや宮下コーチが帰郷して同行することもあり、再興への姿勢は十分。「きびしくしたら辞められてしまうかも」といった考えはなく、「リーグ戦復帰、即一部リーグ復帰」を目指して強化に余念がない。

 現在の部員は、鬼原渓(57kg級=千葉・八千代松陰高卒)、小松清朗(65kg級=高知・高知東高卒)、田中駿(65kg級=神奈川・向上高卒)の3人。ここに”5年生”のOBがコーチ格で加わるが、現在は就職活動で忙しいこともあり、やや足が遠のいている。飯山監督は「4人ですと2組で打ち込みやスパーリングができますが、3人というのは中途半端ですね」と、ちょっぴり残念そう。

 それでも、土曜日には近郊在住のOBが練習に来てくれる時もあり、部員不足を補える。特別に「主将」という役職は決めていないそうで、「3人がみんな率先して練習している。少人数ならではの中身の濃い練習はできている」と、部員の自主性は頼もしそう。

 また、水・金・土・日曜日はキッズ・クラブも一緒に練習をやっており、マットはけっこうにぎやかになる。「いろいろ工夫しながら、マンネリにならないようにやっています」と言う。

■少ない部員でも、自主性と団結力は十分

 3人の部員の中で、最も闘志あふれる“ファイター”と言えるのが57kg級の鬼原。千葉県の高校総体50kg級を2年連続で制し、県の強化指定も受けた選手。「先輩がいないので、最初のうちは練習の雰囲気や流れがつかめなかった。自分たちで必要なことを考え、ここまでやってきました」と言う。

 東農大へは、技術練習生の制度を使い、1年間、そこで修行をしたあとの入学。したがって1年間のブランクがあったが、「大学でもレスリングを続けたい」という気持ちがあり、入学前から入部を決めていた。ゴールデンウイークは「体力も戻っていなかったので、とても大変でした」と苦笑いする。

 体も慣れ、ここからが勝負。秋は全日本大学選手権、東日本学生秋季新人選手権と大会があるが、「自分のできることをしっかり練習し、試合では全力を尽くしてやりたい」と、結果よりも内容を求める。「短大なので2年間です。短い期間で結果を残せる自信はないのですが、4年間いる他の2人の支えになって頑張りたい」と、燃えている。

 飯山監督が「慎重派だけど、技を多くしっている」と評する65kg級の小松は、グレコローマンの方が得意な選手。国体グレコローマンと、それに続く全日本大学グレコローマン選手権にも出場予定だ。

 「高校の時と比べたら部員が少ない。でも、団結できるし、他大学に比べても団結力では負けていないと思う」と言う。高校時代の恩師は、国士舘大時代に学生二冠王者に輝いている小玉康二監督。高校時代のレスリング活動を終えたあと、「大学でもやりたい」と相談したところ、東農大を勧められた。将来は樹木医を目指しており、勉強・スポーツともにやりたいことが一致したことで進学を決めたという。

 他大学との合同練習は、「とても歯が立たなかったけど、いつも少人数でやっているので、大勢の中でやることに新鮮味を感じました」。夏の菅平合宿では、全日本チームの合宿の際にも使うダボス高原での“死の特訓”があった。「しんどかった。その時は『これが4年間続くのか』とげんなりしましたけど、4年間終わった後には満足感があるのかな、と思い、頑張りました」と言う。

 岩手国体では、大学に入ってから初めて恩師の小玉監督に試合を見てもらうことになる。「緊張するけど、成長したところを見せないと」と、張り切っている。

 3人の中で、最も入部が遅かったのが65kg級の田中。レスリングは高校で終わりと決めていたが、入学してしばらくすると運動不足が気になって仕方かなったという。「家の周りを走ったりはしていましたが、全然足りなかったです」。

 何となくレスリング場に足を運び、練習を見ていたら、「やりたくなった」と、すぐに入部を申し込んだという。その数日後に、ゴールデンウイークの出げいこが始まった。「体力が戻っていないこともあり、ボコボコにされました。でも、それで『頑張ろう!』という気持ちになれまして…」と、大きな刺激材料だった。

 夏の合宿で同じ大学の選手ともやりましたけど、「ゴールデンウイークの時より、手ごたえがありました。短い期間でも、ちょっと成長したのかな、と思いました」と言う。

 「練習はきついけど、やっぱりレスリングは楽しい。階級が同じくらいの選手ばかり。しかも、みんなタイプが違うから内容はしっかりできていると思います。毎日が充実しています」と、レスリング選手としての再出発は正解だった。

■部員を集め、来年のリーグ戦での復帰参戦が目標

 飯山監督は「チャンピオンを目指させないわけではないですが、高望みせず、自分のできることを、できる範囲でしっかりやらせたい。卒業する時に『農大でレスリングをやってよかった』と思えるような学生生活をおくってほしい」と期待する。

 まずは来年のリーグ戦での復帰参戦。65kg級の選手が2人いるが、1人は70kg級で起用できるので、57kg級と74kg級以上の選手がほしいところ。一般学生、柔道経験者などを含めて、選手集めが課題だ。

 0を1にすることは、1を2にすることより何十倍も難しいと言われる。部員が「0」になったら、再興できたかどうか分からない。瀬戸際で踏ん張った東農大の今後が期待される。


 







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