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2017.03.24

【特集】創部2年目で全国タイトル総なめに王手! 日体大柏(千葉)の強さの秘密に迫る

(文・撮影=増渕由気子)

 県大会、ブロック大会、全国大会のすべての学校対抗戦で優勝する“グランドスラム”に王手がかかっている。日体大柏(千葉)の大沢友博監督は、前任の茨城・霞ヶ浦で当たりまえのように成し遂げていた栄光を、わずか2年でやり遂げようとしている。

 3月27日から新潟市体育館で行われる全国高校選抜大会の学校対抗戦。日体大柏が初優勝を遂げれば、昨年8月のインターハイに続いての全国制覇で、夏春連続優勝となる。1、2年生だけのチームだけでインターハイを制したチーム。120kg級の選手が年齢制限によって引退し、成長期のため数人のメンバーが他の階級に変更したが、基本の戦力は変わりない。今大会の優勝候補最右翼だろう。

 わずか2年で全国を制するチームを作り上げた大沢監督。その強さの秘密は数々の金字塔を打ち立てた霞ヶ浦と同じ方式なのだろうか。練習をのぞかせてもらった。


 日体大柏は東京の都心からわずか45分の千葉県柏市にある。のどかな風景が広がっていた霞ヶ浦と比べると、ずいぶんと都会の空気が漂っている。練習場は校舎と直結で、マット2面にウエートトレーニング施設も備わっている。天井は高く、広くてきれいな道場が日体大柏レスリングチームの専用施設だ。

 大沢監督は「いろいろな部分が霞ヶ浦時代と違います。同じやり方ではなく、日体大柏に合わせた指導をしている」と切り出した。

 霞ヶ浦と日体大柏は立地から校風までいろいろな面が異なる。霞ヶ浦時代は、たたき上げの選手も多数いて基礎から鍛えた選手もいたが、日体大柏にいるメンバーは中学時代から実績がある選手ばかり。「マット練習は2時間から2時間半程度と長くはやらないです」と時間も一般的な長さ。

 「霞ヶ浦時代は、1年生は坊主、2年生はスポーツカットとしていましたが、今は髪型は自由です」と、レスリングをするのに邪魔ではない髪型であれば許可をしている。

 日体大柏での指導方法を尋ねてみると、意外にも技術的な話が一切出てこなかった。預かっているメンバーは、すでに基礎ができている選手ばかり。構えから多くの反復練習によって強くした霞ヶ浦の選手とは毛色が違う。「一番大切なのは、日々の生活です。レスリングが強いだけじゃダメなんです」と、力を入れているのは選手の心の教育面だと力説する。

 1日のうち、レスリングに費やす時間は朝練習を含めても3~4時間にすぎない。高校生活の中心は授業や生活の時間が大半を占める。大沢監督はマット以外の態度にも目を光らせる。「勉強ができなかったり、問題がある生徒は練習に参加させません。職員室で勉強をさせます」と高校生としての大義名分を果たさなければ、道場に入ることを許さない。

 「練習後には“おしゃべり”の時間をとっています。生徒に熱弁することは霞ヶ浦時代にもやっていたことですが、ここでは生徒からの“答え”をもらっています」と、一方通行の指導ではなく、必ず生徒の理解力も確認している。

■プライドがありすぎる選手の集団で、創部当初はまとまりがなかった

 現段階でスカウトがうまくいっており、メンバーの実力は申し分ない。だが、チャンピオンばかりのメンバー構成は、「個性が激しく、まとまりがない」という問題が大沢監督を一番悩ませた。

 創部当初は、プライドがありすぎて、同階級のメンバーとの練習を避けたり、スパーリングで負けるとすねたりすることがあったという。目の前に高校チャンピオンがいるのに、負けるのが嫌でスパーリングに当たりにいかない状況に、大沢監督は危機感を覚えた。

 「わがままな生徒が多かったですね。今の生徒たちは上級生がいない状況で高校生活をおくっている。大学に行ったら、一番下から始めなくていけません」と、大学進学後も実力を伸ばせるように心の教育に重点を置いてきた。

 チャンピオンと練習を重ねて強くなれば、チーム全体が強くなれるし連帯感も生まれる。「これを分からせるのに2年かかりました。インターハイの頃にようやくできてきた感じです。霞ヶ浦ではレスリングを教え込みました。今は生徒の力を引き出すことに力を入れていいます」。

 今では、大沢監督がうながさなくても同階級のライバル同士がスパーリングすることも日常となり、練習後には、一緒にクールダウンをし、おしゃべりをする場面もある。

■仕上がりは上々、優勝目指して力を出し切るのみ

 本番まで1週間の時点でけが人や病人はなし。砂川航祐コーチは「ここからの1週間が大切。仕上げがうまくいけるかが優勝へのカギ」と話した。練習場の一角には優勝カップや楯がずらりと並ぶ。今度の大会で優勝すれば、昨年4月から1年間に出場したすべての大会の優勝カップや楯がすべてそろう。

 数年前まで霞ヶ浦が当たり前に成し遂げてきた偉業に、日体大柏が挑戦するのが今大会の見どころだ。

 マスコミにも多く取り上げられ、新聞の切り抜きがホワイトボードに所狭しと貼られている。その中に一つだけ、霞ヶ浦時代の記事があった。2008年の埼玉インターハイで無冠だった霞ヶ浦が復活優勝を遂げたときの特集記事だ。

 「僕たちが高校2年生だった2008年の関東大会で優勝を逃したとき、学校に当たり前のようにあった優勝旗がすべてなくなりました」。どん底を味わってから、わずか2カ月後のインターハイで優勝を果たした時は、“大沢マジック”と言えるほどの記憶に残る名勝負だった。

http://www.japan-wrestling.org/New08/590.html

 この記事は、創部当初からホワイトボードの一角に貼られている。“高校生は気持ちが一番なんです”というコメントが目を引く。日体大柏の生徒たちに忘れてほしくないエッセンスがギュッと詰まった記事なのだろう。「この道場ができて、すぐに大沢監督に『貼っておいてくれ』と指示されました」(砂川コーチ)。

 砂川、森下史崇の両コーチはこの時2年生で、無冠の屈辱を味わったあと、3年生でグラウンドスラムを達成した経験を持つ。砂川コーチは「痛い目にもあっているし、優勝した達成感も知っています。生徒にアドバイスできる引き出しは、たくさん持っているつもりです」と胸を張る。

 チームの仕上がりも上々。砂川コーチは「僕はダントツで勝てる力があると思っています。圧勝で初優勝を狙います」と現メンバーに太鼓判を押す。

 昨夏、常勝の第1歩を踏み出した日体大柏。選抜でも初優勝を飾り、不滅の金字塔の道を歩み始めるか。


 







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