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2017.03.26

【特集】両ひざの負傷を克服して戦列復帰、日本女子伝統の63kg級で世界一を目指す伊藤友莉香(自衛隊)

 階級区分は変わったものの、昨年のリオデジャネイロ・オリンピックで日本が4大会連続で金メダルを手にした女子63kg級。伝統を守ったのは川井梨紗子だが、階級区分が変わった直後に伝統継承を期待されていたのは、2014年アジア大会優勝の渡利璃穏(アイシン・エィ・ダブリュ)であり、同年アジア選手権優勝の伊藤友莉香(自衛隊)だった。

 渡利は階級アップの壁を乗り越えてリオデジャネイロにマットに立つことができたが、伊藤は右ひざの負傷のため、失意の気持ちでオリンピックの期間をすごさねばならなかった。それも回復し、昨年12月の全日本選手権で復帰。手さぐりの状況ながら3位に入賞し、復活のめどがたった。

 「あと(2024年オリンピック)はありません。やるしかないです」。ブランクによって十分にたくわえたエネルギーをもって、目標へ向けて突き進む。

■2014年12月、リオデジャネイロ代表の第一候補の位置に立ったが…

 伊藤は大阪・吹田市民教室~京都・網野高を通じて数々のタイトルを手にし、環太平洋代時代の2009年、18歳でアジア選手権59kg級を制した。2012年ロンドン・オリンピック出場は間に合わなかったが、63kg級へ上げてリオデジャネイロ・オリンピックに照準を定めた。

2014年1月にロシア最高レベルの国際大会「ヤリギン国際大会」で勝ち、同年のアジア選手権では前年世界3位のカザフスタン選手にフォール勝ちするなどして優勝。リオデジャネイロが見えるところまでやってきたが、同年10月、右ひざの前十字じん帯を損傷するアクシデントに見舞われた。

 それでも、3ヶ月後の全日本選手権はオリンピック予選である翌年の世界選手権に直結する重要な大会だったので、手術は受けずに治療を続けて出場。渡利に競り勝って優勝し、この時点でリオデジャネイロに一番近い位置に立った。

 一方で、ひざの状態は悪化していた。翌年3月のワールドカップはロシアまで行きながら、ひざの状態が最悪で全試合棄権という屈辱。直前に悪化したものだが、ビザの関係で代わりを派遣することができなかったため、向かわざるをえない状況ゆえだったが、けがは回復せず試合ができる状態ではなかった。

 6月の全日本選抜選手権では階級を上げてきた川井に敗れ、川井が世界選手権で2位となってリオデジャネイロの日本代表に内定。この段階で伊藤のオリンピック出場は消えた。

■「けがをしたからリオデジャネイロ出場を逃した、ではない」(伊藤)

 「オリンピックの時は、もうけっこう冷静な気持ちになっていて、テレビも普通に見ることができましたし、最後は(川井に)『優勝してくれ』と応援もしていました。でも、この時(川井が世界2位に入った時)のショックは本当に大きいものでした」。

それでも、引退するつもりはなかった。2020年へ向けて必要なことは抜本的な治療。2015年10月にひざの手術を受け、それは順調に回復したが、右ひざをかばうあまりか、今度は左ひざの半月板を痛め、昨年9月に左を手術。「当初の予定では全日本女子オープン選手権に出てから全日本選手権を目指す予定でしたが、手術によってそれができなくなり、全日本選手権でぶっつけ本番の復帰でした」。

 地力のおかげか、まずまずの結果を出し、再度、日本代表が見えてきた。伊藤は今、ブランクを冷静に振り返る。「けがをしたからリオデジャネイロ出場を逃した、ではないと思うんです」-。確かに、最初にけがしたあとに出場した全日本選手権では優勝しているのだから、けがを勝てなかった理由にするのは言い訳でしかないかもしれない。

 戦列を離れてこそ、自分の足りなかった点や甘さが見えてきた。「多くに人に支えてもらい、成長させてもらいました」。このブランクは決して無駄にはしない-。伊藤の表情からは、そんな決意がにじみ出ている。

 幸い、けがした場所が痛むことはなく、今年に入ってからの全日本合宿にはフル参加している。3月には浜田千穂(キッコーマン)ら4選手で中国・広東へ行き、中国選手との練習を経験した。練習であっても外国選手と闘うのは2014年4月のアジア選手権以来。「力で来るタイプが多かった。外国選手相手の課題も見つかりました」と、外国選手相手の感覚も戻しつつある。

■弟とのタッグチームで東京オリンピックを目指す

 当面の目標は6月の全日本選抜選手権で勝ち、世界選手権(8月、フランス)のキップを手にすること。26歳でまだ「ベテラン」と言われる年齢でないが、体力のピークはすぎており、「小さなけがも多くなりました」と、新たな課題にも直面している。突き上げてくる若手選手も出てきたので、一筋縄ではいかないことは分かっている。

 それでも、「たくさんの方に応援してもらいました。結果で恩返ししないとなりません」と、気持ちは前を向いている。

 今月専大を卒業した弟の和真(2012年高校三冠王者=大阪エクセルヒューマン入社予定)も、けがのため学生2位が最高に終わったが、それも完治。会社の支援を受けてレスリング活動を続行することになり、「これからが勝負」と燃えているという。

 「よく食事をねだられます」と、姉を慕っている弟。けがを乗り越えてオリンピックを目指す姿を見本として見せなければなるまい。奮起が望まれる伊藤の2017年だ。


 







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